【介護や認知症に備える】金融機関の代理人登録と家族信託。どちらが使いやすい?
ファイナンシャルフィールド / 2022年9月28日 1時20分
認知症が進行した場合に懸念されるのが、財産の管理です。家族であっても、認知症患者の財産を勝手に管理することはできません。そのため、認知症患者の財産管理対策として、金融機関の代理人登録や、家族信託という制度が注目されています。 金融機関の預貯金を認知症患者に代わって管理できる代理人登録と、全財産の管理が代行できる家族信託。どちらがより使いやすい制度なのか検証します。
認知症の概要
認知症とは、老化や脳疾患などで認知機能が低下することによって、生活に影響を及ぼす状態のことです。
高齢化の進展にともない、認知症を発症する65歳以上の高齢者は増加傾向にあり、内閣府による高齢者白書(2017年)によると、2025年には5人に1人(約700万人)の高齢者が認知症になると推計されています。
介護を要するほど認知症が進行すると、記憶障害や見当識障害を起こして日常生活に支障をきたすだけでなく、理解力や判断力が低下して、財産の管理を自分で行うことが困難になります。
代理人登録と家族信託の違いとは?
認知症の財産管理対策として知っておきたいのが、金融機関の代理人登録と家族信託です。
金融機関の代理人登録とは?
一部の金融機関では、代理人登録制度を設けています。代理人カードや代理人取引とも呼ばれるこの制度を利用することで、事前に預金者によって指名された人が、ATMや窓口で預貯金を管理できるようになります。
【指名できる代理人の範囲】
誰を代理人に指名するかを決めるのは、預金者本人です。ただし、代理人の範囲は金融機関によって異なり、「同居家族」や「預金者と生計を共にする親族」の金融機関もあれば、「2親等以内の親族」や「3親等以内の親族」に限定している金融機関もあります。
【代理人登録の手続き】
代理人登録は、原則として預金者が金融機関に赴いて行います。その際に必要になるのは、本人確認書類、届出印、通帳です。
家族信託とは何か?
家族信託とは、健康なうちに老後・介護のことを考慮して、信頼できる人(家族や親族など)に財産管理を任せる制度のことです。そのため、委託者(管理を任せた人)が希望すれば預貯金の管理だけでなく、そのほかの財産の運用や処分なども、受託者(管理を任された人)が行えるようになります。
ただし、家族信託は委託者の利益を前提としている制度のため、受託者の好き勝手に管理できるわけではありません。財産の名義は受託者に移りますが、実質的な所有者は委託者のまま、というのが家族信託の特徴です。
【家族信託のメリット】
家族信託の主なメリットは、「認知症で判断力や理解力が低下しても財産が凍結されない」「実質的な財産の所有者は委託者のため贈与税が発生しない」「相続時の家族の負担が軽減される」という3点です。
【家族信託に必要な手続き】
家族信託を締結するためには、委託者と受託者の間で契約内容を話し合い、お互いの合意内容を明記した「信託契約書」を作成する必要があります。その後、契約内容に基づいて財産の名義を委託者から受託者に変更し、財産管理のための専用口座を開設します。
なお、公証人の立ち会いのもとで作成される、「信託契約書」が原則の金融機関もあるため、事前に確認しておくと安心です。
結局どちらが使いやすいの?
認知症になった場合の財産管理対策としては、金融機関の代理人登録も家族信託も有効な手段です。
問題は使いやすさですが、手続きは代理人登録の方が簡単です。ただし、代理人登録で行えるのは預貯金の管理だけで、そのほかの財産管理は行えません。
そのため、財産が預貯金のみの人は代理人登録、それ以外の財産も所有している人は家族信託という選択が考えられます。
認知症の財産管理対策は健康なうちに考えておこう
高齢化の進展に伴って認知症の増加が懸念されています。認知症を発症すると、さまざまな症状が現れますが、判断力や理解力の低下もその中の1つです。
こういった力が衰えると、財産管理も困難になります。そのような事態に備えて準備しておきたいのが、金融機関の代理人登録や家族信託です。
症状が深刻になってから後悔しないためにも、健康なうちに、家族や親族などと財産管理について話し合っておくことが大切です。
出典
内閣府 平成29年版高齢社会白書(概要版)
一般社団法人家族信託普及協会
厚生労働省 認知症
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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