医薬品副作用被害救済制度ってなに? どのような時に救済されるの?
ファイナンシャルフィールド / 2022年8月2日 12時40分
医薬品副作用被害救済制度とは、医薬品を使用したことで副作用が発生し、その副作用がひどく、入院治療を行わなければならない程度の重い被害を受けた場合に、医療費や年金などの給付が行われる制度です。 副作用の被害は身近に発生するものです。 意外と知られていない制度ですが、今回は、医薬品副作用被害救済制度の概要について解説します。
制度の概要
医薬品は医療を行う上で必要不可欠なものですが、副作用が発生する可能性があります。もちろん、副作用の程度には個人差があり、誰でも発生するわけではありませんし、そのときの体調によって症状が強く出たりすることもあります。
副作用の発生を完全に防ぐことは、現代の医療水準でも不可能といわれています。また、仮に健康被害を負った際に裁判で賠償責任を追及しようとしても、追及自体が困難ですし、裁判費用も高額になります。
このような背景から、「医薬品を適正に使用したにもかかわらず、副作用が発生し、その結果重大な健康被害を負った人に対して、医療費の給付を行う」ことを目的に、迅速な救済を図るために創設された制度です。
■給付の種類
この制度に基づく給付には、以下の7種類があります。給付額は2022年4月1日時点のものです。
1. 医療費
副作用によって発病した疾病の治療に要した費用(実費補てん)
給付額は、健康保険などによる給付額を除いた自己負担分
2. 医療手当
副作用によって発病した疾病の治療に伴う、医療費以外の費用を負担するもの(定額)
給付額は通院のみ、入院のみもしくは両方に該当する場合および通院や入院の期間によって異なる(月額3万4900円~3万6900円)。
3. 障害年金
副作用によって一定の障害の状態になった18歳以上の人の生活保障などを目的として給付(定額)
給付額は障害年金の等級によって異なる。1級の場合は月額23万3700円
4. 障害児養育年金
副作用によって一定の障害の状態になった18歳未満の人を養育する人に対して給付(定額)
給付額は障害年金の等級によって異なる。1級の場合は月額7万3100円
5. 遺族年金
生計維持者が副作用によって死亡した場合に、その遺族に対して生活の立て直しなどを目的として給付(定額、最高10年間であり、死亡した本人が障害年金を受けたことがある場合、その期間が7年に満たないときは10年からその期間を控除した期間、その期間が7年以上のときは3年間)
給付額は月額20万4400円
6. 遺族一時金
生計維持者以外の人が副作用によって死亡した場合に、その遺族に対する見舞金の目的で給付(定額)
給付額は735万8400円
7. 葬祭料
副作用によって死亡した人の葬儀を行うための出費として給付(定額)
給付額は21万2000円
■給付の対象
この制度の給付を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
・民事責任の追及が困難なこと
・医薬品が適正に使用されたこと
・副作用であること
・重い副作用であること
・本来の治療のために受忍することが適当でない副作用であること
救済制度を受けるための手続き
もし、医薬品の副作用によって健康被害を負った場合は、以下の流れで制度を利用することになります。
■給付の請求
健康被害を負った本人もしくは遺族などが、請求書および請求に必要な診断書などの書類を医薬品医療機器総合機構に送付し、給付の請求を行います。
給付に必要な書類や請求の期限は、給付の種類に応じて異なります。具体的には以下のとおりです。
■医学および薬学的な判定
請求を受けた医薬品医療機器総合機構は、その健康被害について副作用によるものかどうかの判定を厚生労働大臣に申し出ます。そして、厚生労働大臣は申し出に応じ、審議会に意見を聞き、判定を行います。
■給付の決定
医薬品医療機器総合機構は、厚生労働大臣の判定に基づき、給付の支給の可否を決定します。
制度の財源
この制度による給付に必要な費用については、医薬品などの製造販売業者などからの拠出金によって、賄われています。また、医薬品医療機器総合機構の事務費の半分は国からの補助金によって賄われています。
(出典:国税庁 医薬品副作用被害救済制度(副作用拠出金)(※1))
まとめ
医薬品副作用救済制度は、薬だけでなく血液製剤も含まれます。例えば、手術で必要な輸血を行い、それがもとで重い副作用を引き起こし、健康被害を負った場合でも対象です。
また、医薬品医療機器総合機構の公式サイトでは、医薬品や医療機器、医薬部外品や化粧品に関する注意喚起情報や、副作用の情報を掲載しています(※2)ので、ぜひチェックしてみてください。
(※1)国税庁 医薬品副作用被害救済制度(副作用拠出金)
(※2)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 情報提供業務
出典
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 医薬品副作用被害救済制度
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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