いまさら聞けない3通りの退職金の受け取り方
ファイナンシャルフィールド / 2022年11月22日 9時20分
退職金は、法律で支払いが決まっているお金ではありません。厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」によると、退職金制度がある会社は、80.5%です。よって、約2割の会社は、退職金制度がないことになります。 退職金は、老後の生活に大きな影響がありますので、まずは、現在の勤務先に退職金制度があるのか、また、いくらくらいもらえるのか確認しておくことが必要です。 今回は、退職金の受け取り方について解説したいと思います。
勤続年数によって異なる「退職所得控除」とは
退職金を受け取る際に「退職所得控除」という控除を利用することができます。「退職所得控除」とは、退職金にかかる所得税や住民税を大きく減らすことができる制度です。「退職所得控除」が退職金より多い場合には、税金はかかりません。
逆に、退職金が、「退職所得控除」より多い場合は、その収入金額から退職所得控除を差し引き、さらに2分の1をかけた金額が退職所得となります。
退職所得の金額=(収入金額―退職所得金額)×1/2
退職所得控除は、勤続年数によって異なります。
退職所得控除の計算式
勤続年数 | 退職所得控除 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は、80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20万円) |
3通りの退職金の受け取り方とは
退職金の受け取り方は、(1)一時金(一括)、(2)年金(分割)、(3)一時金と年金の組み合わせの3種類の受け取り方があります。
(1)一時金(一括)で受け取る場合は、前述の「退職所得控除」が利用できます。勤続年数によって、控除額が変わりますので、事前に控除額を確認しておきましょう。また、勤続年数の年未満の端数があると切り上げになります。
(2)年金で受け取る場合、10年間、15年間など、一定の年数をかけて退職金を受け取ります。受け取っていない部分のお金は、一定の利率で会社が運用してくれます。よって、退職金総額は、年金で受け取るほうが多くなります。
しかし、年金で受け取る場合、退職所得ではなく、「雑所得」扱いとなるため、退職所得控除は利用できません。毎年の公的年金などの収入を合算した金額から「公的年金等控除」を差し引いた雑所得に所定の税率をかけ、控除額を差し引くことで、所得税、住民税を算出します。
・雑所得の計算式
雑所得=年金等の収入の合計―公的年金等控除額
・公的年金等控除の計算
年金等の収入の合計 | 公的年金等控除 | |
---|---|---|
65歳未満 | 65歳以上 | |
130万円以下 | 60万円 | 110万円 |
130万円超 ~330万円以下 |
年金収入×25% +27.5万円 |
110万円 |
330万円超 ~410万円以下 |
年金収入×25% +27.5万円 |
年金収入×25% +27.5万円 |
410万円超 ~770万円以下 |
年金収入×15% +68.5万円 |
年金収入×15% +68.5万円 |
770万円超 ~1000万円以下 |
年金収入×5% +145.5万円 |
年金収入×5% +145.5万円 |
1000万円超 | 195.5万円 | 195.5万円 |
上記早見表は、公的年金等以外の合計所得金額が、1000万円以下の場合
65歳未満の公的年金等の収入金額の合計額が60万円までの場合、ゼロ
65歳以上の公的年金等の収入金額の合計額が110万円までの場合、ゼロ
(3)一時金と年金の組み合わせで受け取る場合、一時金の部分は、「退職所得控除」、年金の部分には、公的年金等控除を適用します。
賢い退職金の受け取り方は?
退職金を受け取る前に3通りの受け取り方があることを確認していただきました。自分にとってベストな受け取り方は、どれだろうと悩まれる方もいらっしゃると思います。個人差はありますが、退職所得控除の効果を生かすことで手取りを増やすことはできます。
また、退職所得控除より退職金のほうが多いならば、退職所得控除の枠ギリギリまで一時金で受け取り、残りは公的年金等控除の範囲で収まるように年金を受け取るようにすると税額を減らすことができます。
まとめ
今回は、老後の生活に影響のある退職金の受け取り方について解説しました。事前に3通りの受け取り方があること、また自分がどれを選択すればいいか把握しておくことは重要です。ぜひ、退職金を受け取る直前ではなく、早めに準備しておくことをおすすめします。
出典
厚生労働省 平成30年就労条件総合調査 結果の概況 退職給付(一時金・年金)制度
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
執筆者:廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー
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