15年住んだ自宅を「8000万」で売却。「買い替え特例」と「3000万円控除の特例」ならどちらがお得?
ファイナンシャルフィールド / 2022年6月17日 5時0分
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自宅を売却するときには、仲介手数料や測量、解体、引っ越しなどの費用や、印紙や登録免許税など、多くの諸経費が掛かります。その中でも所得税は高額になることがあり、注意が必要です。ただし、さまざまな減税制度を活用できます。 自宅を売却するときは、マイホーム売却時の3000万円控除の特例を使い、所得税の課税を抑えます。しかし、場合によっては3000万円控除の特例より、所得税を抑えられることがあります。「居住用財産の買い替えの特例」(以下「買い替え特例」)を利用するケースです。 本稿では、3000万円控除の特例と買い替え特例のどちらが節税になるか、例を挙げて比較します。節税を考える場合は、さまざまな制度の内容を比較することが必要です。自宅の売却なら3000万円控除の特例と思い込まずに、買い替え特例と比較をしてどちらがより節税できるのか、確認をしておきましょう。
マイホーム売却時の3000万円控除の特例と、買い替え特例とは
マイホーム売却時の3000万円控除の特例と、買い替え特例についてそれぞれ説明します。
マイホーム売却時の3000万円控除の特例とは
マイホーム売却時の3000万円控除の特例とは、自宅を売却したときに出た利益から3000万円を差し引くことのできる特別控除制度です。売却益が3000万円未満の場合は、所得税は課税されません。
あくまで、所得税は不動産の売却益に課税されるもので、売買代金の金額に課税されるものではありませんので注意してください。
売却益の算出方法は、自宅の売買代金 – (自宅の取得費 + 売却経費)です。
3000万円控除の特例が利用できる要件は以下の通りです。
・所有者が売却する家に住んでいること
・空き家にした、建物を解体したなど、住まなくなった日から3年経過するまでに売却すること
・自宅の購入者が自宅の売却者の配偶者や同居して生活をしている親族でないこと
・自宅の売却について、交換や買い替えなどの他の特例を受けていないこと
・自宅の売却があった年に、3000万円控除の特例の適用を受けていないこと
居住用財産の買い替え特例とは
長年所有して住み続けている自宅を売却して、売却金額より購入代金の方が高い自宅用不動産を購入した場合、所得税が課税されないという、2023年12月31日まで利用できる時限措置です。この場合、所得税は課税されません。
買い替えた不動産が、売却した自宅より安かった場合は、売却益に対する所得税が繰り延べられます。このとき新しく購入した住宅を将来、売却するときに、課税される予定だった所得税を納税しなければいけません。つまり、所得税が課税されなくなるわけではありません。
買い替え特例による所得税は、譲渡所得を以下の計算式で割り出した上で、所得税率を掛けて算出します。
不動産売却の収入額(【1】)=自宅の売却代金 - 買い替え資産の購入代金
(売却不動産を購入したときの費用+売却にかかった費用)× 【1】÷自宅売却代金 = 【2】取得費・売却費用
【1】 - 【2】 = 【3】譲渡所得
なお、買い替え特例を利用できる条件を、売却する自宅の条件と購入する自宅の条件にわけて説明します。
・敷地の所有年数が10年超えていること(10年目を含まない)
・敷地所有者の居住年数が10年以上経過していること(10年目を含む)
・敷地と建物を同時に売却すること
・敷地所有者と建物所有者が、自宅の売却時に同居していること
・自宅を空き家にしていたなどですでに転居していた場合、転居から3年以内に売却すること
・過去2年以内に3000万円控除の特例などを使用していないこと
・売却代金が1億円以下であること
・居住用に建物・敷地を取得すること
・購入する自宅は売却する自宅の収入割合に応じて取得すること
例えば、売却する不動産を夫婦が2分の1ずつ所有していた場合は、購入する自宅も夫婦が2分の1ずつの共有名義で購入する必要があるということです。売却する自宅の共有持分を夫4分の3、妻4分の1で所有していた場合は、購入する自宅の名義を夫4分の3、妻4分の1にすることになります。
・自宅売却の日から翌年12月31日までに購入した住宅を自宅として住むこと
・売却した敷地所有者・建物所有者ともに購入する自宅に居住すること
・購入する自宅の床面積が50平方メートル以上500平方メートル以下であること
・買い替えで住宅を購入した後、購入した日から翌年の12月31日までに自宅として住むこと
・購入する自宅が中古物件の場合は築25年以内であること
買い替え特例と3000万円控除の特例の比較事例
具体的な事例を挙げ、どちらが節税になるのかを比較していきます。
ここでは、15年所有し、住んだ自宅を売却するケースを例に挙げます。売却額は8000万円、売却費用を300万円とします。新たに買い替えた住宅の価格は7000万円(取得費を含む)で、取得費は400万円とします。
3000万円控除の特例を利用する場合
8000万円(売却代金) - (400万円(購入の取得費) + 300万円(売却経費)) = 7300万円(売却益)
(7300万円(売却益) - 3000万円(特別控除)) × 14.21%(所得税率) = 611万円(所得税)
買い替え特例を利用する場合
8000万円(売却代金) - 7000万円(購入代金) = 【1】1000万円(譲渡収入額)
(400万円(購入取得費) + 300万円(売却経費)) × 【1】1000万円(譲渡収入額) ÷ 8000万円(売却金額) = 【2】87万円(取得費・譲渡費用)
【1】1000万円 - 【2】87万円 = 【3】913万円(譲渡所得)
【3】913万円 × 所得税率20.315%(所得税率) = 185万円(所得税額)
自宅の売却代金より、購入する自宅の購入金額の方が高い場合は、所得税はかかりません。なお、所得税率は長期譲渡所得金額の税率で計算しています。
3,000万円控除の特例を利用した場合の所得税額は611万円に対し、買い替え特例を利用した場合の所得税額は185万円です。このケースですと、3000万円控除の特例よりも買い替え特例を利用した方が、所得税の節税になります。
買い替え特例と3000万円控除の特例どちらが得かは、人それぞれ
先述のように買い替え特例の方が節税になるケースがあります。買い替える場合は、不動産会社の担当者に買い替え特例を利用すると所得税はどうなるかについて、質問することをお勧めします。
近年は、年を経るごとに値上がりするマンションなども多いため、買い替え特例を活用する方が、節税になるケースもあります。どちらが不動産を売却する人にとって節税になるのか、不動産会社などの専門家と打ち合わせして判断してください。
節税していくことは、老後に向けて貯蓄することと同じだと言えます。どちらが節税になるのか、確認して買い替えを行いましょう。また、所得の申告には確定申告が必要になりますので、不動産を売却した年に確定申告を行うことを忘れないようにしてください。
出典
国税庁 No.3355 特定のマイホームを買い替えたときの特例
国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
執筆者:八木友之
宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター
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