「国民年金」はこの10年間でどれだけ支給が減って、支払額はどれだけ増えた?
ファイナンシャルフィールド / 2022年10月14日 22時40分
![「国民年金」はこの10年間でどれだけ支給が減って、支払額はどれだけ増えた?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_164137_0-small.jpg)
国民年金の保険料が10年前と比べると増額されている一方で、年金支給額は減額されています。保険料の納付額が増えているのに支給額が減っていることに、納得がいかないという人も多いでしょう。 ここでは、10年前と比較したときにどのくらい保険料の負担が増え、年金の支給額が減ってしまったのか、なぜこのようなことになっているのかを考えてみます。
国民年金保険料は10年で月額1610円増加
国民年金加入者が毎月納付している年金保険料は、2022年度は月額1万6590円です。では、10年前の2012年度の保険料はいくらだったかというと、月額1万4980円でした。保険料の増加率は、約10.7%にもなります。
ちなみに、2012年の銀行の預金金利の平均は、定期預金で0.032%、普通預金は0.02%です。その後、金利は下がり続け、2022年の大手銀行の定期預金の金利は0.002%、普通預金では0.001%にまで下落しています。
仮に、この10年で最も金利が高かった2012年の定期預金の金利で10年間お金を預けたとしても、利息で増えるのは預けたお金の約0.32%分に過ぎません。預金の増加率と比べると、国民年金の保険料の10.7%の増加がどれほど急激なのかが分かります。
厚生年金に加入している人は、厚生年金の保険料を納付していれば国民年金の保険料を別途納付する必要がないため、あまり意識する機会はないかもしれません。
しかし、厚生年金保険料として集められた保険料から、国民年金の支給に充てる財源として基礎年金拠出金が出されています。厚生年金加入者も間接的に国民年金の年金支給分を負担しているのです。
厚生年金加入者も自分のこととして、国民年金保険料のことを頭の片隅に置いておくとよいでしょう。
国民年金の支給額は10年で年額8700円減少
年金保険料が増加した中で、国民年金の支給額はどのように変化したのでしょうか。2022年度の国民年金の満額支給額は、77万7800円です。10年前の2012年度の満額支給額は78万6500円でしたので、10年間で年額8700円減らされたことになります。
減額率はおよそ1.1%と小幅ですが、年金保険料が10%以上上昇したことを考えると、増えるどころか減っていることに違和感をもつ人もいるかもしれません。
このような状況になっているのは、少子化の影響で保険料を負担する現役世代の減少が続く中、社会の高齢化が進み、年金受給年齢を迎える高齢者がどんどん増えているいびつな人口構成に起因するからです。そこで、年金支給額の増加を抑える仕組みが導入されました。
年金支給額を抑制する「マクロ経済スライド」とは
2004年、年金支給額の算定にあたって「マクロ経済スライド」という仕組みが導入されました。この仕組みは、年金支給総額の上昇による現役世代の保険料負担を減らすため、賃金や物価の上昇幅よりも年金支給額の上昇幅を抑え、逆に賃金や物価が下落したときには同程度の割合で年金支給額を下げるというものです。
端的にいってしまうと、「年金の支給額を上げるときは少しだけ上げて、下げるときはしっかりと下げる」という仕組みです。そのため年金生活をしている世代にとっては、物価が上がってしまうと生活の維持が非常に厳しくなるのです。
年金の保険料負担の増加と、支給額の減少は続く
「年金は世代間の助け合い」といわれますが、少子高齢化社会が進む中、世代間の人口格差が広がり、若い世代が高齢世代を支えきれなくなるかもしれません。そうなれば、これからも保険料は増額され、支給額は減らされていくでしょう。
今後年金を受け取る若い人は年金に過度の期待をせず、企業年金やiDeCoの活用、より積極的な資産運用で老後資金を蓄えることを検討した方がよいかもしれません。
出典
日本年金機構 国民年金保険料の変遷
厚生労働省 基礎編講義 保険料・免除(1) 国民年金の保険料
日本銀行 主要時系列統計データ表
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
厚生労働省 I 制度の概要及び基礎統計 11 年金
日本年金機構 年金額の端数処理
日本年金機構 マクロ経済スライド
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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