介護や認知症に備えて利用したい家族信託。自分で手続きするためにはどうすればよい?
ファイナンシャルフィールド / 2022年10月11日 2時40分
![介護や認知症に備えて利用したい家族信託。自分で手続きするためにはどうすればよい?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_163512_0-small.jpg)
財産を管理する方法の1つに「家族信託」があります。 介護が必要になった際や、認知症の状態になったときに有効な手段と言われていますが、そもそも信託とはどのような制度で、家族信託とはどういったものなのでしょうか。 今回は、家族信託の概要について、手続きの方法も含めて解説します。
信託とは
信託(※1)とは、自分が保有している財産を、信頼できる人に委託し、自分の希望に沿った形で運用や管理を行ってもらう制度です。つまり、「他人を信じて託す」制度です。
そして、家族信託とは、家族のうちの誰かに自分の財産を託し、管理してもらうことで安心して資産を守り、さらに相続にもつなげられます。
信託制度の登場人物とそれぞれの役割
信託には、「委託者」「受託者」「受益者」の3人が存在します。それぞれの役割をしっかりと理解しておきましょう。
・委託者:委託者とは、財産を預ける人のことを指します。
・受託者:反対に受託者とは、委託者から財産を預けられた人を指します。受託者は財産を預かり、運用管理や処分を行います。
・受益者:受益者とは、委託者が受託者に預けた財産によって、最終的に利益を受ける人です。
そして、家族信託(※2)を利用することで、以下のことができるようになります。
・自分が高齢や障害状態などになった際、受託者に自分の財産を管理してもらう
・相続時のトラブルを防ぐことができる
最近では、認知症になった際の財産管理の方法のひとつとして、家族信託が注目されています。
認知症と財産管理
一般的に認知症と判断され、家族や親族から財産を預けている金融機関等に相談があった場合、判断能力の低下を理由に財産管理に制限が設けられることがあります。そのため、自分の財産にもかかわらず、自由に管理することができなくなります。身近な例では、預金の引き出しなどができなくなりますし、契約行為も制限されることもあります。
そのためにも、あらかじめ家族信託を契約しておき、自分が認知症になった際には自分に代わって家族が財産を管理してくれる、という準備をすることも必要かもしれません。なぜなら、認知症を発症した後では、家族信託の契約は結べないからです。
家族信託の手続き
家族信託を行う際は、以下の流れで手続きを行います。
<契約内容の決定>
家族信託の手続きを始めるにあたり、その契約内容を決める必要があります。
・自分の財産をどのように管理したいのか
・契約のなかに盛り込む財産の種類
・財産を管理してくれる人(受託者)を誰にするか
・将来的に自分の財産をどのようにしたいのか
といった内容を明確にし、家族のみんなが納得できるまで話し合うことが大切です。
<契約内容の文書化>
家族で話し合って契約内容を決めたら、その内容を文書化します。具体的には、「信託契約書」を作成することになります。契約内容を漏れなく信託契約書に反映させるようにしましょう。
<公正証書の作成>
信託契約書を作成したら、それを元に公正証書を作成します。公正証書にすることで法的な拘束力を得ることができ、安心して財産の管理を任せられます。後々の家族同士のトラブルを避けるためにも、公正証書で残しておくことが重要なポイントです。
<口座開設などの手続き>
契約の中に現金がある場合は、信託口座を開設しなければなりません。信託財産は個人的な財産と分けて管理する必要があるため、別途信託口座を開設し、その口座にて管理しなければなりません。
また、不動産が盛り込まれている場合は、不動産の名義変更を行う必要があります。不動産の名義変更は法務局にて行います。
家族信託にかかる費用
家族信託にかかる費用は、契約内容に含まれる財産の種類などによって異なりますが、通常であれば30万~70万円、不動産がある場合は50万~100万円程度になるとされています。この費用額から、成年後見人制度を利用するほうが費用を抑えられると思いがちですが、成年後見人制度には毎月費用が発生し、年額にするとかなりの額になります。
また、長生きをするとそれだけ費用がかさむので、手続きの際にだけ費用が発生する家族信託のほうが、費用が抑えられることが多いといわれています。
まとめ
家族信託には、認知症などで判断能力が低下した際に、家族に財産管理を託すことができるというメリットがあります。また、相続におけるトラブルを避けることや、二次相続対策にもつなげることもできます。
ただ、専門家の助けが必要な点や、手続きの際には費用が発生する点がデメリットです。家族信託を利用する際には、メリットとデメリットを比較し、納得した上で利用することが大切です。さらに、契約内容についてはしっかりと話し合って信託契約書を作成するようにしましょう。
出典
(※1)信託協会 信託について
(※2)家継支援協会 ホームページ
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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