認知症になったらどうすればいい? 「任意後見契約」という選択肢
ファイナンシャルフィールド / 2022年7月25日 11時40分
65歳以上で認知症の人は、2020年現在で約600万人と推計されており、2025年には約700万人、高齢者の約5人に1人が認知症になると予測されています。 自分自身がいつ認知症になるか正確に把握することは困難ですが、もしもの場合に備えて対策を立てておくことはできます。本記事では判断能力が低下したときに、他の人に後見人になってもらう「任意後見契約」について解説します。
任意後見契約とは
「任意後見契約」は、認知症などによって判断能力が不十分になった場合、後見人になってもらうことをあらかじめ委任する契約です。任意後見契約を結ぶと、自分自身の判断能力が低下したときに、自分に代わって、財産管理や必要な契約の締結などを任意後見人に委任することになります。
法律上の後見には、任意後見の他に「法定後見」があります。法定後見は、裁判所での手続きを経て後見人を選ぶ方法です。
ただし、後見開始の審判は配偶者や親族などの請求が必要であり、また、裁判所によって選任される後見人は面識がない人となる可能性があります。法定後見と異なり、任意後見の場合、自分の信頼した人を後見人として選任できるというメリットがあります。
任意後見契約は公正証書による契約が必要
公正証書は、個人または会社などから嘱託によって、公証人がその権限に基づいて作成する文書です。形式的な証明力がある文書となるため、偽造される可能性が低く、拘束力を高めることができます。
任意後見契約は私文書で行うことはできず、公証役場に行って公正証書で契約を締結する必要があります。公証人から、任意後見契約などのアドバイスを受けることができる場合もあるでしょう。
任意後見人になれない人がいる
任意後見人は、配偶者や親族だけではなく、「友人や知人とも契約締結が可能」です。また、弁護士などの専門家に依頼することも可能です。しかし、法律上ふさわしくないと定められている人は対象外となります。
任意後見になれない人は、「未成年者」や「家庭裁判所で解任された法定代理人や保佐人、補助人」、「破産者」、「委任者に訴訟した人、または訴訟に関係した配偶者や直系血族者」、「不正な行為や任意後見人に適さない事由がある方」、「行方が分からない人」とされています。
任意後見契約の進め方
任意後見契約は、まず委任する人が、後見人を引き受けてくれる人を選定します。相談の上で、承諾を受けることができれば、公証役場において任意後見契約案を作成し、内容に問題がなければ契約を締結します。
契約の締結後、公証役場から法務局へ登記申請を行います。任意後見人の氏名や代理権の範囲を記載した登記事項証明書の交付を受けることで、代理権の証明が可能です。登記手続きを経て、より信用性の高い文書となります。
財産管理が心配な人におすすめ
日本で認知症の数が増える可能性がある中、財産管理への心配から任意後見契約を活用する人も増えるかもしれません。自分自身が認知症などになると、財産が実際に適切に管理されているかを判断することも難しくなります。
任意後見人が勝手に財産を引き出して、委任者が望まないような使い方をする可能性はゼロではありません。制度を活用する場合は、自分にとって信用できる任意後見人を慎重に選定するようにしましょう。
出典
e-Gov法令検索 任意後見契約に関する法律
厚生労働省 こころの病気を知る 認知症
日本公証人連合会 任意後見契約
法務省 公証制度について
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士
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