【累積収益100兆円超え】公的年金を管理・運用する「GPIF」をわかりやすく解説
ファイナンシャルフィールド / 2022年11月15日 7時10分
公的年金制度を維持・存続させるためには、公的年金被保険者の年金保険料納付が欠かせません。 では、納付された年金保険料からなる年金積立金の管理・運用は誰がどのように執り行っているか、ご存じでしょうか? 結論から言いますと、日本における巨額な年金保険料積立金の管理・運用は「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」が担っています。 本記事では、GPIFについてわかりやすく解説していきます。
GPIFとは
GPIFは英語表記「Government Pension Investment Fund」の略で、現役世代が納めている年金保険料のうち、年金の支払いに充てられなかった部分を「年金積立金」として積み立て、将来世代のために運用して増やす仕事をしています。
GPIFが厚生労働省から寄託された公的年金積立金の運用額は、193兆126億円(2022年度第1四半期末現在)にも及びます。国家予算をもしのぐ規模の巨額の年金積立金を有するGPIFは「クジラ」ともいわれ、金融市場に大きな影響力を与えています。
GPIFは国民の年金生活を守る役割を担いながら、金融市場の混乱を招かないようにしなくてはならない立場として何かと注目される存在です。
GPIFの仕組み
厚生労働省が国民から預かった年金保険料をGPIFに寄託し、年金積立金の運用をGPIFに一任します。受託したGPIFは年金積立金を信託銀行などを通して金融市場で運用し、運用益を出した上で厚生労働省に「運用収益の国庫納付」という形で返還します。
【図表1】
出典 年金積立金管理運用独立行政法人「年金積立金の管理・運用のしくみ」より引用
GPIFの運用方針・方法
GPIFの運用方針の特徴は以下のとおりです。
1.安全・効率的かつ確実を旨とした長期運用
2.国内債券・海外債券・国内株式・海外株式の4資産を組み入れた分散投資
3.4資産の構成割合は25%ずつを基本とする(2020年4月1日より適用)
図表2は、GPIFの基本的な運用資産組み入れ割合を示しています。複数の資産に分散投資することでリスクを抑えつつ、収益が上がるよう資産の組み入れ割合を決めています。
【図表2】
出典 年金積立金管理運用独立行政法人「運用資産額・構成割合(年金積立金全体)」より引用
GPIFは運用方針を守りつつ、厚生労働大臣が定めた下記の算出公式に基づいた運用収益の確保の要請をされています。
年金積立金の長期的な運用目標=賃金上昇率+1.7%
世界各国の低金利政策は脱しつつあるとはいえ、世界的な物価上昇局面であることは変わらないため、資産価値を目減りさせかねない状況が続いています。
GPIFは手堅い運用方針が前提にありますが、多少のリスクをとってでも運用しなければならない難しさがあります。GPIFは年金積立金の長期的な運用目標を達成していくことで責務を果たしていくわけですが、その期待と責任の大きさが伺い知れます。
GPIFの運用成績
将来の年金原資になるGPIFの運用成績はどうなっているでしょうか。
【図表3 2001年度以降の累積収益】
出典 年金積立金管理運用独立行政法人「2001年度以降の累積収益」より引用
2022年第1四半期の運用成績はコロナ禍における金融市場や経済の低迷の影響を受け、-1.91%、収益額-3兆7501億円の損失を出しています。
しかし図表3からもわかるように、現在までに積み上げた巨額の累計収益(+3.56%、101兆6786億円)の中では、それが一時的で部分的な損失にとどまっていることがわかります。GPIFの巨額の運用収益はリスクを抑えたポートフォリオのもとで、長期運用の成果が如実に表れている証しだと言えるでしょう。
まとめ
国会でも年金積立金運用に関してさまざまな議論が沸き起こります。現に昨年のGPIFの運用成績はコロナ禍の影響もあり、対前年比でマイナスとなりました。
しかし、GPIFは長期的に見ると巨額の運用収益を上げてきています。運用環境としては非常に難しい局面ですが、GPIFによる年金運用は、今後も長期運用の視点に立って冷静に見ていくことが求められそうです。
出典
年金積立金管理運用独立行政法人 年金積立金の管理・運用のしくみ
年金積立金管理運用独立行政法人 2022年度の運用状況
執筆者:茂野博起
AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士
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