【実質増税!?】「年収300万円以下の副業」は雑所得? 事業所得との違いと対策を解説
ファイナンシャルフィールド / 2022年9月6日 22時20分
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最近副業を始めた人や、始めようと思っている人に大きな影響のある通達の改正予定が、国税庁から発表されました。これまで利用できた節税が、副業の年収が300万円以下の人は利用できなくなります。つまり、実質上の増税です。 国税庁が2022年8月に発表した法令解釈通達の改正案によると、年収300万円以下の副業は原則として「雑所得」扱いになります。 これまでは、会社員の副業でも所定の要件を満たせば「事業所得」として認められましたが、今後は「年収300万円」を超えない限り、原則として「事業所得」が認められません。
事業所得が認められないことによる影響
事業所得が認められないと、最大65万円まで適用された所得控除(青色申告特別控除)がなくなります。青色申告特別控除とは、事業所得や不動産所得のある人が青色申告承認申請を行うことで利用できる控除です。
確定申告の方法により、控除できる金額は10万円、55万円、65万円に分かれています。正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳しているか、電子帳簿(会計ソフトなどの電磁的データ)で保存しているかどうかで、控除の金額は変わります。
・65万円:複式簿記+e-TAXまたは電子帳簿保存
・55万円:複式簿記
・10万円:上記以外
(出典:国税庁 No.2072 青色申告特別控除)
副業と本業の年収が合計400万円の会社員の場合、約10万円の増税になります。
また、事業所得を赤字にして給与所得と合算して節税する方法(損益通算)が使えません。雑所得は損益通算の対象となる所得の対象範囲に含まれていないためです。雑所得で認められるのは、経費の計上のみとなります。例えば、副業のために購入したパソコンや、物販のために仕入れた商品などは、収入から差し引いて計上できます。
改正案には「事業所得と業務に係る雑所得の判定は、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するのであるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない」という文言が追加されました。
そこから「事業所得」と「雑所得」の区分を明確化させる狙いがあることがうかがえます。
通達が適用された場合の対策
国税庁の通達案は8月いっぱいパブリックコメント(意見公募)を実施し、寄せられた意見を踏まえた国税庁としての考えを示した上で、早ければ令和4年度下期にも改正される予定です。
本稿執筆時点では1つの「案」であり、決定ではありません。ただ、ここまで明確にされた改正案や流れをみれば、2023年の確定申告からの適用が濃厚とみられます。
適用された場合の「対策」は2つあります。
年収300万円超にする
300万円の基準は、所得ではなく収入です。仮に経費を除いた所得が300万円以下でも、収入が300万円を超えていれば事業所得が適用されます。
急に収入を増やすのは大変ですが、物品販売などの副業なら比較的簡単に増やせるでしょう。仕入れを増やして売却さえできれば、仮に赤字でも収入は増えます。年収が高い人ほど事業所得の節税効果は高くなるので、節税メリットが上回るなら有効な対策の1つです。
独立して本業にしてしまう
年収300万円の基準は、副業のみ適用される予定です。そのため、会社員を辞めて独立すれば、年収300万円以下でも事業所得として確定申告できます。ただし、副業の収入を生活の足しにしている人にとっては、現実的ではないでしょう。
副業で年収300万円以下は甘んじて受け入れるしかない
今回の通達は、「副業で稼いでいる会社員への狙い撃ちだ」と一部で批判の声も上がっています。副業で年収300万円は簡単ではありませんし、年収300万円を超える副業は、もはや本業と呼んで差し支えないレベルでしょう。
300万円が分岐点であるものの、改正案に盛り込まれた一文には〈特に反証のない限り〉というフレーズがあります。収入は少なくても独立に向けた副業であることなどが「反証」によって合理性があると認められれば、たとえ300万円以下でも事業所得と認定される余地は残されていそうです。
とはいえ、通達が改正されれば、新しいルール通りに確定申告するしかありません。物品販売などで年収300万円超にする以外は、甘んじて受け入れるしかないでしょう。
出典
国税庁 「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募手続の実施について(2022年8月1日)
執筆者:北川真大
2級ファイナンシャルプランニング技能士・証券外務員一種
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