老後に「2000万円」は本当に必要? 「年金だけ」で生活するすべとは?
ファイナンシャルフィールド / 2022年11月17日 3時0分
老後2000万円問題が話題になったとき、「そんなに老後資金を貯めるなんて、絶対無理!」と思った方も少なくないことでしょう。 そこで今回は、本当に2000万円も用意する必要があるのか、どうにか年金だけで生活するすべはないのか、そんな老後に関する疑問にお答えしていきます。
老後2000万円ってホントに必要なの?
多くの方が「ホントに老後は2000万円も用意しないといけないの?」と疑問に感じていることでしょう。そこで、まずは2000万円ものお金が本当に必要なのかどうか、考えてみます。
総務省の発表する家計調査報告(2021年)の平均結果によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支においては、毎月1万8525円の赤字となっています。
【図表1】
出典:総務省 家計調査報告 2021年(令和3年)平均結果の概要
また、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支においては、毎月9402円の赤字となっています。
【図表2】
出典:総務省 家計調査報告 2021年(令和3年)平均結果の概要
仮に上記の赤字が65歳から90歳までの25年間続いたとすると、赤字額の累計は夫婦高齢者無職世帯においては約556万円、高齢単身無職世帯においては約282万になります。これを見る限り、一般的には、2000万円も用意せずとも老後は生活していくことができそうです。
しかし、これはあくまでも統計上から見える数値であり、個別の具体的な事情によっては当てはまらない世帯が存在することも想定されます。
例えば、持病があり医療費が多くかかる、賃貸マンションに居住しており住居費が多くかかる、受給する年金が国民年金のみで収入が低い、などという場合です。そういった場合は、2000万円近いお金が必要となる可能性もあります。
どちらにせよ、用意しなければならない老後資金については、一様に2000万円として考えるべきではありません。自身の老後の生活にかかるであろう費用をシミュレーションし、その上で必要な金額を用意するという思考に切り替えていくべきでしょう。
年金だけで生活するすべは?
毎月数万円程度の赤字があり、年金だけでは生活できないという場合、家計の見直しをすることで解決する可能性もあります。
例えば、携帯電話の契約を格安SIMに変更する、電気・ガスの料金プランや契約事業者を変更する、コンビニの利用を控えてスーパーで買い物するなど、日常の中で無理なくできる節約を実行していきます。
娯楽にお金を消費し過ぎているなど無駄遣いが目立つ部分についても、支出を抑え、見直していきます。これだけでも人によっては毎月数万円単位で支出が減り、年金だけで生活できるようになる可能性があります。
また、子どもや親族などと同居するという方法も有効です。同居する子どもや親族の扶養親族となることで、相手も控除を受けられ税金が安くなるというメリットもあります。
どうしても年金だけで生活をしたいという場合は、このように生活費の引き下げと子どもや親族との同居についても検討してみましょう。
老後は資産形成や就労も視野に
年金だけでの生活を試みること自体が悪いわけではありませんが、年金ありきで老後について考えるのはリスクが高いかと思われます。
年金は将来、受給額が引き下げられたり、受給開始時期が後ろ倒しになったりするなど、想定どおりに受給できない可能性もあるからです。
その点を鑑みると、年金だけで生活するよりも、iDeCoやつみたてNISAといった諸制度を利用し、小額からでも将来のために資産形成を行って老後に備える方が安心できるでしょう。
それに加えて、再雇用や再就職、シルバー人材などで定年後も就労を継続し、収入を得ることも検討したいところです。そうすることで、老後までに十分な資産形成ができなかった場合や、年金だけでは生活できない場合でも、無理なく生活していける可能性が高まります。
老後は必ずしも2000万円なければ生活できないわけではない
老後は2000万円必要だといわれることもありますが、実際はそうと限らない場合も少なくありません。とはいえ、年金だけで生活できるかといえば、難しい面もあります。
老後必要なお金については、一度自身でシミュレーションしておくとともに、年金だけで生活しようとするのではなく、諸制度を用いた資産運用を現役時代から実施することや、老後、無理のない範囲で就労することについて検討しておくと、老後をより安心して迎えることができるでしょう。
出典
総務省 家計調査報告 2021年(令和3年)平均結果の概要
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1182 お年寄りを扶養している人が受けられる所得税の特例
執筆者:柘植輝
行政書士
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