会社員が海外赴任するときなどに提出する「海外転出届」とは? 何のために必要?
ファイナンシャルフィールド / 2022年6月6日 23時0分
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海外転出届とは、日本の居住地から国外に移住、または国外に長期間滞在する際に、市区町村の役所に提出する書類です。 つまり、移住や会社員の海外赴任だけでなく、海外旅行などでも一定期間以上、日本を離れる場合には提出が必要となるケースがあります。また、日本国籍の方に限らず、日本で住民登録をしている外国籍の方も届け出の対象となります。 普段はあまり聞きなれない海外転出届について、いざというときにために、その目的や提出方法などを確認しておきましょう。
海外転出届を提出する必要がある人
海外転出届は、1年以上の長期間にわたって日本を離れて海外に滞在する場合に提出が必要です。海外転出届を提出すると、現住所での住民票が「除票」の扱いとなり、住民税の課税対象から外れることになります。
住民税とは、その年の1月1日現在に住んでいる市区町村で課税の対象となります。そのため、年の途中で海外に転出した場合には、その年内は住民税の支払いが必要となりますが、次の年からは住民税の課税対象からは外れることになります。
また、海外赴任の期間が1年未満の予定の場合には、原則、海外転出届を提出する必要はありません。ただし、住民票は日本の現住所のままとなるため、通常どおり、住民税の負担が必要となります。
海外転出届の提出方法
海外転出届は、国外に渡航する日の14日前から当日までの間に、本人、世帯主、同一世帯の方のうち、いずれかの方が市区町村の役所に提出する必要があります。本人が15歳未満の場合は親権者が提出し、これ以外の代理人が提出する場合には委任状が必要です。
また、例えば海外転出届を出し忘れて海外に行ってしまった場合には、後からでも提出することが可能です。その場合には必要書類を準備して役所に郵送で行うほか、日本に住む同世帯の方が提出することもできます。
海外転出届を提出することでの影響
海外転出届を提出することで、住民税のほかにもさまざまな分野に影響が及びます。
(1)厚生年金
会社員などの厚生年金の被保険者は、海外に住所がある場合でも引き続き、適用を受けることができるのが原則です。
海外の社会保険制度と二重に加入してしまうと、保険料を重複して支払ってしまう場合があるため、現在はアメリカやイギリス、ドイツなど社会保障について協定を結んでいる国に赴任する際には、どちらの国の社会保障制度に加入するかルールが定められています。
おおむね、海外赴任の期間が5年以内の場合には、そのまま日本の社会保障制度に加入し、5年超の場合には、その国の社会保障制度に加入する考え方が原則となります。
また、国民年金については、海外赴任中は強制加入ではなくなります。ただし、老後の年金受給額を考慮して、海外に在住している期間でも希望により、20歳以上65歳未満の間は国民年金に任意加入をすることができます。
(2)健康保険
会社員などで健康保険に加入している場合、海外赴任中でも被保険者の資格があります。海外赴任中に現地で病院を受診した場合には、いったん医療費を全額負担し、健康保険組合などに請求手続きを行えば、後から自己負担分を除いた医療費が戻ってきます。
一方、国民健康保険に加入している方の場合は、海外転出届の提出により住民票が除票となるため、国民健康保険の被保険者資格を失うことになります。
当然、その間の保険料の支払いも必要なくなりますが、無保険の状態となるため、万が一の場合には高額の医療費が発生する可能性があります。そのような事態に備えて、民間会社の医療保険などを利用して保障の備えを検討しておきましょう。
(3)マイナンバー
マイナンバーとは、日本に住民票があるすべての方に与えられる12桁の個人識別番号です。
海外転出届を提出する場合、原則マイナンバーカードも同時に返納することになります。ただし、マイナンバー自体が無効になるわけではなく、帰国した際には海外転出前と同じマイナンバーを使用できます。
まとめ
会社員などの給与所得者が海外赴任する場合には、所得税の取り扱いにも注意が必要となります。通常は海外赴任までに、その年の所得について確定申告を行い、納税などを済ませておきます。また、国内の納税管理人の届出書を提出しておくこともできます。
突然、長期間の海外赴任を命じられた場合、海外転出までに必要となる手続きを済ませておかないと税金面などで思わぬ影響が出ることがあります。いざというときのために、海外転出届の存在を覚えてきましょう。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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