生命保険は相続で活用できるの? 相続対策や節税対策について解説
ファイナンシャルフィールド / 2022年8月26日 12時40分
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生命保険は、相続対策や相続の節税対策として活用されることがあります。遺産を相続人に分けるにあたって、自宅などの不動産が多く現金が少なければ、遺産分割に偏りが生じてしまいます。また、遺産が多ければ相続税も高額になるでしょう。 そこで生命保険を活用して、相続対策や相続税対策を行うことも多いです。 本記事では、生命保険で活用できる相続対策、相続における節税対策について解説します。
生命保険を活用した相続対策
相続する際に複数の相続人がいても、現金やすぐに現金に換えられる資産があれば、スムーズに遺産分割ができるでしょう。しかし、現金などがなく現金化が難しい不動産などが多い場合、スムーズな遺産分割にならないことがあります。相続人には、「法定相続分」があり、法定相続分を侵害すれば、遺産分割でもめる可能性が出てしまいます。
法定相続分は、民法によって定められた「相続の取り分」のことで、取り分に合わせた分割ができないと、相続人の権利を侵害することになります。そこで、相続対策として生命保険を活用すると相続人の権利を侵害しないで相続ができるようになります。
例として、相続人が長男と次男の2人しかいない場合で、自宅不動産を7000万円、現預金を3000万円とした場合で見ていきましょう。
生命保険を活用しない場合
子ども2人の場合、半分ずつの取り分となり、遺産総額は1億円です。不動産と現預金で分けるとすれば図表1です。
図表1
長男 | 次男 | |
---|---|---|
遺産総額 | 自宅不動産 7000万円 |
現預金 3000万円 |
資産合計 | 7000万円 | 3000万円 |
筆者作成
もし、不動産を共有するとすれば、図表2となるでしょう。
図表2
長男 | 次男 | |
---|---|---|
遺産総額 | 自宅不動産 3500万円 1/2の共有持分 |
自宅不動産 3500万円 1/2の共有持分 |
現預金 1500万円 |
現預金 1500万円 |
|
資産合計 | 5000万円 | 5000万円 |
筆者作成
不動産が共有財産となるため、片方の相続人が自宅不動産に住む場合、もう片方の相続人は家賃などを受け取ることになるでしょう。どちらにせよ片方の相続人が自由に不動産を活用することは難しくなります。
生命保険を活用する場合
生命保険を活用した相続対策は、自宅不動産を相続する長男が法定相続分を侵害する分の4000万円を次男への代償金として渡すことです。この場合の生命保険の契約は、契約者と被保険者が被相続人、死亡保険金受取人が長男となります。
死亡保険金は相続財産にならず、長男固有の財産です。その死亡保険金を図表3のように相続人である次男に渡すことで、法定相続分を侵害せずに遺産分割ができるようになります。
図表3
長男 | 次男 | |
---|---|---|
遺産総額 | 自宅不動産 7000万円 |
現預金 3000万円 |
長男による代償金 4000万円 |
||
資産合計 | 7000万円 | 7000万円 |
筆者作成
なお、死亡保険金を代償金とするには、遺産分割協議書に明記しなければなりません。もし、明記されていなければ、贈与の扱いとなり、贈与税の対象となってしまいます。
生命保険を活用した相続の節税対策
生命保険は相続財産に該当しませんが、相続税の算出額に含まれます。しかし、生命保険には、相続税の非課税枠があるため、同じ金額を現金として持っているよりも「節税効果」があります。
生命保険の非課税枠は、「500万円×法定相続人の数」で計算します。
例として、相続人が長男1人として7000万円の死亡保険金、または現金を受け取った場合で見ていきましょう。
死亡保険金または現金で受け取った場合の相続税額
生命保険の非課税枠は、「500万円×法定相続人1名=500万円」です。
また、相続税には、基礎控除されるものがあります。相続税の基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人」で計算することができるため、3600万円となります。
図表4 相続税の税率と控除額の抜粋
取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000万円超~3000万円以下 | 15% | 50万円 |
3000万円超~5000万円以下 | 20% | 200万円 |
出典 国税庁 No.4155 相続税の税率 を基に筆者作成
(死亡保険金7000万円-生命保険の非課税枠500万円)-相続税の基礎控除額3600万円=2900万円
2900万円×相続税の税率15%-控除額50万円=385万円
現金7000万円-相続税の基礎控除額3600万円=3400万円
3400万円×相続税の税率20%-控除額200万円=480万円
つまり、7000万円の死亡保険金または現金を受け取った場合で計算した時に、死亡保険金の場合の相続税額が385万円、現金の場合の相続税額が480万円となり、95万円分の節税効果があることになります。
生命保険は相続に活用できる
生命保険を活用した相続対策と相続における節税対策について紹介してきました。相続が不動産など現金や現金に換わるものが少ない場合や、現金しかない場合には、生命保険の死亡保険金を活用することで、相続対策にも節税対策にも活用ができます。
相続でもめたり、相続税で悩んだりすることがあれば、まずは生命保険を活用してみると良いでしょう。
出典
e-Gov法令検索 民法
国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
国税庁 No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算
国税庁 No.4105 相続税がかかる財産
国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
国税庁 No.4152 相続税の計算
国税庁 No.4155 相続税の税率
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士
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