とうとう、もうすぐ定年退職。退職金ってどのくらい税金がとられるの? 節税方法は?
ファイナンシャルフィールド / 2022年8月28日 8時20分
![とうとう、もうすぐ定年退職。退職金ってどのくらい税金がとられるの? 節税方法は?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_156854_0-small.jpg)
定年を迎える人が受け取る「退職金」 は金額が大きく、老後資金のあてにしている人にとっては、どれくらい税金が引かれるのか気になるものです。 退職金にも「所得税 」および「復興特別所得税」、そして「住民税」がかかりますが、給与とは別に計算されます。 そこで、退職金から引かれる税金の計算方法と、節税のための賢い受け取り方を説明します。
退職金の課税退職所得の計算
退職金にかかる所得税や住民税の計算の基となる、「課税退職所得」の計算方法を説明します。
まず、退職金から控除される「退職所得控除額」の計算をします。退職所得控除は2段階になっており、「勤続年数が20年までの部分」と「20年を超える部分」で計算が異なります。
勤続20年までの退職所得控除額は「40万円×勤続年数」となり、最大で800万円、80万円に満たない場合は80万円です。
20年超の場合は下記のように算出します。
800万円+70万円×(勤続年数-20年)
例えば、34年3ヶ月勤めた人が、退職金として2500万円受け取れる場合を考えましょう。
1年に満たない「3ヶ月」は切り上げて「35年」として計算しますので、「40万円×20年+70万円×15年」となり、1850万円が退職所得控除額となります。
さらに、退職所得控除を差し引いて残った額を2分の1にした金額が課税退職所得となります。計算式で表すと下記のとおりです。
{2500万円-(40万円×20年+70万円×15年)}÷2=325万円
したがって、退職金にかかる税金を計算するときの基になる「課税退職所得」は、「325万円」です。ちなみに、勤続年数が5年以下の場合(短期退職手当)や、特定役員退職手当等に該当する場合は計算式が異なりますが、ここでは割愛します。
退職金にかかる「所得税」と「住民税」
退職金にかかる所得税は、会社によって「退職所得の受給に関する申告書」を提出する場合としない場合とがあり、それぞれで税率が変わります。
前者の場合、退職所得控除を適用した計算が行われ、源泉徴収されます。上記の「勤続34年3ヶ月、退職金2500万円」のケースでは、課税退職所得は325万円でしたので、税法に従って計算すると、下記となります。
(325万円×10%ー9万7500円)×102.1%≒23万2277円(1円未満切り捨て、復興特別所得税2.1%を含む)
また、住民税は「市町村民税(特別区民税)」が6%、「道府県民税(都民税)」が4%、あわせて10%です。このケースでは32万5000円となり、所得税と合わせた税金は、「55万7277円」となります。
もし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しない場合、復興特別所得税を含む「20.42%」の所得税が課されますが、住民税は源泉徴収されません。
また、退職所得控除も適用されないため、課税退職所得が上記の例と同じ325万円だった場合、所得税は「66万3650円」となり、住民税がなくても10万円以上納税額が増えてしまいます。この場合、確定申告をすれば、住民税を含めた適正な納税額に計算し直され、納め過ぎた税金は還付されます。
退職所得控除を超える部分を「年金方式」で受け取ること
退職金にかかる税金の節約するために、「退職所得控除」と同額を退職金として一括で受け取り、残った額を「年金方式」で受け取る方法があります。退職所得控除と同額の退職金ならば、所得税はかかりません。
また、退職金を年金方式で受け取る分は「雑所得」となり、やはり所得税の課税対象となりますが、「公的年金等控除」を受けることが可能になります。
「公的年金等以外の所得が1000万円以下」で「65歳未満」の人の場合、公的年金等の収入が年間60万円までなら所得税がかかりません。
また、基礎控除や配偶者控除、生命保険控除など、さまざまな控除分を差し引くことができるため、退職金の年金払い分以外に収入がない場合は、公的年金等控除額の60万円以上受け取っても、非課税になる可能性が高くなります。
このように、退職金のうち一括受け取りでは課税されてしまう部分を年金方式で分割受け取りにすることで、非課税にすることも可能になります。
退職金の一部を年金がわりにすることで、節税と公的年金支給までのつなぎになる
60歳で定年退職した人は原則5年間、公的年金の支給を待たなくてはなりません。
しかし、一括で受け取った退職金を取り崩して生活するよりも、退職金のうち、課税対象となる金額を年金方式で受けるようにすることで、節税しながら公的年金支給までの年金代わりとすることができます。
勤め先で年金方式での退職金支給が可能ならば、前向きに検討してみる価値はあるでしょう。
出典
人事院 1退職手当制度の概要
国税庁 別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1600 公的年金等の課税関係
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1500 雑所得
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1100 所得控除のあらまし
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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