不妊治療の保険適用、「うれしい」と思う当事者は3割? その理由や制度の実態とは
ファイナンシャルフィールド / 2022年7月2日 12時10分
2022年4月から、不妊治療の保険適用がスタートしました。今までは予算の都合で治療に踏み切れなかったという人や、毎月の治療費が負担になっていたという人などにとっては、明るいニュースとなるのでしょうか。 保険が適用されることでどう変わるのか、今までの助成金制度はどうなるのか、そして不妊治療経験者はこの変化をどう感じているのか、株式会社ジネコが発表した調査結果(※1)を見てみましょう。
不妊治療が保険適用に! その概要とは
不妊治療が保険適用されると、窓口での負担額が3割になります。ただ、すべての不妊治療が対象ではありません。保険の対象となる不妊治療は、以下の内容となります。(※2)
・タイミング法
・人工授精
・採卵 採精
・体外受精 顕微授精
・受精卵・胚培養
・胚凍結保存
・胚移植
さらに、これらの生殖補助医療とともに実施されるオプション治療のなかには、保険が適用されたり、先進医療として併用できたりするものも。詳しくは医療機関に確認するのがよさそうです。
また、今までの特定不妊治療費助成制度と同じく、年齢や回数についても要件があります。(以下参照)
・女性の年齢が43歳未満(治療開始時)
・初めての治療開始時の女性の年齢が40歳未満:1子ごとに通算6回
・初めての治療開始時の女性の年齢が40歳以上43歳未満:1子ごとに通算3回
40歳未満の方で、「今まで助成金の受給を5回受けているが、保険適用後は1回しか猶予がないのか?」と心配になるケースもあるかと思いますが、上記の回数はあくまで保険適用後の回数になります。
今までの助成金の回数がリセットされるということになりますので、人によってはチャンスが増えるかたちになるわけです。
今までの治療・検査でひと月にかかった最高負担額は?
株式会社ジネコの調査結果によると、不妊治療経験者(女性1005:男性13)のひと月の治療費で最も高かった負担額は以下のとおり。
1位:〜4万円 135
2位:5〜9万円 72
3位:10〜19万円 33
1位:30〜39万円 131
2位:40〜49万円 119
3位:50〜59万円 104
上位3つはこのような結果に。やはり、一般不妊治療と高度生殖補助医療では費用に大きな差があることが分かります。
例えば、今回保険適用になる高度生殖補助医療で、今まで月30万治療費がかかっていた人の場合、3割負担だと9万円になる計算です。こう考えると、保険適用は非常に強い味方になりそうですよね。
しかし、不妊治療の保険適用について、「うれしい」と回答した不妊治療経験者は全体の32%でした。「どちらともいえない」という人がきっかり50%、「うれしくない」とはっきり回答した人は12%と、なかなか手厳しい評価になっています。
ちなみに一般不妊治療経験者で「うれしい」と答えた人は56%、高度生殖補助医療経験者で「うれしい」と答えた人は23%と、驚くほどの温度差が。いったいなぜなのでしょうか。
保険適用になる治療・検査がある反面、助成金の終了も
冒頭で記したとおり、全ての不妊治療・検査が保険適用になったわけではありません。
しかも保険診療と自由診療を合わせて行う混合診療が認められていないため、「今までしてきた治療Aは保険適用されたけど治療Bは対象外だから、やるなら結局全部自己負担になる」というケースもありうるのです。
保険適用にあたり今までの特定不妊治療費助成制度が実質廃止(※3)となるため、上記の場合は以前より負担が増してしまうということに……。特に負担が重い高度生殖補助医療の経験者は、このような不便さが原因で保険適用に否定的なのかもしれません。
一方で、保険診療と先進医療の併用は可能です。不妊治療経験者が先進医療にしてほしいと希望する治療・検査については、「不育症検査」と「PGT-A」がダントツでした。
前者は流産を繰り返してしまう原因を調べる検査で、後者は染色体異常についての検査。「妊娠しない」ことに対する治療・検査だけでなく、「妊娠するものの出産に至らない」ことへの治療・検査も、速やかに保険適用になることを願いたいものです。
なお、保険適用されても負担額が高額になる場合は、高額療養費制度の活用も視野に入れるといいでしょう。こちらは加入中の医療保険や自治体などにお問い合わせをしてみてください。
保険適用は始まったばかり。これからもさまざまな意見を取り入れ、不妊治療の負担額に悩む人たちがより救われるような仕組みになることを期待したいですね。
出典
※1 株式会社ジネコ 不妊治療の保険適用どう思う?
※2 厚生労働省リーフレット
※3 大阪狭山市「重要 特定不妊治療費の助成制度の廃止および令和4年度経過措置について」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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