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「制服への着替え時間」に時給は発生する?労働時間とみなされるかがポイントに!

ファイナンシャルフィールド / 2022年8月19日 11時10分

「制服への着替え時間」に時給は発生する?労働時間とみなされるかがポイントに!

制服着用が義務付けられている就労先は少なくありません。使用者側は、スタッフが制服を着ていれば、組織としての統一感や顧客サービスの向上に結びつくのではないかと考えるようです。   では、働く立場としてはどうでしょうか。制服の機能には同意するとしても、着替える時間は労働時間に入っているのかどうかが気になるでしょう。この記事では、制服の着替えと労働時間について考えます。

労働者と使用者の立場によって解釈が異なる着替えの時間

一般的には、制服に着替える時間はそれほど長い時間ではないと考えがちです。朝、制服に着替えて、帰宅時に再び私服に着替えるための時間は、合わせても10~15分程度だと思われます。
 
とはいえ、出勤・退勤時には必ず着替えるとすると、年間で考えると相当な時間になります。1日の着替え時間に10分必要として、週5日出勤の場合は4週間で200分間(3時間20分)、半年で20時間となります。1日15分であれば30時間になるのです。
 
使用者側から見れば、仕事の生産性向上には寄与していない時間なので、当然のごとく労働時間には入らないと考えたくなるでしょう。「仕事に取り掛かる前に着替えなどの準備を整えてくるのは社会人の常識だ」という意見もあるかもしれません。
 
実際に、就業規則に着替えなどの時間を労働時間から除外する旨を記載しているケースや、「始業時には着替えが終わってからタイムカードを打刻するように」と指示されるケースもあるようです。
 
他方、従業員である労働者の立場からすれば、正反対の意見となりがちです。「制服着用規則に従って着替えるのだから当然労働時間に含まれるべき」であって、「その分の賃金は支払われなければならない」といった意見が出てくるでしょう。
 

最高裁判所の判例では?

では、法律ではどうなっているのでしょうか。労使関係について定めた労働基準法には、32条に労働時間についての記載がありますが、労働時間の明確な定義はありません。
 
したがって、制服に着替える時間が賃金支給の対象となる労働時間に該当するかどうかについては何も書かれていないのです。このような場合には、具体的な裁判の判例が参考になります。平成12年3月に最高裁判所が判決を下した、ある賃金請求事件では、労働基準法上の労働時間の適用範囲が示されました。
 
判決のポイントを要約すると、制服への着替えの時間が会社の「指揮命令下にある」と認められる場合には、労働時間に該当するのです。
 
この「指揮命令下」とは、会社側が就業規則で明記していたり、従わないと懲戒処分などの不利益をこうむったり、着替え場所を会社が指定していたりする、などの場合です。つまり、会社が制服着用の義務を課している場合には、一般的にその着替え時間も賃金が発生すると考えてよいでしょう。
 

お互い気持ちよく働ける環境づくりを

最高裁判所の判例によれば、使用者としての会社側が制服着用を義務化している場合には、着替えの時間は労働時間とみなされ賃金は発生します。
 
とはいえ、常識的な長さというものはあるので、特段の事情がない限り、制服の着替えにあまりに長い時間をかけることは避けましょう。同じ組織で仕事をしている以上は、労使が気持ちよく協調できる環境づくりに配慮した行動が望まれます。
 

出典

最高裁判所 最一決平成12年3月9日民集54巻3号801頁(三菱重工業長崎造船所事件)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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