「サービス残業」「やりがい搾取」の被害に遭った…。その分の賃金を取り戻すため行うべき法的な対応方法とは?
ファイナンシャルフィールド / 2022年9月25日 23時0分
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正規の残業代が支払われない「サービス残業」や、やりがいを盾に仕事に見合った給与が支払われない「やりがい搾取」は、日本の労働環境において大きな問題となっています。 本来は受け取れるはずだった正当な賃金を取り戻したいと考える方に向け、サービス残業、やりがい搾取への法的な対処について解説します。
サービス残業、やりがい搾取とはどんなもの?
まずはサービス残業、やりがい搾取とはどのようなものか確認していきます。
一般的にサービス残業とは、残業や休日出勤など時間外労働に対して、本来支払われるべき所定の賃金や、割増賃金の一部または全額を支払わずに働かせる賃金不払残業のことをいいます。
例えば、定時を過ぎたあとは何時まで働いても残業代が出ないといったケースは、まさにサービス残業です。サービスと呼ばれてはいますが、実際にはサービス残業は雇用主の法令違反となる行為に他なりません。
一方、やりがい搾取とは雇用する側が労働者の意欲を利用し、労働や時間に見合った対価を支払わないことをいいます。
例えば「給料は少ないけど人を笑顔にする仕事なんだよ」「好きなことを仕事にしているんだから給料は安いし、残業代も出ないけどいいよね」など、やりがいを理由に不当な条件で雇用されている状況です。
サービス残業とやりがい搾取の違い
サービス残業とやりがい搾取の分かりやすい違いを挙げるとすれば、それは違法性です。サービス残業は法令違反です。前述したとおり、本来は法令にのっとって支払われるべき残業代が払われていないのですから、雇用主の違反行為です。
しかし、やりがい搾取はそうとは限りません。最低賃金で労働環境も過酷だが、法令違反とならない最低限のルールは守っているという場合、基本的に違法性はなく、労働者側から見たときに良い職場ではないという感情面などの問題に過ぎません。
とはいえ、現実にやりがい搾取が行われている労働環境の場合は、大抵サービス残業も発生している状態が多いでしょう。サービス残業とやりがい搾取の違いについてはしっかりと確認した上で、対応をする必要があります。
未払いとなっている賃金を取り戻すには?
やりがい搾取にサービス残業も含めて考えたとき、支払われなかった賃金(残業代)を取り戻すには法的な対応が必要となる場合がほとんどです。口頭などで「残業代を払ってください」などといっても、なかなか相手にされることはないでしょう。そこで検討したいのが内容証明郵便の送付と、労働審判または訴訟です。
なお、やりがい搾取の内容が、単に労働環境が劣悪なだけであったり、最低賃金であったりなど法令違反に当たらない場合は、賃金を取り戻すことはできないという点にご注意ください。
内容証明郵便の送付
手間が比較的かからず、ある程度は有効な方法が、内容証明郵便で未払いの残業代を請求することです。
内容証明郵便は個人でも作成することができ、未払いとなっている残業代などの金額とその計算の根拠、支払先と支払期日などを記載して会社宛てに送付します。そのためにも、時間外労働の勤務時間や残業代のほか、給与が最低賃金を下回る場合は差額の金額について、日ごろからメモなどを残しておく必要があります。
ただし、個人の判断で内容証明郵便を送ることで事態が悪化することも考えられます。内容証明郵便の送付に限らず、未払いの残業代などの請求に対して個人で法的対応を行う前には、各都道府県労働局や全国の労働基準監督署に設置されている総合労働相談コーナー、労働問題に詳しい弁護士などに相談しておくことをおすすめします。
労働審判または訴訟
内容証明郵便を送付しても支払いに応じてもらえない場合、現実的には労働審判や訴訟で対応することになります。
労働審判は裁判官を交えての話し合いとなり、円満な解決を目指す方法に近いですが、訴訟は法律にのっとり、完全に白黒をつけるために戦うというイメージです。
労働審判はともかく、訴訟となると弁護士など専門家に依頼して行うことになるため、金銭的にも大きな負担を伴います。
また、労働審判や訴訟を起こしたからといって、必ずしも望む結果が得られるわけではなく、証拠が不十分な場合など、長い時間と費用をかけたにもかかわらず敗訴する可能性もあります。そのため、労働審判や訴訟を行うなら専門家に相談した上で、十分な証拠を集めて臨むべきです。
サービス残業、やりがい搾取については専門家に相談を
サービス残業、やりがい搾取の当事者となったときは、内容証明郵便の送付や労働審判、訴訟といった法的な対応により、本来は支払われるはずだった賃金を取り戻すことができるかもしれません。また、個別の状況によっては専門家に相談した方が確実、かつ円滑に解決できる場合も多くあります。
未払いの残業代などについて法的対応を取りたいと考えている場合、まずは都道府県労働局などの無料の総合労働相談コーナーを利用しつつ、必要に応じて弁護士など専門家に相談してください。
出典
厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内
執筆者:柘植輝
行政書士
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