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知らない人が多い認知症による「資産凍結リスク」。事前の対策方法とは?

ファイナンシャルフィールド / 2022年8月5日 3時40分

知らない人が多い認知症による「資産凍結リスク」。事前の対策方法とは?

「銀行にある自分の口座から出金できなくなる」、現代の日本でそんなばかげた状況などあり得ないと多くの人は考えています。しかし、急速に高齢化が進む日本は、この問題に直面しています。そのポイントとなるのは認知症と意思能力です。   そこでこの記事では、認知症による意思能力の低下で起こりうる資産凍結のリスクと対策方法について説明します。

認知症になるとお金が出せないってホント?

スマート家族信託を運営するトリニティ・テクノロジー株式会社が2022年5月27日〜6月1日に行った、親が存命の45〜65歳の男女約1000名を対象としたアンケート調査では、「預金者が認知症になった場合、資産凍結されることがあるのを知っているか」という質問に対し調査対象者の75.9%が「聞いたことがある」または「知らなかった」と回答しています。
 
つまり、多くの人が認知症になったときに何が起こるか関心がないことがうかがえます。
 
民法では認知症など、意思能力のない人の契約行為は無効、または取り消すことができます。これは本人の利益が害されることを防ぐためです。これまで日本では主に「成年後見制度」がこの役割を果たしてきました。
 

利益の保護と契約の自由を両立させる民事信託

認知症に代表される、自ら意思表示が困難な人の利益を守ることはとても重要です。しかし、保護を厳格にするほど契約の自由は損なわれます。これまでは成年後見制度の枠組みのなかで、利益の保護に重点が置かれていました。
 
その結果、自分の口座から出金できないという問題が発生するのです。口座の凍結だけではありません。すべての契約行為が制限を受けるため、相続税対策で建てたアパートの修繕もできません。株式や投資信託の売買も不可能であることに加え、遺言の作成も制約を受けます。
 
そこで、注目されているのが「民事信託(家族信託)」という仕組みです。本人が認知症になる前に家族や第三者と対象となる財産を定め信託契約を結びます。そうすることで、たとえ本人が認知症になっても信託された人(受託者)は本人に代わり託された財産の管理や移転、処分が可能になります。また、金融機関も民事信託の仕組みを利用し、本人が認知症になっても家族が出金できるような金融商品を販売しています。
 

民事信託の課題

しかし、民事信託ですべての問題が解決されるのかというと、そう簡単ではありません。成年後見制度では裁判所や任意後見監督人が本人の財産が適切に管理されているか目を光らせていますが、民事信託ではこうした仕組みがなく、受託者が権限を乱用する可能性があります。信託契約についても内容が複雑であるため弁護士など専門家の関与が不可欠で、知識も費用も必要です。
 
また、民事信託を利用することで信託される財産は本人の財産とは切り離されるため、相続の発生時にはさまざまな問題が発生する可能性があります。そのひとつが遺留分にかかわるトラブルであり、裁判に発展している例もあります。民事信託は、解決方法のひとつではありますが万全ではないのです。また、弁護士など民事信託に明るい専門家のアドバイスが不可欠です。
 

すべてを満たす認知症対策は今のところ存在しない

日々の経済活動の多くは民法が基となっています。また、相続や家族関係のあり方についても多くの部分が民法で規定されています。しかし、民法が制定されたのは明治29年、認知症をはじめ現代日本が抱えるさまざまな問題は民法制定時には想定外だったのです。
 
既存の制度が現状に合わなくなっていることは否めません。とりわけ認知症を巡る制度設計のあり方については、利益の保護と利便性のバランスをどのように保つかが焦点となるでしょう。
 

出典

PR TIMES 45〜65歳の4人に1人が、親の認知症による「資産凍結」リスクを認識。資産凍結を回避する「成年後見制度」を45%、「家族信託」を27%が理解。親の資産管理について3人に1人が不安意識あり
一般社団法人民事信託協会
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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