「FIRE卒業」への批判から見える日本社会の生きづらさ
ファイナンシャルフィールド / 2022年11月18日 2時40分
欧米を中心に流行したFIRE(Financial Independence,Retire Early)は、日本でも広まっています。一方で、2022年の米国株が下落基調で推移していることから、資産の大半を株式に投資して毎年一定の割合を取り崩す一般的なFIREは、下落局面でも冷静に保有し続ける精神力がなければできないという意見も見受けられます。 そのような状況の中、SNSで発信された「FIRE卒業」は注目を浴び、批判が複数のメディアから発生しました。本記事では、FIREに対する憧れや誤解、「FIRE卒業」という発信内容の真意について解説します。
突如Twitterでトレンド入りした「FIRE卒業」
2022年11月上旬、突如Twitterのトレンドに「FIRE卒業」が入りました。とあるユーザーがFIREをやめて会社に就職するというツイートをしたことに対して、別のユーザーが「私もFIRE生活を卒業し…」と返信(リプライ)したのがきっかけです。
一過性のブームに収まることはなく、トレンド入りした後もさまざまなメディアで拡散されています。発信者によって意見は異なりますが、「投資で生活するのは甘くない」「FIRE卒業ではなくて失敗だろ」といった手厳しい批判も見受けられます。
一連の発言を見る限り、FIREをやめて会社に就職する理由は投資に失敗したわけではありません。受け取る側が「FIRE卒業」という言葉だけを独り歩きさせた印象です。
批判から見えるFIREに対する憧れと誤解
FIRE卒業に対して批判的な記事を読むと、FIREに対して過度に憧れていたり誤解をしていたりすることが推測できます。
生きるための労働から解放されていることへの憧れ
FIRE(Financial Independence,Retire Early)は「経済的自由を達成して早期退職する」という意味です。一般的なFIREのイメージは、まとまった資産を貯めて、資産から生まれる所得だけで生活できるので、生きるための労働をしなくてよい状態です。
会社員や公務員の中で仕事に対して充実感を持てない人にとっては、とてもうらやましく思えるのかもしれません。仮に仕事そのものは好きだったとしても、朝早く起きて満員電車に乗ったり、渋滞している道路を運転したりしながら出社するのが好きという人は多くはないでしょう。
このような背景から、FIREそのものへの過度な憧れや美化が生まれているのだと考えられます。
FIRE前とFIRE後で労働に対する価値観は変わらないという誤解
FIRE前とFIRE後の「労働に対する価値観」が変わらないという誤解もあります。FIREを目指す人にとって、FIRE前の労働は「生活のため仕方なく行うもの」という意識が強いと思われます。もし、会社員や公務員としての働き方が好きなら、ほとんどの人がFIREを目指さないといえるからです。
一方で、FIRE後の労働に対する価値観は変わる可能性があります。FIRE前は仕方なく行っていたものだったとしても、FIRE後に改めて労働の意味を再確認し、肯定的に捉え直す人がいてもおかしくありません。
FIRE前はFIREに対して憧れを抱いていた人でも、FIRE後の生活に飽きてしまい再就職するパターンも考えられます。「隣の芝生は青く見える」という言葉があるように、FIRE達成者の心境の変化を理解することも必要ではないでしょうか。
FIREもFIRE卒業もライフスタイルの一つにすぎない
全く働かないわけではなく、ある程度労働する「サイドFIRE」を除いて、一般的なFIREを達成するのは大変です。金融広報中央委員会の資料では、2人以上の世帯の金融資産保有額の平均は1563万円となっており、1500万円程度の資金では一般的なFIREはできません。
そんな状況の中、5000万円~1億円、またはそれ以上の資産を貯めてFIREを達成した人に対して、うらやましくなるのと同時に、ねたみのような感情が生まれるのではないでしょうか。
しかし、個人がどんな人生を過ごすかについては、本来自由のはずです。FIRE卒業という言葉そのものに違和感があるためここまで広まったのかもしれませんが、実際は「FIRE生活を卒業して再度就職いたしました」と言っただけです。
とらえ方によってはFIRE失敗といえなくもないですが、「FIRE卒業」という言葉だけでは断定できません。内容の真意を確認しないまま、資産運用に失敗したとまで批判につなげるのは不適切です。
どんな人生を過ごそうと個人の自由であり、FIREはライフスタイルの一つにすぎません。一方的に「FIRE卒業→FIRE失敗」だと考えるのではなく、もう少し多様な生き方を認めるおおらかさやリテラシーが世の中には必要ではないでしょうか。
出典
金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査2021年(二人以上世帯調査)
執筆者:北川真大
2級ファイナンシャルプランニング技能士・証券外務員一種
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