せっかく扶養内で働いていたのに……106万円の壁が変わるって本当?
ファイナンシャルフィールド / 2022年10月5日 11時40分
![せっかく扶養内で働いていたのに……106万円の壁が変わるって本当?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_162822_0-small.jpg)
2022年10月、法律改正によりパート・アルバイトの社会保険(厚生年金保険・健康保険)加入の条件が変わります。2016年10月から従業員501人以上の企業が対象となっていた、いわゆる「106万円の壁」が、2022年10月からは従業員101人以上の企業まで対象になります。そこで、以下の例で「社会保険適用拡大」についてみてみましょう。 A子さんは配偶者の扶養内で働いています。働き始めの頃は103万円を意識していたA子さんでしたが、仕事が面白くなり、パート収入が150万円以下であれば配偶者特別控除が配偶者控除と同額を控除できるようになってからは、社会保険料の扶養「130万円」を意識していました。 ところが8月のある日、社会保険適用拡大についてのお知らせが会社からありました。これまでと同じ条件で働くと社会保険に加入しなければならない、とのことです。 いったい、どうしたらよいのでしょうか。
社会保険の適用条件
対象企業にお勤めの方のパート・アルバイトがすべて対象ではなく、以下の4つの要件をすべて満たす場合の方が社会保険加入の対象になります。
●週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
●月額賃金が8.8万円以上
●2ヶ月を超える雇用の見込みがある(※変更前は1年間)
●学生ではないこと
(厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト より引用)
4つの条件をすべて満たすということは、1つでも条件を満たさなければ社会保険加入の対象にならないということです。要件から外れることを考えると、例えば、働き方を変えて、週の勤務時間を20時間未満になるようにする、月額賃金が8.8万円未満になるようにすると、社会保険の適用外でいられます。
しかし、Aさんは「何も働き方は変わらないのに、社会保険料を支払わなくてはならないなんて……」と、どこか納得がいきません。
では次に、加入することで得られるメリットを見てみましょう。
保険料を支払うメリット
今までは、扶養配偶者の立場で何も不安なことがなかったAさん。そのため、
【社会保険(厚生年金・健康保険)に加入すること=手取りが減ること】
ととらえているようです。
社会保険料は労使折半です。会社が半分負担してくれるので、加入者は半分の負担をするだけなのです。これでも社会保険に加入する十分なメリットですが、以下の重要なメリットがあります。
■自分の老齢年金が増える
社会保険の扶養配偶者でいる場合は、自分で保険料を支払わなくでも国民年金加入者とされますが、将来、その期間は国民年金の分しか受け取れません。厚生年金に加入することで、国民年金に上乗せできます。
例えば、月収8.8万円の場合、1年間加入すると月に8000円ほどの保険料で月450円の年金を増やすことができます。10年加入すれば、月に4500円です。それを、終身で受け取ることができます。
■障害年金も上乗せ
国民年金のみの場合、障害年金は1級と2級のみで、それより軽い症状の障害では年金受給の対象になりません。しかし、障害厚生年金の場合、2級より軽い3級と、さらに軽い場合に障害手当金(一時金)があります。
厚生年金に加入することで、もしものときの自分の保障がされるのです。しかも、加入が300月に満たないときでも、300月とみなして計算されます。
■遺族年金も上乗せ
遺族基礎年金に遺族厚生年金が上乗せされます。
■健康保険による働けないときの保障
扶養配偶者でいれば、何も払わなくても健康保険証で診療を受けられます。しかし、加入者になると、自分が働けなくなった時の保障が付きます。
病気やけがで働けなくなってしまった場合に、働けなくなってから3ヶ月後~最長1年6ヶ月、給与の約3分の2を傷病手当金として受け取ることができます。(ほかにも、出産した場合は、産休中に、給与の約3分の2を出産手当金として受け取ることができます)。
それだけではない! 社会保険加入のメリット
また、A子さんは学生の頃に国民年金保険料を支払っていませんでしたが、60歳以降も厚生年金に加入することで不足している分を埋められます(年金加入期間が40年になるまで)。
もし、ずっと扶養内で働く場合は、60歳以降に国民年金に任意加入することで埋められますが、2022年度の国民年金保険料は月額1万6590円支払わなければなりません。
もし、月収9.8万円の場合(130万円を超えない)でも、従業員が負担する年金保険料は約9000円です。当然、健康保険料も支払いますが、負担するのは約5600円。国民健康保険料のみの負担で、年金の穴埋めも、上乗せも、もしものときの保障も得ることができるのです。
さらに、65歳以降も働き社会保険に加入し続けることで、年金を受け取りながら年金額を増やすことができます。
保険料を支払わなくても国民年金保険料を支払ったこととされ、健康保険の恩恵を受けられていたA子さん。その反面、扶養内でいるために仕事をセーブしなければならないこともありました。「社会保険の壁」を取っ払うことは、「働き方の壁」を取っ払うこと。狭い枠にこだわらない生き方に興味が出てきたA子さんでした。
出典
厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
日本年金機構 令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大
全国健康保険協会 令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者
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