退職金にかかった税金は確定申告で取り戻せる可能性があります
ファイナンシャルフィールド / 2022年10月6日 12時40分
![退職金にかかった税金は確定申告で取り戻せる可能性があります](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_162923_0-small.jpg)
定年を迎えて退職金が振り込まれた時、これで現役時代にひと区切りとホッとする方もいらっしゃるでしょう。退職金は原則として確定申告する必要がなく、振り込まれた金額はそのまま全額が自身のものになります。 ただし、退職金には税金がかからないのではなく、既に税金を差し引かれた金額が振り込まれている点に注意しましょう。もしもその差し引かれた税額が、本来納めるべき金額よりも少なかった場合には、確定申告しなければ取り戻すことができません。「確定申告不要とは楽で良かった」では、もったいない場合があるのです。 今回は、退職金にかかった税金を取り戻せる具体的なケースについて解説します。
退職金には所得税と住民税がかかる
退職は人生の節目であり、退職金は給与や賞与とは異なる気がしますが、所得税と住民税の対象になる点は同じです。
ただし、退職後の生活の支えになる退職金の性格は考慮されており、税負担が軽くなる税金計算がなされます。勤続年数によりますが、2000万円の退職金を受け取ったとしても、無税で済むこともあります。
退職金の課税方法
退職金にかかる所得税と住民税は、まず退職所得の金額を計算するところから始まります。
退職所得とは退職金のうち課税対象になる部分の金額のことで、退職金から「退職所得控除」を差し引いて計算します。給与や賞与よりも税負担が軽くなる理由は、この退職所得控除が大きいからです。
【図表1 退職所得控除額】
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
国税庁 退職金と税
退職金にかかる税金を具体的に計算してみよう
それでは、次の条件の場合における所得税と住民税を計算してみましょう(復興特別所得税の計算は割愛します)。
・退職金2500万円
・勤続年数38年
【退職所得】
2500万円-{800万円+70万円×(38年-20年)}=440万円
【所得税】
440万円×所得税率20%-42万7500円=45万2500円
【住民税】
440万円×住民税率10%=44万円
【所得税+住民税】
45万2500円+44万円=89万2500円
勤続38年の人が2500万円の退職金をもらうと、税金は89万2500円です。2500万円が給与だとした場合の住民税と所得税の合計は870万円程になることから、非常に優遇されていることが分かります。
退職金は基本的に確定申告不要
上で解説した税金を計算してもらうためには、会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出する必要があります。提出することによって、適切な税金が差し引かれた金額が振り込まれるため、退職金は原則として確定申告をする必要はありません。
「退職所得の受給に関する申告書」は、退職金をもらう人が会社に提出する書類ではありますが、会社側が書類を準備してくれたうえ、提出の打診がある場合がほとんどです。
退職金の確定申告をするとお得なケース
確定申告が不要な退職金であっても、確定申告した方がお得になるケースがあります。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合には、高確率で所得税の還付を受けることができます。なぜなら、20.42%という非常に高い税率で源泉徴収されているからです。
退職金2500万円の場合の所得税は510万5000円にもなります。退職所得控除を加味させるために確定申告をして、払い過ぎた所得税を取り戻しましょう。
副業が赤字な場合
不動産所得や事業所得が赤字の場合には、他の所得と相殺できる「損益通算」という仕組みがあります。
赤字は退職所得から差し引くことも可能です。赤字を差し引くことで退職所得が減るため、既に支払っている所得税よりも少なくなり、所得税の還付を受けられることになります。
ふるさと納税・医療費控除がある場合
ふるさと納税をした場合には、寄付額から2000円を超える部分の金額について寄付金控除を受けることができます。ただし、ふるさと納税には上限額があるため、退職金の節税を目的にして行うことはおすすめしません。
年間の医療費が所得金額の5%または10万円を超えた場合には、医療費控除を受けることができます。扶養家族の医療費も含めることができるため、入院した年などは特に当てはまる可能性が高くなります。確認しましょう。
年度途中の退職である場合
会社を年末調整がある月以外で退職し、再就職していない場合には、年末調整が済んでいないため所得税を払い過ぎている可能性が高いです。
特に定年後に再就職しなかった人については、少ない年収に対して配偶者控除などの各種控除は満額で適用されるため、所得税はかなり少なくなり、確定申告によって所得税を取り戻すことができるでしょう。
退職金の住民税は還付されない
住民税については、会社が計算して退職金から天引きした金額で完結します。確定申告をしても還付されることはないため注意しましょう。
まとめ
退職金は既に課税が完了しているため、確定申告の必要はありません。ただし、他の所得や控除を含めて再計算してみると、退職金の源泉所得税の方が多いケースもあります。
定年後のセカンドライフにホッとしている時期であっても、放置してはもったいないです。一度は試算してみると良いでしょう。
出典
国税庁 退職金と税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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