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70歳定年の実現は遠い? 改正高年齢者雇用安定法の問題に迫る

ファイナンシャルフィールド / 2022年8月31日 12時40分

70歳定年の実現は遠い? 改正高年齢者雇用安定法の問題に迫る

高年齢者雇用安定法は、2020年3月31日に公布され、65歳までの雇用確保義務や70歳までの雇用を努力義務として追加されました。しかし、現状は70歳までの定年延長は進んでいない状況です。   本記事では、高年齢者雇用安定法にある70歳定年の問題点について解説します。

高年齢者雇用安定法とは

高年齢者雇用安定法は、60歳未満の定年を禁止しており、65歳までの雇用確保措置を講じなければなりません。65歳までの雇用確保は、「65歳までの定年引き上げ」「定年制の廃止」「65歳までの継続雇用制度の導入」の3つがあります。継続雇用制度は希望者全員に制度を適用する原則となります。
 
そして、令和3年4月1日に施行された改正高年齢者雇用安定法では、65歳から70歳までの就業確保措置が企業の努力義務として新設されました。70歳までの雇用確保は、65歳の雇用確保措置と同じように「70歳までの定年引き上げ」「定年制の廃止」「70歳までの継続雇用制度の導入」「70歳までの継続的な業務委託契約制度の導入」「70歳まで継続的に事業主が実施または委託などをしている社会貢献事業などに従事できる制度の導入」の5つです。
 
ただし、70歳までの就業機会の確保は努力義務となるため強制力はありません。
 

70歳定年は浸透しているのか


 
日本経済団体連合会が実施した「2021年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」では、高齢者雇用について発表しています。
 

65歳までの雇用確保措置について

調査結果によると、「65歳までの継続雇用制度の導入」が82.2%、「65歳までの定年引上げ」が17.0%、「定年廃止」が0.8%となります。また、「65歳までの継続雇用制度を導入」した企業のうち、「定年引き上げ」と「定年廃止」の導入予定が「ある」が29.5%、「なし」が70.5%でした。
 
調査結果を見ると、65歳までの雇用確保措置が義務化されたことで、定年の引き上げなどに向けた恒久的な制度作りというよりは、60歳で区切りをつけて以降は「退職」か「再雇用」の選択を用意した状態といえます。「定年引き上げ」と「定年廃止」の導入予定が「ある」と答えた企業が約3割となっており、今後も制度化に向けた取り組みが行われていくといえるでしょう。
 

70歳までの雇用確保措置について

70歳までの雇用確保措置の調査結果は、「対応済み(決定済みを含む)」が21.5%、「対応の検討中または予定である」が68.1%、「検討していない」は10.4%でした。また、「対応済み(決定済みを含む)」「対応を検討中である」と回答した企業の9割超が「70歳までの継続雇用制度の導入」を検討または実施しています。
 
結果を見ると、70歳までの雇用確保措置は努力義務となるため、対応した企業も約2割と少ない状況です。また、今後も70歳の定年に向けた制度化を行うかといえば増える可能性は少ないといえるでしょう。
 

実際に70歳までの定年は難しい

60歳の定年だったものが、再雇用とはいえ65歳に引き上がるということは、単純に人件費が増加するだけとなります。また企業収益が毎年右肩上がりであれば問題ないにせよ、例えばさまざまな要因で企業収益が出しづらい状況であれば、定年の引き上げや定年の廃止を制度として導入するのは難しいといえるでしょう。
 
また、大企業によっては、65歳や70歳までの継続雇用を制度として延長する可能性があったとしても、50代の段階で割り増し退職金を設定して早期退職させることもあります。国として高年齢者雇用安定法が改正され、雇用確保措置が講じられたとしても、安心して働けるようになるかは別問題となるため注意が必要です。
 

出典

e-Gov法令検索 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
厚生労働省 高年齢者雇用安定法改正の概要
一般社団法人日本経済団体連合会 2021年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果
 
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士

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