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「着替え時間」はどんな場合でも労働時間になる?

ファイナンシャルフィールド / 2022年9月29日 10時30分

「着替え時間」はどんな場合でも労働時間になる?

「制服に着替える時間は労働時間である」という平成12年3月9日の三菱重工業長崎造船所の判決は、労働時間の定義に一石を投じました。   その後、着替え時間をはじめ、今まで仕事の準備として考えられてきたさまざまな労働時間の意味について議論がなされるようになりました。   労働基準法で定められている「労働時間」について、判例をもとに説明します。

そもそも労働時間とは

労働基準法32条でいう労働時間は、最高裁判決の判例上「使用者の監視下に置かれている場合には労働時間である」とされています。
 
また労働協定や労働契約で決められた範囲以外でも労働時間となることがあります。例えば客観的にみて「指示命令下に置かれている場合」は労働時間となると判断されることもあります。
 

三菱重工業長崎造船所の事件からわかること

三菱重工業長崎造船所事件で争われた「着替えなどの準備時間」の状況は以下の通りでした。


・指定された更衣室で作業服と防護服の着脱
・準備体操場までの移動
・資材の受け出し、月数回の散水

これらの業務を会社側は所定労働時間「外」におこなうことと定めていました。しかし裁判所は以下の観点から労働時間と認定しました。


・客観説・・・労働協定や労働契約によらず、その行為自体を客観的に判断すること
・指揮命令下説・・・その行為が使用者の指揮命令下にあるかどうかを判断すること

 

判例を踏まえていえること

三菱重工業長崎造船所の事例により労働時間の考え方が定着しました。その行為が


・誰が見ても、従事する業務に関係するものであるか
・契約の有無に関係なく、使用者の指示があるものであるか

が判断基準といえそうです。必ずしも労働契約などでの取り決めは必要ありません。
 

労働時間となる行為・ならない行為

厚生労働省の見解や過去の判例をもとに、われわれが日頃おこなっている行為が労働時間になるのか否かをまとめると、図表1のようになります。
 


 
上記事例はさまざまな相談の中から一例を挙げたものです。判断に迷う場合は、最寄りの都道府県労働局または所管の労働基準監督署にご相談ください。
 

着替える時間は何分が妥当

「着替える時間は〇〇分とする」との明確な基準はありません。ただし、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインによれば、使用者は適切に労働者の始業時刻と終業時刻を厳正に管理しなければなりません。労働者は、以下の点に注意が必要です。


・タイムカードを使用する際の打刻するタイミングが正当であるか
・労働時間を自己申告している場合は使用者から十分な説明があるか

着替える時間に必要な時間を決定することは実際には困難な場合もあるため、労使間で明確に協議することが大切です。
 

まとめ

「着替え時間」は労働時間であるかについて、過去の判例に基づいて解説しました。労働協定などの労使間の取り決めだけでは判断せず、「着替える」「研修参加」などの行為が実態として「指示があるのか」「業務に関するのか」がポイントです。
 
2020年4月から「労働時間の上限規制」が中小企業にも適用されました。使用者は今まで以上に労働時間について厳正に対応しなければなりません。1日単位では小さな時間ですが、月単位・年単位では見逃せない労働時間数になりますので少しでも気になる方は労使間で確認することをおすすめします。
 

出典

独立行政法人 労働政策研究・研修機構 (37)【労働時間】労働時間の定義
厚生労働省 労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い
 
執筆者:羽田直樹
二級ファイナンシャルプランニング技能士

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