在職老齢年金制度の改正、誰にメリットがある?
ファイナンシャルフィールド / 2022年9月7日 3時10分
![在職老齢年金制度の改正、誰にメリットがある?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_158172_0-small.jpg)
令和4年4月に公的年金の大きな改正がありました。ほとんどが60歳代以降の方に関連する改正です。 60歳から65歳までの年金受給者の在職老齢年金制度も改正され、支給停止になる基準額が28万円から47万円になりました。 これにより、支給停止となる年金額が少なくなり、所得が増えて、ますます働きやすくなりました。詳しく見てみましょう。
在職老齢年金とは
在職老齢年金制度とは、60歳を超えて会社に勤めている方のうち、老齢厚生年金をもらっている方で、会社からの給料が多いと、老齢厚生年金が減らされるか、まったくもらえなくなる制度です。
具体的には、年金月額(老齢厚生年金の1ヶ月分)と、給料と年間賞与の12分の1の合計額(総報酬月額相当額)が「支給停止となる基準額」を超えた部分の2分の1が1ヶ月の支給停止額になります。
この基準額は、従来は、60歳から65歳未満の方が28万円、65歳以上の方は47万円でした。これが令和4年4月1日からは、60歳から65歳未満の方も47万円となり、65歳以上の方と同じになりました。この基準額は低いほど支給停止される額が多くなります。つまり、もらえる年金額が減ることになります。
なお、支給停止された年金(老齢厚生年金)はあとでもらえるわけではなく、消えてしまいます。
改定前後の比較例
年金月額(特別支給の老齢厚生年金の1ヶ月分)が10万円の60歳から65歳未満の方が、給料と年間賞与の12分の1の合計額(総報酬月額相当額といいます。ここでは「給与等」とします)の増減でどれだけ年金月額が減らされるかを見てみましょう。
令和4年4月より前の改正前は、
<例1>給与等が18万円なら全額年金月額がもらえます。
<例2>給与等が30万円なら年金月額は4万円しかもらえません。
<例3>給与等が38万円なら年金月額はまったくもらえません。
令和4年4月の改正で支給停止になる基準額が28万円から47万円になることにより、次のようになりました。
<例1>給与等が18万円なら全額年金月額がもらえます。
<例2>給与等が30万円でも全額年金月額がもらえます。
<例3>給与等が38万円なら年金月額は9万5000円となります。
全額年金がもらえるのは、年金月額給料と給与等の合計が47万円までです(この例ですと、給与等が37万円までです)。全額年金月額がもらえなくなるのは、年金月額給料と給与等の合計が57万円以上です。
誰にメリットがある?
とてもよい制度改正ですが、60歳から65歳までの間に公的年金がもらえる方は「特別支給の老齢厚生年金」をもらえる方だけで、その方々は毎年少なくなっています。生年月日で見ると、男性は昭和36年4月1日までの方、女性は昭和41年4月1日までの方だけです。
具体的な例を見てみましょう。
男性の場合は、
<例1>
昭和33年4月2日生まれの方は、63歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、64歳からの1年間今回の改正の恩恵を受けます。
<例2>
昭和34年4月2日生まれの方は、64歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、64歳からの1年間今回の改正の恩恵を受けます。
<例3>
昭和35年4月2日生まれの方は、64歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、64歳からの1年間今回の改正の恩恵を受けます。
<例4>
昭和36年4月2日生まれの方は、65歳から本来の老齢厚生年金をもらうことになるので、今回の改正の恩恵を受けることはありません。
女性の場合は、
<例1>
昭和34年4月2日生まれの方は、61歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、63歳からの2年間今回の改正の恩恵を受けます。
<例2>
昭和35年4月2日生まれの方は、62歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、62歳からの3年間今回の改正の恩恵を受けます。
<例3>
昭和36年4月2日生まれの方は、62歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、62歳からの3年間今回の改正の恩恵を受けます。
<例4>
昭和37年4月2日生まれの方は、63歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、63歳からの2年間今回の改正の恩恵を受けます。
<例5>
昭和38年4月2日生まれの方は、63歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、63歳からの2年間今回の改正の恩恵を受けます。
どうやらこの制度改正は、女性のほうがメリットが多そうですね。
今回の制度改正を有効に活用して、少しでも長く働き、そして働きながら年金額を増やして、人生100年時代に備えましょう。
出典
日本年金機構 令和4年4月から65歳未満の方の在職老齢年金制度が見直されました
執筆者:北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント
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