2022年4月から保険適用となった不妊治療の項目とは?
ファイナンシャルフィールド / 2022年6月29日 3時20分
2022年4月より、不妊治療における「一般不妊治療」そして「生殖補助医療」が保険適用されることになりました。 保険適用分として追加された不妊治療の項目を紹介するとともに、現在、助成金で対応している治療について、年度をまたぐ場合の取り扱い(経過措置)についても解説します。
不妊治療の保険適用
2022年4月より、人工授精などの一般不妊治療、そして対外受精や顕微鏡受精などの生殖補助医療については、保険適用の対象となることが決定しました。これは、日本生殖医学会が取りまとめた「生殖医療ガイドライン」などを踏まえ、決定されたものです。
生殖補助医療については、一連の基本的な治療のすべてが保険適用となり、追加として行われる治療のうち、先進医療に位置付けられたものについては、保険診療と併用可能になります。
■保険適用の対象となる不妊治療とは?
このたび、保険適用の対象となった不妊治療の詳細は、以下のとおりです。
1. 一般不妊治療:タイミング法、人工授精
2. 生殖補助医療:採卵・採精、体外受精・顕微授精、受精卵・胚培養、胚凍結保存、胚移植
生殖補助医療のうち、上記に加えて実施されるオプション治療についても、保険適用となるものと、先進医療として保険と併用できるものがあります。
■保険適用だけど、制限がある?
保険適用となる不妊治療ですが、現在助成金の対象となっている内容と同様に、年齢制限や回数制限があります。
1. 年齢制限:治療開始時において女性の年齢が43歳未満であること
2. 回数制限:女性の年齢によって以下のとおりです。
(出典:厚生労働省 不妊治療に関する取組 ※1)
特定不妊治療に対する助成金制度
昨年まで保険適用外だった、体外受精および顕微授精に対しては、助成金制度の対象となっていました。この助成金制度は以前からあったものですが、2021年1月1日より、助成措置が大幅に拡充されています。
■特定不妊治療支援事業の概要
特定不妊治療支援事業は、不妊治療の経済的負担を軽減する目的で、高額な医療費がかかる配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成するものです。対象となる治療法は体外受精および顕微授精に限られ、制度を利用できる要件は以下のとおりとなっています。
1. 対象者:特定不妊治療以外の治療法では妊娠の見込みがない、もしくは極めて少ないと医師に診断された夫婦で、治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦
2. 給付内容:1回あたり30万円(ただし、連結胚移植および採卵後中止したものについては要件を満たしていれば1回10万円)、また、男性不妊治療の場合は30万円
3. 所得制限:なし(令和3年1月から撤廃。それまでは夫婦合算で730万円未満)
■特定不妊治療支援事業の経過措置
2022年4月1日より、不妊治療の保険適用が実施されることになりましたが、移行期の治療計画に支障が生じないように、年度をまたぐ1回の治療については経過措置として助成金の対象となります。
ちなみに、1回の治療とは、採卵から胚移植までの一連の治療をいいます。
(出典:厚生労働省 不妊に悩む夫婦への支援について ※2)
不妊治療と仕事の両立に関する支援策
現在、不妊治療を行うにあたり、通院回数の多さや精神面での負担から、仕事との両立が困難になり、不妊治療を経験した女性の23%が離職しています。
そのため、2022年4月より、不妊治療と仕事の両立がしやすい環境に取り組む企業を認定する制度が新設されました。認定基準については、以下のとおりです。
1. 次のどちらかの制度を設けている
■不妊治療のための休暇制度
■不妊治療のために利用できる次のいずれかの制度
・半休もしくは時間単位の年次有給休暇
・所定外労働の制限
・時差出勤
・フレックスタイム制
・短時間勤務
・テレワーク
2. 不妊治療と仕事の両立の推進に関する方針を示し、講じている措置の内容と合わせて労働者に周知している
3. 不妊治療と仕事の両立に関する研修や、不妊治療と仕事の両立に関する労働者の理解促進のための取り組みを実施している
4. 不妊治療と仕事の両立に関する相談に応じるための両立支援担当者を選任し、労働者に周知している
(出典:厚生労働省 不妊治療と仕事との両立のために ※3)
まとめ
不妊治療が保険適用となったことにより、自己負担(3割)で治療が受けられることになりました。さらに、不妊治療と仕事の両立支援により、今後はこれまでよりも経済的、そして精神的にも不安を感じることなく、治療を受けられる時代になっていくと思われます。
とはいえ、不妊治療の理解や仕事への影響など、まだまだ取り組むべき課題はたくさんあります。今回新設された両立支援策についても、今後必要に応じた改正がなされることが期待されます。
保険適用となったとはいえ、年齢制限や回数制限があることに注意しておく必要があります。しかし、併用できる先進医療は今後追加される可能性もあることから、詳細を医療機関にて確認することも忘れないようにしましょう。
出典
(※1)厚生労働省 不妊治療に関する取組
(※2)厚生労働省 不妊に悩む夫婦への支援について
(※3)厚生労働省 不妊治療と仕事との両立のために
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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