年金の繰下げ受給、受け取るまでの注意点はどんなものがある?
ファイナンシャルフィールド / 2022年10月19日 3時0分
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老後資金を準備する方法の1つとして、年金の繰下げ受給があります。繰り下げした期間に応じて年金が増額し、それを終身で受け取れるという魅力的な制度ですが、繰り下げしている期間は当然、その年金の支給はありません。繰り下げをする際に注意すべきこと、準備しておくべき資金などをまとめます。
年金の繰下げ受給とは
老齢年金(以下、年金)には、老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金があります。老齢基礎年金は、10年以上の受給資格期間ある人が受給できます。老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給資格期間があり、厚生年金保険の被保険者期間がある人が65歳から受給できます。
年金を受け取る権利(受給権)を得たときは、自動的に受給が始まるのではなく、年金を受け取るための請求手続きが必要です※1。年金を受け取るための手続きをしないと66歳以降、最大75歳まで1ヶ月単位で繰り下げることができます注。 ひと月遅らせると(繰り下げる)と0.7%ずつ増額するので、1年で8.4%になります。70歳時点で年金を受給する場合は、65歳時点で受給する場合と比較をすると42%増額、75歳まで遅らせると84%の増額になります。
例えば、65歳で180万円の年金を受給する予定だった人が75歳まで年金の受給を遅らせると、本来もらう予定だった180万円の年金と、増額分151.2万円を合わせて331.2万円受給できます※2。増額率は一生変わりません。なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に繰り下げることもできます。
(注:1952年4月1日以前生まれの人は70歳までしか繰り下げできません)
年金繰下げ損益分岐点
年金は、受給を始めたら生涯額が変わらないので、繰下げ受給をして額が増えたら長生きをしたほうが得になります。それでは、いくつが損益分岐点になるのでしょうか。
仮に年金額を180万円として計算してみます。65歳で受給を開始した場合は、70歳(6年間)で総額が1080万円、81歳(17年間)で3060万円、86歳(22年間)で、3960万円です。70歳で繰下げ受給をした場合は、42%の増額になるので、年金額が、255.6万円となり、81歳(12年間)で総額が3067.2万円で、65歳での受給開始を上回ります。75歳で繰下げ受給をした場合は、84%の増額になるので、年金額が、331.2万円となり、86歳(12年間)で総額が3974.4万円で65歳での受給開始を上回ります。
65歳受給開始と比較して、70歳受給開始と75歳開始の損益分岐点は、それぞれ81歳、86歳ですが、参考までに日本人の直近の調査による平均寿命は、男性81.47歳、女性87.57歳です※3。
年金繰下げ受給の注意点
年金の繰下げ受給をするために、65歳以降も厚生年金に加入して働き、70歳以降に繰下げ受給をする場合に注意をしておきたいことがあります。仮に高収入の場合は、「在職年金制度※4」により年金の繰り下げによる増額分が、少なくなったり、場合によっては増額分が発生しない可能性があるということです。
年金の繰り下げをしていても65歳から受給を開始したと仮定し、基準額(2022年度は47万円)を超える高収入であればあるほど、繰下げ受給の増加分が少なくなります。65歳以降も高収入で働く予定の人は、年金事務所に相談をしてみましょう。
また、厚生年金の受給を遅らせることで、加給年金を受け取れなくなることがあります。加給年金とは、厚生年金の加入期間が20年以上ある人が、満65歳になった時点で、扶養する65歳未満の配偶者や子どもがいる場合に受け取ることができる年金です※5。繰下げ受給をすると年金を受給するまでは、加給年金も受給できません。
例えば、妻の年齢が、夫よりも5歳下の場合、夫が、70歳まで受給年齢を繰り下げてしまうと加給年金がまったく受給できません。この夫婦の場合は、夫は、65歳から厚生年金を受給し、基礎年金だけを繰り下げるとよいでしょう。
まとめ
年金をいつの時点で受給するかは、年金支給額がいくらになるのか、資産がいくらあるのか、年金以外の収入があるのか、病気がちなのか、健康で長生きしそうなのか、家族構成はどうなのかなどいろいろな判断材料があります。
元気で65歳以上でも働く場所がある人や、年金以外の収入源があり日々の生活費に困らない人にとっては、繰下げ受給は受給額が増えて良いですが、病気がちの人や日々の生活が厳しい人は、65歳で受給をしたほうがよいでしょう。
老後にかかる費用としては、生活費の他に自宅のメンテナンス費用、医療費、交際費、車の保守料等があります。年金受給の手続きが終わり、受給が開始されたら、亡くなるまで金額は変わりません。手続きをする前にしっかり受給開始時期を検討しましょう。なお、手続きをしなかった場合は、5年間さかのぼって請求ができます。
前述のとおり、繰下げ受給は増額した年金が終身で受け取れる魅力的な制度ですが、繰り下げしている期間は年金の支給はありませんし、老後はさまざまな資金が必要です。繰下げ受給を検討している方は、今後の資金計画をしっかり立てることをおすすめします。
出典
(※1)日本年金機構 老齢年金の請求手続き
(※2)日本年金機構 令和4年4月から年金制度が改正されました
(※3)厚生労働省 令和3年簡易生命表の概況
(※4)日本年金機構 在職年金の支給停止の仕組み
(※5)日本年金機構 加給年金額と振替加算
執筆者:篠原まなみ
AFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者
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