定年後に備え、資産運用を始めたいけど何から手をつけていいか分からない! おすすめの方法を教えてください
ファイナンシャルフィールド / 2022年11月22日 4時20分
現在の超低金利時代では定年後の老後資金を準備するために預貯金以外の資産運用を始めたいと思っている人も少なくないでしょう。今回は、資産運用の基本と資産形成の方法について解説します。
資産運用の基本について
1. 資産形成の第一歩は資産運用に回す資金を捻出すること
資産形成の第一歩は、家計の収入から資産運用に回す資金を捻出することです。収支が均衡している場合や赤字となっている状況では、資産の形成は望めません。従って、まずは毎月の家計の収入から資産運用に充てる資金を、定期積立貯金などを利用して計画的に用意する必要があります。
2. 資産を増やすためにはお金を働かすこと
次に、貯めた資金を資産運用で増やすことを考えます。
金利の複利効果により元本を2倍にする場合の投資期間を概算で求める「72の法則」という算式があります。例えば、100万円の資産を金利1%で複利運用した場合、72年後に2倍の200万円になるというものです(※1)。
この法則を適用し、一例として現在のゆうちょ銀行の定期貯金に預けたケースで資産が倍になる年数を計算してみましょう。
ゆうちょ銀行の定期貯金の金利は、2022年11月1日現在で0.002%(※2)のため、72の法則の計算式(72÷0.002)に当てはめた場合、実に3万6000年が経過しないと2倍にはなりません。
従って、貯めたお金を超低金利の預貯金だけで管理するのではなく、少しでも高い金利が得られる投資先や、利回りの良い投資対象を選択して資産運用することを考えましょう。
3. 分散投資とは
それでは、手元にある資産を金利が高く、利回りの良い投資先に、一度にまとめて投資すればいいのでしょうか。
金利や利回りの良い投資先は、常に高い金利や資産価値を維持できるとは限らず、金利や価格が大きく下がるリスクもあります。このリスクを減らすために、投資対象を性質が異なる複数の資産に分散し、投資した資産の利率の変化や価格の変動を打ち消し合うことができます。
例えば主な投資対象としては株式と債券が、投資先としては国内と国外がありますが、これらを組み合わせて複数の資産に分散投資することをお勧めします(※3)。
また、一度に多額の投資を行うのではなく、投資時期についても分散することで、価格の高騰時に購入が集中するようなリスクを軽減できます。
4. 積立投資信託を活用
投資信託は、証券会社などが多くの投資家から資金を集め、集まった資金を専門家が国内外の株式や債券に分散投資し、その成果を投資家に還元する商品です(※4)。
投資信託の購入によって資産対象や投資先を分散することができます。ただし、投資信託は運用成果がマイナスになったとしても、元本が保証されるものではありません。
また、毎月一定額の投資信託を買い付ける積立投資信託を選択することで、時間の分散も図れます。
資産形成の方法について
1. iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用する方法
iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用することで、税制面の優遇を受けながら資産を運用して、自分自身の年金を用意することができます。
iDeCoでは、掛け金の拠出と運用を自身で行い、掛け金とその運用益の合計額を基に、年金または一時金として給付を受けられます。
掛け金は全額が所得控除の対象となり、運用益は非課税、給付時は公的年金等控除、または退職所得控除を受けることができます(※5)。
加入対象者と掛け金の限度額は、図表1のとおりです。
図表1
国民年金 被保険者区分 |
企業年金の加入状況 | 拠出限度額 |
---|---|---|
第1号被保険者 (自営業等) |
年額:81.6万円(月額:6.8万円) ※国民年金基金加入者は掛け金を合算した額 |
|
第2号被保険者 (会社員、公務員等) |
企業年金なし | 年額:27.6万円(月額:2.3万円) |
企業型確定拠出年金のみ | 年額:24万円(月額:2万円) | |
上記以外の企業年金 | 年額:14.4万円(月額:1.2万円) | |
公務員 | 年額:14.4万円(月額:1.2万円) | |
第3号被保険者 (専業主婦等) |
年額:27.6万円(月額:2.3万円) |
特定非営利活動法人 確定拠出年金教育協会 iDeCoナビをもとに筆者作成
なお、iDeCoでは特段の理由がない限り、60歳になるまでは払い出すことができませんので注意してください。
2. つみたてNISA(少額投資非課税制度)を利用する方法
つみたてNISA(少額投資非課税制度)は、日本国内に居住する20歳(2023年1月以降は18歳)以上の方が利用できる非課税口座で、投資信託を毎年40万円まで最長20年間、最大で800万円の資産を運用することができます。NISA口座では、分配金や譲渡(売買)益に対する税金が非課税となります(※6)。
つみたてNISAは金融機関にもよりますが、毎月100円から3万3333円(年40万円の非課税投資枠)を拠出して投資信託を購入できます。
また、つみたてNISAで購入できる投資信託は、金融庁が選定した長期の積み立てや分散投資に適した商品となっているので、投資初心者の人も比較的安心して資産運用を始められるといえるでしょう。
3. 一般NISAを利用する方法
既に一定額以上の預貯金を保有している人が、投資信託などで資産運用を行いたい場合は、一般NISAを利用するといいでしょう。
一般NISAは、株式や投資信託などを年間120万円まで購入することができ、最大5年間、非課税で保有することができます。そこで、既に保有する預貯金から投資信託などに資産を移す方法として、一般NISAを利用して毎月10万円で、5年間、投資信託などを購入することで最大で600万円の資産を投資信託などで運用できます(※7)。
一般NISAでは株式も購入することができますが、資産の分散を考慮して、つみたてNISAでも購入可能な投資信託を選ぶことをお勧めします。
なお、一般NISAとつみたてNISAを併用することはできませんので、いずれかを選択する必要があります。
まとめ
超低金利時代では、預貯金のみで資産を増やすことはできません。そこで、iDeCoやNISAといった非課税制度を活用した資産運用を考える必要があります。その際には積立方式で投資信託を購入し、資産と時間の分散を図ることでリスクを軽減できます。
出典
(※1)金融広報中央委員会 知るぽると 72の法則とは
(※2)ゆうちょ銀行 金利一覧
(※3)金融広報中央委員会 知るぽると 分散投資とは
(※4)金融広報中央委員会 知るぽると 投資信託
(※5)特定非営利活動法人 確定拠出年金教育協会 iDeCoナビ
(※6)特定非営利活動法人 確定拠出年金教育協会 つみたてNISAナビ
(※7)金融庁 NISA特設ウェブサイト
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
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