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すぐわかる税金の話 年収300万円以下の副業は雑所得で税務メリットが減少、サラリーマンの副業に暗雲か? その4

ファイナンシャルフィールド / 2022年11月19日 10時30分

すぐわかる税金の話 年収300万円以下の副業は雑所得で税務メリットが減少、サラリーマンの副業に暗雲か? その4

これまで3回にわたり、国税庁から「年収300万円以下の副業は事業所得ではなく雑所得となる」判定基準(改正案)が提示されたため、今後はサラリーマンの副業の税務メリットが減少するであろうことについて説明してきました。   「その4」ではこの問題に関する総括をします。

国税庁の狙い

国税庁の狙いは、行き過ぎた節税を是正することにあると思われます。
 
近年、サラリーマンという本業の片手間で形ばかりの副業に手をつけ、赤字を計上し、税の還付を受けるというケースが増えていることがマスコミでも報じられています。そういった行動を抑制するため、このような判定基準(改正案)を出したのではないか、ということを多くの税理士が指摘しています。
 

判定基準(改正案)の問題点

国税庁の狙いは推測できたとして、この判定基準(改正案)が実際に施行された場合の問題点について考えてみましょう。

1.「事業性」の判定については以前から明確な考え方があったにもかかわらず、今回さらに定量的な規定(年収300万円以下は雑所得)を設けることによる弊害
2.政府はサラリーマンの副業を推奨していたのではないのか?
3.年金所得者の副業もサラリーマンの副業と同様に扱われるとしたら、それは正当か?

上記3点について、順番に説明していきます。
 

「事業性」の判定については以前から明確な考え方があったにもかかわらず、今回さらに定量的な規定(年収300万円以下は雑所得)を設けることによる弊害

「事業性」の判定については「その2」で明記したように、以前から明確な基準がありました。「事業性」を有する活動とみなされるためには、次の条件を満たすことが必要です。

1.自己の危険と計算において独立して行う業務であること
2.営利性・有償性を有すること
3.反復継続して業務を遂行していること
4.その事業において社会的地位を有すること

(注)「国税不服裁判所 平成26年9月1日裁決」を参照。

抽象的ではありますが、内容は明確です。今回国税庁が排除しようとしている「副業」は、この基準を満たさないものであることは明白です。これに加えて300万円という定量的な基準を設けようとするのは、この基準を満たしているか、一人ひとりを調べることは不可能だからでしょう。
 
しかしながら、定量的な基準を設けることにより、本来「事業性」を持っていたはずの所得が雑所得とされてしまうことも十分あり得ます。年収300万円に満たなくとも「事業性」を有している副業が、定量的基準を設けることによって排除されてしまうことが憂慮されます。
 

政府はサラリーマンの副業を推奨していたのではないのか?

一般的に見て、政府はサラリーマンの副業を推進してきたと思われます。また、終身雇用により退職所得控除が大きくなることを是正し、転職をしやすくしようとする動きもあります。これらは全て、1カ所からの収入だけに頼らず、複数の収入源を確保させようとする狙いがあると見受けられます。
 
サラリーマンの副業を育てようとするのであれば、税務的にもそれなりのサポートがあってしかるべきではないでしょうか。副業でいきなり300万円を稼ぐことは非常に難しいため、副業を育てるという考えであれば、少なくとも起業してから3年以内は何らかの税務上の優遇を与えるといった施策が必要かと思われます。
 

年金所得者の副業もサラリーマンの副業と同様に扱われるとしたら、それは正当か?

判定基準(改正案)は、サラリーマンで副業をしている人だけではなく、年金所得者で仕事をしている人にも適用される可能性があるようです。
 
年金所得者はサラリーマンと比べ時間があり、片手間でなく、時間を十分に掛けて行っている率は高いと思います。その分だけ「事業性」を満たしている可能性も高いでしょう。そのため、年金所得者もサラリーマンも一律に年収300万円で区切ることの正当性については疑問が残ります。
 

まとめ

判定基準(改正案)に関してこれまでに挙げた疑問点を総括すると、定性的にきちんとした基準のある事業所得としての判定に対し、さらに年収300万円という定量的な基準を導入するという、2つの基準を適用してしまったことによる混乱ということができます。
 
実務運用的には定量的基準のほうが強く、定量的基準が一人歩きする危険性があります。問題は、それが、本来あるべき税法の精神を損ねているのではないかということに尽きると思われます。
 

出典

国税不服審判所 公表裁決事例 (平成26年9月1日裁決)
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

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