障害年金のウソ? ホント?(22)「難病だと受給しやすい?」
ファイナンシャルフィールド / 2022年7月12日 23時20分
![障害年金のウソ? ホント?(22)「難病だと受給しやすい?」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_149854_0-small.jpg)
障害年金の相談を受けていると、ちょっとした思い違いをしている人や、誤ったうわさ話を信じ込んでいる人が少なくないことに気づきます。そうした人たちは、後になって「しまった! 」となりかねません。 そんなことにならないために、あらかじめ正しい知識を身に付けておきましょう。第22回は「難病だと受給しやすい? 」です。
多くの難病があり、それぞれに患者がいる
難病と呼ばれるものは、たくさんあります。試しに、「難病情報センター」(※1)のサイトでみてみると、医療費助成の対象として既に認められている「指定難病」だけでも、330余りがリストアップされています。
私など、耳にしたことがないものがほとんどで、病気の説明欄を読んでみてもとても難解です。ただ、多くの難病があり、それぞれに少なくない患者がいることを思うと、ため息をついてしまいます。
難病の定義は「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるもの」(「難病の患者に対する医療等に関する法律」第1条)とされています。
したがって、難病だと障害年金も受給しやすいように思われるかもしれません。しかし、必ずしもそうであるとは限りません。
障害年金受給の条件となる障害の程度は…
障害年金受給の条件となる障害の程度については、厚生労働省作成の障害認定基準で定められていますが、表現がやや硬いので、かみ砕いて表現した日本年金機構のパンフレット「障害年金ガイド令和4年度版」(※2)から引用します。次のように書かれています。
障害の程度1級
他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。
身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方が、1級に相当します。
(日本年金機構 障害年金ガイド 令和4年度版より引用)
就労や日常生活にどの程度の困難があるか
障害の程度2級
必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。
例えば、家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方が2級に相当します。
(日本年金機構 障害年金ガイド 令和4年度版より引用)
障害の程度3級
労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方が3級に相当します。
(日本年金機構 障害年金ガイド 令和4年度版より引用)
これらを読むと、障害等級の判定基準は、就労や日常生活にどの程度の困難があるか、ということだと分かります。病気の治療の難しさとの関係には言及されていません。
障害年金を受給しにくい場合が少なくない
むしろ、難病の場合は、障害年金を受給しにくい場合が少なくありません。その理由は、次のような事情によるものです。
【a】専門医が少ない
難病の専門医は、それぞれの病気ごとにみると少数です。このため、患者が集中しがちで、受診を予約して何ヶ月も待つケースが少なくありません。診断書を手にするまでに日時を要しがちです。
【b】初診日の判断が難しい
障害年金の請求では、初診日を特定することが重要です。初診日によって、加入要件、納付要件、さらには障害認定日が決まるからです。
難病の場合は、確定診断がされるまでに、さまざまな症状で受診していることが多く、両者の関連が複雑になりがちです。このため、どの受診が初診日になるのか判断に困ることが多いわけです。
重症度を表すことが難しい、などの理由も
【c】検査数値で重症度を表すことが難しい
多くの難病が、検査数値で重症度を表すことが難しいのが実態です。それだけに、認定医に障害の状態が伝わりにくく、認定が難しくなりがちです。
指定難病ではありませんが、慢性疲労症候群や化学物質過敏症などは、厚生労働省から2012年に「障害認定が難しい事例」として具体的な認定事例が公表され、この結果、認定が受けやすくなりました。
【d】傷病に合った診断書がない
一般に、難病の場合の診断書は「その他」(様式第120号の7)を使いますが、この診断書は多くの傷病に対応しているために、個別の傷病に合った記入箇所が少なくなりがちです。
「肢体」「精神」などほかの診断書も積極的に併用して、障害の実態を訴えたいものです。その分、診断書作成料が増えるのはつらいところですが……。
受給に至るまでの敷居が高い
上記のように難病の場合は、障害年金の受給に至るまでの敷居が高いといえると思います。難病での障害年金の受給を検討されている方は、各地の年金事務所や私たち社会保険労務士などを上手に活用して取り組まれることを勧めます。
「難病だと受給しやすい? 」の「ウソ・ホント」は「ウソ」といえそうです。
出典
(※1)公益財団法人難病医学研究財団 難病情報センター
(※2)日本年金機構 障害年金ガイド 令和4年度版
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
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