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企業の事業承継はなぜ必要? 代表的な承継方法と特例制度を分かりやすく解説

ファイナンシャルフィールド / 2022年5月31日 11時30分

企業の事業承継はなぜ必要? 代表的な承継方法と特例制度を分かりやすく解説

次の世代に会社経営を受け継ぐ事業承継は、日本の企業、特に中小企業にとって大きな課題となっています。後継者不在率は2020年の時点で、60代の中小企業経営者で48.2%、70代で38.6%、80代以上は31.8%です。後継者不足を理由に廃業する企業は、廃業件数全体の3割にも上ります。   中小企業は、日本企業の約99%を占めています。中小企業が廃業すると、雇用や技術などが失われてしまいます。廃業企業の約6割は、黒字にも関わらず廃業を選択しており、後継者不足が影響しているケースも多いとみられています。こうした現状を危惧した政府は、事業承継の優遇制度を設け、中小企業の事業承継を後押ししています。   今回は、事業承継の概要と代表的な方法、優遇制度について紹介します。

事業承継とは

事業承継とは、会社の経営権や資産を後継者に引き継ぐことをいいます。中小企業は、社長の経営手腕や判断によって、会社の成績が大きく異なることが多いです。会社を「誰」に引き継ぐかによって会社の行く末が決まるといっても、過言ではありません。
 
また、事業承継は、単なる社長交代ではなく、自社株や資産などの引き継ぎも必要となるため、承継方法によっては、多額の納税が必要となるケースもあります。事業承継においては、税金や法律などさまざまな課題に直面するために時間を要することがあるので、専門家と相談をしたうえで計画的に行いましょう。
 

3つの事業承継方法

事業承継では、親族内・親族外への承継やM&A(企業の合併・買収)など、さまざまな方法があります。承継方法によって、課税額や要する時間も異なるので、特徴とポイントを押さえ、自社にあった方法を選択しましょう。
 

・親族内承継

親族内承継は、親族のなかから後継者を選び、事業承継する方法です。親族内承継では、従業員や取引先への理解が得られやすく、贈与や相続などの控除制度を活用することによって、税負担が軽減できます。また、子どもや兄弟などが後継者の場合は、後継者教育や経営ノウハウの共有を、時間をかけて承継を行えるメリットがあります。
 
しかし、親族内に有望な人材がいない場合も多く、逆に候補者が複数人いる場合にも、親族内で争いに発展するケースもあります。親族内承継では、「子どもだから」など主観的に考えるのではなく、「会社を任せられる人材か」と客観的に考え、後継者を選ぶ必要があります。
 

・親族外承継

親族外承継は、親族以外から後継者を選び、事業承継する方法です。親族外承継のメリットは、客観的な基準で後継者を選ぶことができる点です。親族内に適切な人材がいない場合でも、経営や事業を熟知した人材を後継者に選べます。
 
しかし、贈与や相続による自社株や資産の引き継ぎに対して、親族外承継では、多額の税金がかかるかもしれず、後継者が多額の資金を準備が必要なケースがあります。また、会社を引き継ぐと目されていた親族と争いに発展し、会社が分裂してしまうリスクもあります。
 

・M&A

M&Aは、ほかの会社や経営者などの第三者に会社を売却することです。経営者は、会社を売却することによって利益が得られるメリットがあります。また、後継者がいない状態でも会社が存続できるので、従業員の雇用も守られます。
 
しかし、M&Aは売却金額や時期、従業員の処遇など、条件に合った売却先をみつけることが非常に難しくなっています。さらにM&Aの実施においては、法律や税金の知識が必要です。税理士や弁護士でM&Aの経験豊富な専門家にできるかぎり相談し、計画的に進めましょう。
 

事業承継に役立つ制度

日本で事業承継がなかなか進まない背景には、株式譲渡による税金など、お金にまつわる問題が多くあります。遺族が相続する株式を買い取る形で、代償金の支払いが生じるケースもあります。代償金とは、分割が困難な株式や不動産などの資産を相続割合にあわせるために支払われるお金です。
 
政府は、こうした問題が事業承継を進める妨げとなっている実情をふまえ、経営者と後継者の負担を軽減するための制度を設けているので、以下で紹介します。
 

・事業承継税制

事業承継税制は、経営者から非上場株式や事業用資産などを後継者が受け取った際の贈与税や相続税の一部を猶予または免除する制度です。制度が適用されるための主な要件は、以下の通りです。

●事業承継前に経営者が会社の代表であり、承継後に代表権を有していないこと
●中小企業であること(「中小企業」の定義は、後述します)
●上場企業や風俗営業会社、資産保有型会社、従業員がいない会社ではないこと
●贈与による事業承継の場合、後継者に3年以上の役員経験があること
●相続による事業承継の場合、相続以前に役員であった後継者が、相続開始の5ヶ月後に代表となっていること

この要件に該当する中小企業とは、図表1の業種と資本金、従業員数によって判断されます。該当業種にて、資本金と従業員数の条件を共に越える企業は、事業承継税制において中小企業として扱われません。卸売業を例にすると、資本金2億円・従業員数50人の会社は中小企業として扱われる一方、資本金2億円・従業員数110人の会社は中小企業ではないと判断されます。
 
図表1

出典:中小企業庁 事業承継の際の相続税・贈与税の納税猶予及び免除制度
 

・遺留分に関する民法の特例

遺留分とは、相続によって第三者へ遺産が渡った場合に、遺産を相続された人の子や父母など1親等の血族または配偶者の生活を保証するために、受け取れる相続財産の取り分で、民法により定められています。中小企業の事業承継では、承継のために贈与した自社株等の資産を遺留分に算定しない、または申請時の価額とすることが、民法上の特例として認められています。
 
この特例を受けるためには、子や配偶者などの推定相続人および後継者、現経営者の全員で合意書面を作成し、経済産業大臣に対して申請を行う必要があります。後継者は、申請後1ヶ月以内に家庭裁判所へ本特例の申し立てを行い、裁判所の許可審判が確定すると、特例として認められます。
 

事業承継は計画的に進めよう

事業承継には、後継者不足や従業員の同意、資金問題など、さまざまな課題があります。これらは一朝一夕で解決するものではなく、解決まで多くの時間と労力を要します。自身で育てた会社を後継者がいないことが原因で廃業することとならないよう、また従業員の雇用を守るためにも、専門家も交えて計画的に進めていきましょう。
 

出典

中小企業庁 財務サポート「事業承継」 事業承継を知る
中小企業庁 事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度について)
中小企業庁 事業承継の際の相続税・贈与税の納税猶予及び免除制度
裁判所 遺留分の算定に係る合意の許可
 
執筆者:東本隼之
2級FP技能士

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