基準地価が上昇。今後はどうなる?
ファイナンシャルフィールド / 2022年10月18日 13時0分
![基準地価が上昇。今後はどうなる?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_164589_0-small.jpg)
9月20日に今年(2022年)の基準地価が公表されました。基準地価は公示地価と並んで不動産、特に土地の価格を算定する際に目安として用いる価格ですので、おおむね実勢価格に連動しているといえます。 今年の基準地価は全国平均で前年比0.3%上昇、住宅地の全国平均は31年ぶりに上昇に転じました。 筆者は東京都大田区で不動産業とFP相談を行っていますが、周辺のエリアは、昨年こそ前年比ほぼ横ばいだったものの、ここ数年の単位では顕著な上昇傾向が見られる地点が多くなっています。住宅地の基準地価の全国平均は31年ぶりの上昇とのことですが、実感としては数年間上昇傾向が続いていますので、昨年に比べより広い範囲で地価が上昇したことを示しているといえます。 一方、マンション価格はよりいっそう顕著な上昇傾向を示しています。マンション価格は2012年以降上昇を続け、この10年で大幅に上がった実感があります。
不動産価格の考え方
住居系の不動産価格では、マンション、戸建て、住宅地(土地のみ)で分けて考える必要があります。
住宅地の主な価格変動要因は周辺の取引事例から読み取る需給バランスですが、戸建て住宅では、住宅地価格のほか、建築費の騰落も影響します。昨今はさまざまな要因で建築費が高騰していることから、戸建て住宅の価格も上昇傾向です。
マンション価格にも土地部分の価格が含まれていますので、価格上昇には地価の上昇の影響もあるでしょう。しかし、マンション価格の上昇は土地の価格以上に上昇していることから、それ以外の上昇要因があると考えられます。特に、需要の大きさの影響が大きいと考えられます。
マンション需要の動向
今は、マンションを「終の棲家」として購入する人も少なくありません。かつては「いずれは一戸建て」と考える方が主流でしたが、今は状況が違います。
現在戸建てに住む人たちは、かつて「いずれは子どもに家を引き継ぐ」ことを前提に購入した方が多かったでしょう。しかし、核家族化が進み、子どももみんな持ち家を持っているという家庭が増えていますし、持ち家を持たない主義の人も増えています。
戸建てを維持するためには、税金や維持管理費(庭木の手入れなども含めて)もかかります。マンションでも税金や管理費や修繕積立金といった費用のほか、専有部分の維持のための費用もかかりますが、維持管理費は戸建てのほうが大きくなる傾向があります。
また、マンションは駅に近い好立地にある場合が多いのに対し、戸建ては駅から遠い、場合によっては車が必須となる物件もあります。交通アクセスなどの利便性でもマンションのほうがメリットはありそうです。
セキュリティー面でも、築15年程度以内のマンションにはオートロックなどのセキュリティーが充実している物件が多いといえます。これらの面から高齢者にも、マンションへの住み替えを考える人が少なくありません(戸建てには手間もかかることがオーナーとしての楽しみだともいえるのですが)。
団塊の世代といわれる世代の人たちが後期高齢者になる時代に入り、筆者の相談者さまのなかでも、この年代の方々に手間や費用のかかる戸建てからマンションへの買い替え需要が増えていると感じます。
一方、初めてマンションを購入するいわゆる「一次取得者」にも動向にも変化があります。共働きの世帯が増え、夫婦ともに収入がある「パワーカップル」の方々のマンション需要も増えています。現在のマンション購入希望者にはこうした需要が重なっているため、マンション価格の上昇につながっていると考えられます。
こうした現在の需要が一巡するまでしばらく時間がかかると考えられるため、マンション価格は当面の間底堅く推移しそうです。
基準地価上昇から読み取れること
基準地価に話を戻しましょう。
今回の基準地価の上昇はコロナによる不動産価格の下落の揺り戻しの影響を多分に受けていると考えられます。
ただし、現役世代の住宅需要には間違いなく変化がありました。テレワークの浸透で必ずしも通勤する必要がなくなった人が増え、都心部に比べ割安感のある地方にも住宅需要が拡大していることも今回の基準地価の動向に表れています。都心部のオフィスの空室率が高止まりしている状況を見てもわかるとおり、完全にコロナ前の状況に戻るとは考えにくい状況です。
現役世代にとってはライフデザインの選択肢が広がったともいえますが、この傾向が今後も続くのか、コロナ禍の影響により一昨年に落ち込んだ分の揺り戻しなのかは慎重に見極める必要がありそうです。
現在、不動産をお持ちの方
コロナ禍においても都心部へのアクセスの良さを魅力に感じる人がいる反面、少し離れたエリアにもある程度需要が広がっています。一方で、日本は人口減少社会に入っていることから、利便性が低いエリアは何らかの特別な魅力がない限り、よりいっそう地価が下落していくことになります。
全国平均では上昇した基準地価ですが、今年も前年比マイナスだったエリアは今後も下落を続ける可能性が高いエリアだといえるでしょう。そのような場所に不動産をお持ちの方は何らかの対策を考える必要があります。
また、最近は空き家問題も深刻です。都心部は全国平均に比べ空き家率は低いとはいえ、空き家は存在します。値上がりしているエリアに不動産をお持ちの方も、空き家のまま放置することはご自身の資産が有効に活用できないだけではなく、周辺環境にもさまざまな悪影響があります。
値上がりしているエリアは需要があるエリアです。そうした場所の不動産は有効に活用されてこそ価値があります。空き家のまま放置するよりも何らかの活用方法を考えたり、売却も視野に入れたりして、対策を検討されたほうがよいでしょう。
これから不動産の購入をお考えの方
低金利が継続しており、住宅ローンを組んでの住宅取得は依然追い風だといえます。値上がりしているエリアに今後住居を持ちたいと考える人たちにとっては、早めに決断されたほうがよいと思います。
一方で、インフレの進行など懸念材料もあります。低金利政策がいつまで継続されるかも不透明です。経済状況の変化がご自身の収入に影響するという方は慎重に考える必要があります。
住宅購入は人生最大の買い物です。慎重になるのは当然です。しかし、あまり慎重になりすぎると住宅取得のタイミングを逸することにもなりかねません。ご自身のライフプランや返済計画をしっかり考え、後悔のない不動産取得ができることを願っています。
出典
国土交通省 地価・不動産鑑定
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、宅建マイスター(上級宅建士)、上級相続診断士、西山ライフデザイン代表取締役
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