相続でもめないために 〜葬儀代とお墓代〜
ファイナンシャルフィールド / 2022年8月30日 23時20分
![相続でもめないために 〜葬儀代とお墓代〜](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_157280_0-small.jpg)
自分の死後、相続時やその他の手続きの際に、遺された家族にもめごとが起きてほしくないと思う人は多いことでしょう。自分に万が一のことが起こった時にすぐに用意をしなくてはならない葬儀代とお墓代は、どのように準備したほうがよいのでしょうか。貯金? 生命保険? FPが選択肢をアドバイスします。
人生最後のセレモニーの希望をしっかり伝える
相続が“争族”にならないようにと、遺言を作成する人が増加傾向にあります。“財産をどのように引き継ぐのか”は、遺された家族にとっても大問題です。
相続税の課税対象にはなりませんが、「お墓は誰が引き継ぐのか」、また「葬儀はどのように行うのか」は家族内でも意見が分かれるケースが多く、争族の火種にもなりかねません。生前にご家族と話し合って、しっかりと道筋を付けておくことは重要です。
自分にとって人生最後のセレモニーともいえるお葬式ですが、“どのような形式で送ってほしいか”の希望を家族に伝えておくことは大切です。これによって費用も大きく変わります。エンディングノートに、訃報を知らせてほしい人のリストを記載するなど、用意周到に備えている方もいらっしゃいます。
最近は、ごく親しい人で送る家族葬が主流になっていますが、そうではない旧来型の形式で多くの人に送ってほしい、家族葬とは別にお別れの会をしてほしいなどの希望があるかもしれません。
お葬式に対する考え方は多種多様で、それに応じてお葬式も様変わりしています。選択肢が多くなると、遺された家族にとっては「お父さん、どうしてほしかったのかな」と悩むことも増えるはずです。そうならないためにも、事前に伝えておくと安心です。
「お葬式代くらいは自分で備えたい」という生命保険のテレビCMなどを目にします。生命保険でお葬式代を用意するメリットは、相続のもろもろの手続きを経ることなく保険金が支払われることにあります。葬儀代が目的なら解約返戻金のない終身保険にすることで、保険料を安くすることができます。
一方、解約返戻金の出るタイプの場合は、契約途中で「葬儀代100万円を残して部分解約し、解約した部分は自分のために使う」ということもできます。生命保険の受取人を、配偶者や長男など喪主にあたる人にしておくと精算もしやすいです。
お金の流れを明らかにすることが、争族の回避につながります。葬儀費用は相続財産から控除ができます。取りあえず家族が立て替えて、相続財産で調整するケースもあるでしょう。
(図表1)
お墓のことで悩みは多い
葬儀の次はお墓の問題です。すでにお墓のある人も、これからお墓の購入を考えている人も、さまざまに悩みは多いです。自分の代だけでなく子々孫々にも関わることですので、ご夫婦だけで決めるのではなく、家族はもちろん、必要に応じて親族も交えて話し合うことが必須です。
一例をご紹介しましょう。
「先祖代々のお墓が傷んでいたので、お墓をきれいに改修した。費用は百万円程度かかったけれど、これで心配ない」と、姑から連絡があったというAさん。お墓は地方にあり、かなり山奥だそうです。
嫁であるAさんは土地になじみもなく、将来的にはお墓の引っ越しを望んでいました。息子夫婦のことを思っての行動ですが、複雑な心境です。お墓は相続財産に算入されませんが、逆に葬儀代のようにお墓代を差し引きすることもできません。お墓の費用を息子に負担させたくない、姑の気持ちも分かります。
“お参りできない”という理由で、既存の墓を墓じまいする例もあります。コロナで帰省が制限されたことも後押ししていますが、お参りする人の高齢化に伴い、この流れは続きそうです。
お墓事情に詳しいファイナンシャル・プランナーの池田賢一さんによると、「墓じまいには思わぬ費用が掛かることに注意が必要」といいます。墓じまいする際は、今あるお墓を撤去し、さら地にして返すことが原則です。お墓の広さや墓地のある場所により変動があるものの、1平方メートル当たり7~15万円が目安です。墓じまいにかかる費用項目は図表のとおりです。
(図表2)
改葬先のお墓の費用は想定していても、今あるお墓の解体撤去などに思わぬ費用が掛かることもありますので、専門家に見積もってもらうことの重要性を感じます。
「“どのように供養するのか”を考える時、お墓にこだわることはないのでは」というのは、池田さんの意見です。例えば、遺骨を分骨して手元供養する、このような選択肢もあるでしょう。自分の供養の方向性について考えてみることが先決、というアドバイスをいただきました。
お墓の選択肢は増え、掛かる費用も違います。どのように供養していくのか、遺される家族と意見の擦り合わせは必要です。費用は誰が負担するのか、どのように分担するのかなどを考えるのも大切ですが、お墓にまつわる長期計画の共有が優先だと筆者は思いました。
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
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