個人事業主の老後の資金準備に。「小規模企業共済」とは?
ファイナンシャルフィールド / 2022年8月18日 23時0分
個人事業主の老後資金というと、まず挙げられるのが国民年金(=老齢基礎年金)です。 会社勤めの方の場合には、さらに厚生年金保険(=老齢厚生年金)が上乗せされますが、個人事業主の場合にはそれがありませんので、自身で国民年金の上乗せを検討することになります。 個人事業主の老後資金の準備方法として、例えばiDeCo(=個人型確定拠出年金)・国民年金基金・小規模企業共済が考えられます。今回は、小規模企業共済について確認してみましょう。
小規模企業共済に加入できるのは?
小規模企業共済は「企業」という文字が含まれていますが、その対象は、「小規模」の要件を満たした企業の役員・個人事業主・個人事業の共同経営者が加入できます。
まず、この「小規模」の要件を大まかにみてみましょう。「小規模」の要件のうち、代表的なものを挙げると以下のとおりです。
・建設業
・製造業
・運輸業
・不動産業
・サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)
・農業
などの場合は、常時従業員数は20人以下です。
・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)
・商業(卸売業・小売業)
これらの場合は、常時従業員数は5人以下です。これらの人数には、家族従業員や、共同経営の要件を満たさない配偶者などの事業専従者は除かれます。ご自身が対象になるかならないかは、加入を検討するときに、しっかり確認しておいた方がよいでしょう。
なお、小規模企業共済と銘打っていますが、企業の経営者が加入する場合も、会社名義での契約ではなく、あくまで役員が個人で加入します。
小規模企業共済の掛け金は?
掛け金は、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象です。掛金月額は、1000円から7万円までの範囲内において500円単位で自由に選択することができ、増額も減額も可能です。
また、所得がない・災害に遭遇した・入院中などの理由で、掛け金の払い込みを止める掛止めも可能です。また、掛け金の納付は月払いのほかに、年払いや半年払いもあります。前納することもでき、前納すると一定割合の前納減額金を受け取ることができます。
なお、掛け金を滞納して12ヶ月たつと、機構解約(解除)になってしまいます。掛金月額を増減できたり、また理由によっては掛止めも可能なのは、売り上げが不安定な方や、景気に左右されがちな個人事業主への配慮が行き届いているといえるのではないでしょうか。
解約はできるのか?
では、加入した小規模企業共済を解約することはできるのでしょうか?
解約することは可能です。解約する場合は掛金納付月数に応じて、掛金合計額の80~120%相当額の解約手当金を受け取ることができます。ただし、掛金納付月数が、240ヶ月(20 年)未満の場合は、納付済みの掛金合計額を下回ります。
万が一亡くなった場合には?
小規模企業共済に加入している個人事業主が亡くなった場合、小規模企業共済法に定める遺族が、受給権を得ることになります。この受給権は、民法における相続財産にはなりませんが、相続税法上の見なし相続財産として、相続税の課税対象です。
小規模企業共済の共済金などの受け取り
小規模企業共済には、満期や満額などは存在しません。共済契約者の立場や請求事由によって、受け取ることができる共済金の種類が異なります。
先述のとおり、小規模企業共済に加入できるのは「小規模」の要件を満たした企業の役員・個人事業主・個人事業の共同経営者ですが、個人事業主の場合は以下のとおりです。
共済金などの受け取り方法は、以下の3種類です。
・一括受け取り
・分割受け取り
・一括受け取りと分割受け取りの併用
「分割受け取り」または「一括受け取りと分割受け取りの併用」を希望する方は、以下の要件のすべてを満たす必要があります。
1.共済金Aまたは共済金Bであること
2.請求した事由が共済契約者の死亡でないこと
3.請求した事由が発生した日において60歳以上であること
4.共済金の金額が以下にあてはまること
(1) 分割受け取りの場合:300万円以上
(2) 一括受け取りと分割受け取りの併用の場合:330万円以上(一括支給分が30万円以上、分割支給分が300万円以上)
なお、死亡以外の一括受け取りや、65歳以上の解約は退職所得の扱いになりますが、65歳未満の解約は一時所得の扱いです。また、分割受け取りは雑所得となり、老齢基礎年金などと同じく、公的年金等控除の対象となります。
請求事由によって異なる共済金受取額
請求事由は以下のとおりです。
・個人事業を廃業した
・共済契約者の方が亡くなった
・老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上掛け金を払い込んだ方)
準共済金を請求した事由としては、「個人事業を法人成りし、加入資格がなくなったことによって解約をした」となります。解約手当金については、前述したとおりです。
請求した事由によって受け取れる共済金の額の違いは、次に記すとおりです。
<掛金月額>
1万円
<掛金納付年数>
20年(掛金合計額:240万円)
<共済金A>
278万6400円
<共済金B>
265万8800円
<準共済金>
241万9500円
共済金をいくら受け取れるのか、シミュレーションしてみよう
共済金の受取額を知りたい場合は、「小規模企業共済制度 加入シミュレーション(※)」を利用するとよいでしょう。現在の年齢(月まで)と、脱退時の年齢(月まで)と掛金月額、それに課税所得金額(1万円単位)を入力すると試算できます。
試算の結果は、「共済金A」と「共済金B」のそれぞれの一括受け取りの額と、共済金額が300万円以上の場合は分割受け取りの額、それに小規模企業共済等掛金控除による節税効果まで表示されます。
出典
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構) 小規模企業共済 制度のしおり
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構) 小規模企業共済とは
(※)独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構) 小規模企業共済制度 加入シミュレーション
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役
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