控除がなくなる? 収入300万円以下の副業に注意
ファイナンシャルフィールド / 2022年10月27日 1時20分
![控除がなくなる? 収入300万円以下の副業に注意](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_165803_0-small.jpg)
皆さんの中で“副業”をされている方はいますか? コロナの影響で収入が減った、物価高騰で支出が増えた、隙間時間を有効に活用したい、などの理由により、副業をする人は多くいらっしゃいます。最近は、副業を認める企業も増加傾向にあり、また副業向けのスマホアプリなども出てきて、副業をやりやすい環境になってきたともいえます。 そんななか、政府は2022年8月に『「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募手続の実施について』という内容の発表を行いました。これは、副業されている方には大きな影響を与えかねない内容です。 今回は、この発表について書いていきたいと思います。
今回の発表内容とは?
まずは、今回発表された内容を見てみましょう。
発表された内容は、“所得税”に関係しています。副業で収入を得たら、確定申告を行い、その収入額に応じた所得税を納めます。その部分に関する“改正“となります。
改正案の概要は次の2点です。
(1) その他雑所得の範囲の明確化
その他雑所得(公的年金等に係る雑所得および業務に係る雑所得以外の雑所得をいいます)の範囲に、譲渡所得の原因にならない資産において、譲渡による所得(継続的に営利目的で行う当該資産を譲渡した際の所得、および山林の譲渡による所得を除きます)が含まれることを明確化します。
(2) 業務に係る雑所得の範囲の明確化
業務に係る雑所得の範囲に、継続的に、営利目的で行う資産において、譲渡による所得が含まれるということを明確化しています。
事業所得、そして業務に係る雑所得について判定する際には、その所得を得るために行っていること(活動)が、社会通念上でみたときに「事業」と称して問題ない程度に行われているか判定すること。そして、その所得がその者の主たる所得でなく、そして、その所得によって得られる収入の金額が 300 万円を超えないケースでは、反する証拠が特にない場合、業務に係る雑所得として扱うのです。
これまで、所得税について確定申告をする際は、得た収入を「事業所得」か「雑所得」に分けていましたが、その分け方がきちんと決まっていなかったので明確にする、というのが趣旨だと考えます。上の(2)を要約すると、『副業で得た収入が年間300万円以下の場合、雑所得になる』となります。
では、それがいったい、私たちにどう影響するのか? 次の項で見ていきます。
何が変わるの?
先述のとおり、確定申告をする際は収入を事業所得か雑所得に振り分けて記載します。そして、この2つにはいくつかの違いがあります。
1. 損益通算
損益通算とは、副業が赤字だった際に給与所得と合算してトータルの所得(総所得)を減らすことです。事業所得の場合は、これが可能です。総所得は住民税の算出にも使われるので、税金も安くなります。しかし、副業を雑所得として取り扱うと損益通算ができません。
そのため、副業がどんなに赤字だったとしても、本業で得た給与所得は変わらず、その分の税金がかかってきます。
2. 青色申告の控除がない
確定申告の際に青色申告という方法を使うと、最大で65万円が控除されます。しかし、この控除は雑所得には適用されません。
3. 赤字の繰り越し
事業所得の場合、赤字だった時は3年間、赤字を繰り越すことができます。これにより、今年が大幅な赤字で次の年が大きく黒字になったような場合でも、黒字分を相殺することで税金を抑えることができるのですが、雑所得の場合、繰り越しをすることができません。
このほかにも、事業所得と雑所得で取り扱いが異なる規定はいくつかありますが、おおむね、事業所得のほうが優遇されています。
今後の動向に注視して
2022年10月7日に、今回の公表についての結果が公示されました。今回の公表に対し、多数の意見が寄せられ、その結果、改正案の一部見直しが実施されています。最終的にどのようになるか、注視していきたいと思います。
まとめ
今回の改正が適用されたら「令和4年分以降の所得税について適用される」とあります。つまり、今年の収入からです。“現在副業をしていて、その収入が年間300万円以下”の方が、今回の改正の影響を受けることになりますが、副業をしている方のなかには該当するという方もいらっしゃるでしょう。
もしご自身がこの条件に当てはまるなら、この改正(案)の今後の動向にご注意ください。
出典
e-GOV 「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募の結果について
執筆者:長崎元
行政書士/特定行政書士
長崎元行政書士事務所 代表
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