2022年4月から変わった証券取引市場の新区分。一般投資家にどんな影響がある?
ファイナンシャルフィールド / 2022年6月7日 7時40分
![2022年4月から変わった証券取引市場の新区分。一般投資家にどんな影響がある?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_144146_0-small.jpg)
2022年4月から東京証券取引所の市場区分が変わりました。従来は、市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDACの4つの市場区分がありました。それが、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つの区分に変更されました。 今回は、この市場区分の変更前の課題と新区分を再確認し、変更により一般投資家にどんな影響があるのかを解説します。
従来の市場区分の課題
従来の4区分には、下記の課題があり、それを是正すべく、市場区分が見直しをされています。この点をしっかり押さえておくことが、一般投資家にとって市場区分を変更するにあたっての影響を考える上でとても重要です。
(1)各市場区分のコンセプトが曖昧であり、多くの投資者にとっての利便性が低いとされていました。具体例として、マザーズ、JASDAQ、市場第二部のそれぞれの位置づけにおいて重複が見られるほか、市場第一部についてもそのコンセプトが不明確です。
(2)上場会社の持続的な企業価値向上の動機付けが十分にできていません。例えば、新規上場基準よりも上場廃止基準が大幅に低いことから、上場した後も新規に上場した時の水準を維持するための動機付けにはなっていません。
また、他の市場区分から市場第一部に移る時の基準が、市場第一部において新規上場の基準よりも緩和されていますので、上場後に積極的な企業価値向上を促す仕組みとなっていません。
新市場区分のコンセプト
上記課題を解決すべく、市場区分のコンセプトを明確にし、持続的な企業価値向上を図るために、下記3区分への変更がなされました。それぞれの市場のコンセプトについて見ていきましょう。
(1)プライム市場
グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場です。多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持っており、さらに高いガバナンス水準を備えて、投資者と建設的な対話をすることを中心とし、持続的な成長の向上、そして中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場としています。
(2)スタンダード市場
公開されて市場における投資対象として、十分な流動性とガバナンス水準を備えた企業向けの市場です。持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場としています。
(3)グロース市場
高い成長可能性を有する企業向けの市場です。高い成長可能性を実現するための事業計画およびその進捗(しんちょく)の適時・適切な開示が行われ、一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点において相対的にリスクが高いとされる企業に向けての市場です。
一般投資家への影響
市場区分を変更したことで、一般投資家にとって、次の3点が影響されるものと考えられます。
(1)株価上昇に寄与する可能性がある
各市場のコンセプトや位置づけが明確になり、投資先企業の持続的な企業価値向上がなされ、一般投資家として企業価値を見極めやすくなります。その結果として、国内外から幅広く投資マネーを呼び込むことで、株価の上昇が期待されます。
一方で、従来の東証1部企業の約8割がプライム市場に移行することとなり、看板の掛け替えをしただけとの冷めた見方もあるようですので、今後の市場動向をしっかり見極める必要があります。
(2)株主優待の廃止が増える
今回の市場区分見直しでは、上場基準での必要な株主数が減少します。具体的には、東証一部とプライム市場を比較すると、新規上場基準となる必要株主数が2200人以上から800人以上へ変更されます。
そのため、株主数を増やすために株主優待を導入していた企業の株主優待制度の廃止が増える可能性があります。株主優待を目当てにしていた一般投資家にとっては好ましくない変化かもしれません。一方、配当金による利益還元のほうがより適切と考えている方が多い海外投資家は歓迎されるものと思われます。
(3)コーポレートガバナンスが改善される
それぞれの新市場区分の特性に応じて、持続的な成長の向上、そして中長期的な企業の価値向上を目指し、ガバナンスを向上させる取り組みとして、コーポレートガバナンス・コードが改訂されています。
特にプライム市場においては、グローバルな投資家たちとの建設的な対話を中心とした企業に向けた市場です。プライム市場における上場会社には、一段上のガバナンスについて定めている原則を適用しています。
こういった、ガバナンス改善によって企業価値向上に向けた取り組みが発展していけば、投資家にとってプラスの影響が期待されるところです。
出典
JPX 日本取引所グループ 市場区分見直しの概要
JPX 日本取引所グループ 市場構造の在り方等の検討
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー
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