「年金格差」はどう埋める? 格差がうまれる要因と対処法
ファイナンシャルフィールド / 2022年10月18日 22時40分
![「年金格差」はどう埋める? 格差がうまれる要因と対処法](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_164502_0-small.jpg)
老後に受け取ることができる公的年金の支給額は、現役時代の働き方などによって決まります。そのため、年金を比較的多くもらえる人と、あまりもらえない人で格差が生じます。本記事では、この「年金格差」を埋め、できるだけ多くの年金を受け取るにはどうしたら良いのかについて、具体的な対処法とともに解説していきます。
ライフスタイルによる格差
20歳以降の現役時代においてどのような働き方を選択するかによって、加入する年金や支払う保険料の水準が変わります。
まず、公的年金制度には「国民年金保険」と「厚生年金保険」の2つがあります。国民年金は、20歳以上60歳未満の全ての人が加入する保険です。主に自営業やフリーランス、または専業主婦(夫)などが対象です。
受給資格を満たせば老後、保険料を収めた月数に応じた老齢基礎年金を受け取ることができます(保険料を免除された期間がある場合には、免除の種類と基礎年金の国庫負担割合に応じて計算式が変わります)。
一方、厚生年金保険は、主に会社員や公務員などが加入する年金です。老後は、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取ることができます。
厚生労働省によると、2022年の老齢基礎年金の満額(40年間保険料を納めた場合の年金額)は月額6万4816円です。一方、老齢厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は、夫婦2人分で21万9593円となっています。
また、実際の給付平均額でみると、2020年度の厚生年金保険・国民年金事業の概況では、国民老齢基礎年金の平均年金月額は約5万6000円、老齢厚生年金(老齢基礎年金を含む)の平均年金月額は、約14万4000円となっています(※実際の受給額は状況により異なります)。
このように、企業に雇用され、厚生年金保険に加入した働き方を選択する場合と、自営業やフリーランスなどの働き方または専業主婦(夫)の場合とでは、老後に受け取る年金の水準に格差が生まれます。
雇用形態による格差
厚生年金保険に加入している場合でも、正社員として働いているかどうかなどによって「年金格差」が生じることがあります。というのも、老後に受け取る老齢厚生年金の受給額は、厚生年金保険に加入していた期間と報酬額によって算出されるからです。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2021年度)によると、雇用形態別の賃金は、正社員で約32万3400円、正社員以外で約21万6700円となっています。さらに、男性の方が女性に比べて賃金の上昇ペースが高い傾向にあります。男性の年齢階級別賃金のピークが55~59歳で約41万3600円である一方、女性のピークは50歳~54歳で約27万7900円となっています。
男女の傾向にみられる差の背景には、さまざまな理由により男性の方が女性よりも正社員で働く人が多い実情があると考えられます。そのため、厚生年金保険への加入者も男性が女性より多く、また、標準報酬額も女性の方が少ないので、年金の受給額にも格差が生じてしまうのです。
世代による格差
少子高齢化の影響もあり、保険料の負担割合は増加傾向にあります。
経済成長や平均賃金の上昇などの影響もありますが、国民年金保険の保険料は1974年までは数百円程度だったのに対し、現在は1万6000円を超えています。厚生年金保険料率も、1994年には14.5%でしたが、2017年の9月からは18.3%で固定されています。
また、厚生労働省の財政検証(2019年度)をみると、所得代替率(公的年金の給付水準を示す指標。現役男子の平均手取り収入額に対する年金額の比率)は、今後低下する見通しであることがわかります。
今後、年金受給額が引き下げられたり、受給年齢が引き上げられたりする可能性についても無視できません。つまり、これまで年金を受給していた人と、将来年金を受給する人とでは、生涯で受け取ることができる年金の金額に格差が広がる可能性が否定できないということです。
格差を埋めるための対処法
公的年金制度には、これまでみてきたような「格差」があります。では、働き方が多様化する今、制度的な問題点を改善する以外に、年金加入者としてこの格差を埋めるにはどうしたら良いのでしょうか。
自営業やフリーランスなど老齢厚生年金を受給できない立場の場合には、国民年金基金やiDeCoなどの私的年金を上手に活用して、将来の年金額を増やすことができるでしょう。
また、60歳以降もできるだけ長く働くことで、厚生年金保険への加入期間を延ばして受給額を増やしたり、年金生活の期間を短縮したりして老後資金の必要額を抑えることもできます。
さらに、年金の「繰下げ受給」を行うことで、年金額をアップさせることもできます。
まとめ
どのような働き方を選択するか、どの世代に属しているかなどによって、将来的に受け取ることができる年金額には格差が生じる可能性があります。この「年金格差」で損することのないよう、本記事で紹介したポイントを踏まえて将来にわたるライフプランをできるだけ早めに設計し、ゆとりある老後の生活を実現するため、私的年金や「繰下げ受給」制度などの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
出典
厚生労働省 年金制度の仕組み 年金制度のポイント
厚生労働省 令和4年度の年金額改定について
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和2年度)
厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況
日本年金機構 厚生年金保険料率と標準報酬月額等級の変遷表
日本年金機構 国民年金保険料の変遷
厚生労働省 2019(令和元)年財政検証結果レポート
執筆者:勝川みゆき
ファイナンシャルプランナー2級・AFP
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