「良い」インフレはあっても「良い」デフレはないのはなぜか? その理由を解説
ファイナンシャルフィールド / 2022年7月8日 12時40分
![「良い」インフレはあっても「良い」デフレはないのはなぜか? その理由を解説](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_149380_0-small.jpg)
「良い」インフレーションとは、消費が増えることで経済成長につながり、物価が上昇して、従業員の給与も増えていく状態を指します。しかし、「良いデフレ論」という考え方が一時期ありましたが、実際には良いものではありません。 本記事では、なぜ「良いデフレーション」が実際には良いとはいえないのかを解説します。
インフレーションとデフレーションとは
インフレーションとは、継続的に物価が上昇することを指し、デフレーションは継続的に物価が下落する現象のことです。100円のパンを例にしてみます。年間10%の物価上昇の場合、100円のパンが1年後には110円になっています。年間10%の物価下落であれば、100円のパンが1年後には90円となります。
インフレーションによって、普段購入している日用品などの物やサービス価格が上がってしまいます。一方、デフレーションであれば、普段購入している物などの価格が下落するため、デフレーションの方が良いと思えてしまいます。しかし、ここには大きな問題があります。
デフレーションの問題点
継続的に物価が下落することで需要と供給のバランスが崩れ、需要が減り供給過剰の状態に陥ります。供給過剰になりますと、物などが余っている状態となるため、物やサービスの価格を下げなければ購入されなくなります。パンの例でいえば、100円では購入してもらえないため価格を下げざるを得なくなるわけです。
企業は、供給過剰になると価格を下げることになるため、売り上げが低下してしまいます。売り上げの低下によって企業の利益が減少し、従業員の給与やボーナスのカット、リストラなどをしなければ、生き残ることができなくなります。つまり、物価の下落から始まり、企業収益の減少、失業者の増大につながってしまいます。
従業員の給与の低下やリストラによって、家計も無駄遣いを避けて貯蓄することになるため、消費が落ち込みます。消費の低迷によって、企業は日用品などの物やサービス価格を、さらに下げなければならなくなります。このような悪循環を「デフレスパイラル」といいます。
インフレーションの問題点
一方、インフレーションにおいては、継続的に物価が上昇することで供給が減少し、需要が増加する状態となります。需要増になりますと、物やサービスの価値が上昇するため、価格が高くなったとしても購入されることになります。パンの例でいえば、110円でも購入したい人がいるため、さらに価格が上昇していきます。
企業は、需要増を受けて、設備投資や従業員を増やすことで生産活動を活発化させますので、さらに売り上げが上昇します。売り上げの上昇によって出た利益は、さらに利益を増やすために不動産や株式などに投資をすることになります。
投資によって不動産価格が高騰し株価も上昇し、「バブル経済」が発生します。バブルの発生によって、不動産や株式などが高騰するものの、どこかのタイミングによって保有していた不動産や株式が一斉に売却されてしまいます。
不動産や株式の下落によって、高値で購入した不動産や株価に大きな損失が発生することで、企業の利益が減少します。また、金融機関が企業に貸し付けしていた資金の返済ができなくなるため、「不良債権」となって金融危機も発生し、景気が悪くなります。景気が悪くなることで、需要が減少しデフレーションに突入します。
悪性インフレーションと良いデフレ論
インフレーションには、「悪性インフレーション」と呼ばれる現象もあります。悪性インフレーションとは、原油価格や原材料価格の高騰によって物価が上昇することを指します。
景気が停滞している時期に起こる悪性インフレーションは、「停滞」を意味する単語と組み合わせて、スタグフレーションといいます。景気が停滞していることで、従業員の給与が上がらない状態で物価が上昇するため、家計を圧迫してしまいます。
日本では、1970年代に起きたオイルショックによって悪性インフレーションが発生し、その後景気が停滞することになりました。2022年2月に始まったロシアのウクライナへの侵攻では、世界的なエネルギー価格の高騰が起きており、悪性インフレーションの傾向が見られます。
「良いデフレ論」は、「生産性上昇による価格下落は好ましい」「デフレは日本の高価格が是正される過程であり望ましい」といったことで良いこととする意見があります。
しかし、デフレーションは、物価の下落によって引き起こされることで、デフレスパイラルに陥ってしまいます。つまり、衣料品1着の価格が下がることや、携帯電話の通話料などの商品が下落するだけではないためです。
デフレよりも「緩やかな」インフレ
デフレーションは、物価の下落に対して通貨価値が上昇するため、一部の人にとっては好都合なことがあります。それは景気の影響を受けず給与がもらえる仕事をしている人になります。しかし、多くの場合、景気の影響を受けるため、あくまで仮定の話となります。
生活において望ましい景気は、デフレーションよりも一定程度のインフレーション状態です。インフレーションによって、物価が上昇するものの、給与が上がり、企業の収益も上がるため、望ましい景気といえるでしょう。
出典
内閣府 平成13年度年次経済財政報告 第2節 デフレの進行と金融政策
SMBC日興証券株式会社 初めてでもわかりやすい用語集 インフレ (インフレ)
SMBC日興証券株式会社 初めてでもわかりやすい用語集 デフレ (デフレ)
野村證券株式会社 証券用語解説集 デフレスパイラル(でふれすぱいらる)
SMBC日興証券株式会社 初めてでもわかりやすい用語集 スタグフレーション (スタグフレーション)
資源エネルギー庁 エネルギー白書2022について
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士
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