もし会社員の妻が亡くなった場合、夫が受け取れる遺族年金はある?
ファイナンシャルフィールド / 2022年9月11日 7時40分
![もし会社員の妻が亡くなった場合、夫が受け取れる遺族年金はある?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_158807_0-small.jpg)
遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、一般的には妻に手厚く、夫には厳しいともいえるものになっています。もし会社員の妻が亡くなったとしたら、夫がもらえる遺族年金があるのかについて解説していきます。
遺族基礎年金って誰がもらえるの?
まず、遺族基礎年金を受給するために必要な要件を見ていきます。遺族基礎年金は、下記のいずれかを満たしている人が亡くなった場合、遺族に支給されます(※1)。
(1)国民年金の被保険者である間に死亡したとき
(2)国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所を有していた人が死亡したとき
(3)老齢基礎年金の受給権者であった人が死亡したとき
(4)老齢基礎年金の受給資格を満たした人が死亡したとき
(1)および(2)の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した人が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
(3)および(4)の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある人に限ります。
国民年金は、日本国内に居住している20歳以上60歳未満の人は全て加入することになっています。厚生年金に加入している人は、自動的に国民年金にも加入しています。老齢基礎年金は、国民年金に加入して保険料を納めた人が受け取る年金のことです。
上記より、亡くなった人が国民年金保険料をしっかりと納付していれば、遺族基礎年金の受給要件は満たしていることが分かります。
例えば、60歳未満の人が亡くなった場合だと「(1)国民年金の被保険者である間に死亡した」に該当するのではないでしょうか。
では、その遺族基礎年金は誰がもらえるのでしょうか。受給の対象者は、死亡した人に生計を維持されていた以下の遺族となります。
(1)子のある配偶者
(2)子
「生計を維持されていた」とは、生計を同じくしており(同居している。別居していても仕送りをしている、健康保険の扶養親族であるなどの事項があれば認められる)、前年度の収入が850万円未満、または所得が655万5000円未満である場合をいいます。
また、「子」とは18歳になった年度の3月31日までにある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人のことです。
以上が、遺族基礎年金の受給要件および対象者となります。
例えば、35歳で会社員の妻が亡くなった場合、妻が厚生年金に加入し保険料を納めていれば、受給要件は満たされます。対象者については、遺(のこ)された夫に該当する子どもがいれば「子のある配偶者」という条件を満たします。
しかし、夫が働き盛りであれば、年収がネックになる可能性もあります。夫の前年度の年収が850万円以上、または所得が655万5000円以上である場合は対象外となります。
遺族厚生年金は誰がもらえるの?
遺族厚生年金についても、受給するために必要な要件があります。遺族厚生年金は、下記のいずれかを満たしている人が亡くなった場合、遺族に支給されます(※2)。
(1)厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
(2)厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
(3)1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている人が死亡したとき
(4)老齢厚生年金の受給権者であった人が死亡したとき
(5)老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡したとき
会社員だった妻の場合、厚生年金に加入していれば要件を満たすことになります。問題は、夫が受給対象者になるかどうかです。
遺族厚生年金の受給対象者は、亡くなった人に生計を維持されていた遺族のうち、最も優先順位の高い方です。優先順位は図表1のとおりとなります。
【図表1】
出典:日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
夫については、「子のある55歳以上の夫」もしくは「子のない55歳以上の夫」が該当します。つまり、会社員の妻が亡くなった当時、夫が55歳未満だと、遺族厚生年金はもらえないことになります。
もし55歳以上だったとしても、受給開始は60歳からとなります(ただし、遺族基礎年金を併せて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間であっても遺族厚生年金を受け取ることができます)。
夫に対しては、なかなか厳しい状況であることが分かります。
まとめ
遺族年金は、妻には手厚く、夫には厳しいものになっています。今の世代は共働き世帯が多くなってきており、妻にもしものことがあった場合、経済的な面でも生活が一変してしまう可能性があります。万が一に備え、妻の死亡保険などについても、いま一度見直してみてはいかがでしょうか。
出典
(※1)日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
(※2)日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
執筆者:上山由紀子
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者
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