会社員が「9月に確認すべきこと」とは? 標準報酬月額決定通知書を解説
ファイナンシャルフィールド / 2022年8月3日 10時40分
毎年9月頃に会社から交付される「標準報酬月額決定通知書」をご存じでしょうか。9月に標準報酬月額が改定され、10月から給与天引きされる健康保険料や厚生年金保険料などが変更になります。 本記事では、標準報酬月額決定通知書の内容とチェックポイントを解説します。年に1回通知書を確認することで、給与天引きされる社会保険料や年末調整の所得控除についても理解を深めることができます。
標準報酬月額決定通知書とは
標準報酬月額決定通知書とは、標準報酬月額が決定・改定したときに会社がその内容を従業員に連絡する書類です。最初に、標準報酬月額とは何か、標準報酬月額の決定・改定時期などについて説明します。
標準報酬月額は社会保険料や社会保険の給付金額の計算基礎
標準報酬月額とは、会社員が勤務先から支給される1ヶ月の報酬(報酬月額)を、図表1の通り50の等級(厚生年金は32の等級)に区分した金額のことです。報酬月額には、基本給のほか通勤手当や残業手当などの各種手当が含まれます。ただし、ボーナスは含めません。
図表1.標準報酬月額 ※()内は厚生年金の等級
出典:全国健康保険協会「令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)」より筆者作成。
標準報酬月額に基づいて、社会保険料が決まります。社会保険料とは、健康保険料や介護保険料(40歳以上の人)、厚生年金保険料のことです。また、健康保険や厚生年金から支給される次の給付金額を計算するときも、標準報酬月額を基に計算します。
●傷病手当金(※)の1日当たりの金額
●出産手当金(※)の1日当たりの金額
●厚生年金(老齢や遺族、障害)の年額 など
業務外の病気やけが(傷病手当金)や出産(出産手当金)で所定の休業を取ったときに健康保険から支給される給付金のことです。
標準報酬月額の決定・改定
標準報酬月額の決定または改定には、次の3種類があります。
●資格取得時の決定(就職して厚生年金や健康保険の被保険者資格を取得したとき)
●定時決定(毎年9月)
●随時改定(報酬月額が大幅に変わったとき)
毎年9月に行われる定時決定の流れは、次の通りです。
●会社が4─6月の3ヶ月間の報酬から標準報酬月額を算定し、日本年金機構に届け出
●9月より標準報酬月額が改定され翌年8月まで適用
●9月前後に会社が従業員に標準報酬月額決定通知書を交付し、改定内容を連絡
●9月分(10月給与から天引き)から社会保険料が変更
標準報酬月額は、図表2で計算した報酬月額を図表1に当てはめて算定します。
図表2.報酬月額の計算
引用:日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」
標準報酬月額決定通知書のチェックポイント
標準報酬月額決定通知書の名称や内容は、会社によって異なります。改定された標準報酬月額とともに社会保険料が記載されているケースもあります。
図表3.標準報酬月額決定通知書のイメージ
出典:日本年金機構「通知様式の例」を参考に筆者作成。
通知書のチェックポイントは次の2つです。
●標準報酬月額
●社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)
まず、改定された標準報酬月額を確認しましょう。標準報酬月額が高くなれば社会保険料も高くなりますが、社会保険の給付もアップします。負担が増えた分、保障が手厚くなるということです。
次に、社会保険料を確認します。社会保険料の変更は9月分からですが、保険料の給与天引きは翌月給与から行うのが一般的です。10月給与から社会保険料が変更になるため、家計の見直しが必要になるケースもあるでしょう。
通知書に社会保険料の記載がない場合は、保険料は次の料率を使って計算できます。社会保険料は労使折半で支払うため、従業員の負担は「標準報酬月額×各保険料率×1/2」です。
●厚生年金保険料率:18.3%
●健康保険料率:10%前後(健康保険組合によって異なる)
●介護保険料:1.64%(40歳以上の人)
また、社会保険料は全額が所得控除されるため、事前に年末調整の還付金を概算したい時には、標準報酬月額決定通知書が役に立ちます。
標準報酬月額決定通知書を確認して社会保険について理解を深めよう
標準報酬月額決定通知書とは、標準報酬月額が決定・改定されたときに、会社がその内容を従業員に連絡する書類です。標準報酬月額は社会保険の保険料や給付金額の計算基礎となるため、標準報酬月額を理解することによって社会保険についての理解が深まります。
毎年9月ごろに会社から交付される標準報酬月額決定通知書を確認して、保険料変更に伴う家計の見直しや社会保険による保障内容の点検を行いましょう。
出典
日本年金機構 厚生年金保険の保険料
日本年金機構 定時決定(算定基礎届)
日本年金機構 厚生年金保険料額表
全国健康保険協会 令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)
執筆者:西岡秀泰
社会保険労務士・FP2級
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