学生に忍び寄る詐欺の連鎖。どんな手口があるのか知っておこう
ファイナンシャルフィールド / 2022年11月23日 11時40分
学生を巻き込んだ「特殊詐欺」が後を絶ちません。大学から学生に対して、注意喚起が出されているかもしれませんが、自分が被害に遭っている、もしかすると加害者になっているということを、学生本人が気づかなければ発覚しません。 どんな詐欺の手口があるのかを知ったうえで、少しでも「おかしいかも?!」と思ったら、誰かに相談しましょう。誰にも相談できないときは、消費者センターに電話してみましょう。 自分ひとりで思い悩むことだけは、絶対にしないでほしいのです。
学生が被害に遭う「マルチ取引」とは?
マルチ取引とは、商品・サービスの契約をした上で、自分が買い手を探し、買い手が増えるごとにマージンが入るという取引形態です。
マルチ取引を用いた詐欺は、買い手を増やせば元が取れる、もうかるなどと、言葉巧みに勧誘します。契約の際に、まず商品や教材をローンで買わせるので、買い手がつけばマージンが入りますが、買い手がつかなければマージンは得られず、ローンだけが残る、という仕組みになっています。
通常、そう簡単に買い手を増やすことはできず、当然にして利益が出るようなほど稼ぐことはできず、途中でやめたいと言ってもお金を返してもらえないのです。
学生に対しては、投資ソフトや就活セミナー等の高額教材を買わせます。それ自体が学生にとって役立つと思わせ、とてもよい話だからと友人を勧誘する構図です。「友人が勧めるのだから怪しくないだろう」と思ったり、「ちょっと怪しいかもしれないけれど、断ると友情が壊れてしまうのではないか」と断れなかったりして、被害が広がっていくのです。
なぜ学生が「マルチ取引」の詐欺被害に遭うのか?
だますほうは、友だちや先輩との関係を大事に思う学生たちの気持ちを利用します。特にコロナ禍で人との接触が制限されていたため、リモートでしか会えなかった友だちと対面で会えるようになり、以前よりも友情を大事にする傾向にある中で、友人から誘われると断れない心情をついてきます。
以前であれば、詐欺はお金がある人しか狙われず、バイト収入程度しかない学生は、詐欺の対象ではないと考えられていました。しかしそれは昔の話、「お金がない」といってもローン契約をさせて支払わせようとするのです。
18歳成人になり、18歳、19歳でも親の同意なしにクレジットカードが作れるようになりました。18歳、19歳に対する「未成年者取消権」がなくなり、親の同意なしにした契約が取り消せないことを悪用し、堂々と詐欺をしかけてきているように感じます。
大学でも注意喚起しており、大学によっては専門家の講座を開いて、学生たちに実態を知ってもらう、未然に防止する策を学んでもらう取り組みをしているところもあります。手口を知ることで、これまで怪しいと思わなかったことが怪しいのだとわかるようになり、ひとりで抱えずに誰かに相談するようになれば、被害件数は減らせる可能性があります。
「必ずもうかる」話はありません。そもそも必ずもうかるなら、他人に教えないはずです。マルチ商法被害の怖いところは、友だちを勧誘していると、自分が被害者であると同時に加害者にもなる、ということです。
お金はとられる、友だちも失う、では悲しすぎます。「おいしい話には裏がある」、もうけ話は疑ってかかるくらいでちょうどよいと思います。
学生が狙われる「オーディション詐欺」の手口は?
最近、18歳、19歳の専門学校生を狙った「オーディション詐欺」が摘発されました。偽のオーディションを行い、合格通知を出して、レッスン料として数十万円を支払わせるという手口です。
「支払えない」というと、クレジットカードの作成を勧められ、「親に聞かないとわからない」というと、「もう成人なんだから、親の同意は必要ない。今決めて」とその場で契約させる、というものでした。
夢を持って真剣に取り組んでいる若者に対する卑劣な詐欺です。本来、事務所からギャラをもらうものであって、「レッスン料」「登録料」「撮影料」などの支払いを求められるものではありません。
なのに、「オーディション合格」を提示され、「あと少しで夢がかなう!」と期待で冷静な判断ができない状況下で、金銭を要求し、支払わないと他の人にチャンスが行ってしまうといわれると、無理しても支払おうとする人もいるでしょう。
今回の手口は、「未成年者取消権」の対象でなくなった18歳、19歳を狙った手口ともいえます。「未成年者取消権」は、親の同意を得ずに結んだ契約を、原則あとから取り消せる権利です。
また、仮にレッスン料が25万円の場合、ローンであれば月2万円程度、1年ちょっとで返済できるケースもあり、「バイトすれば返済できるかな」と思えてしまうような“ちょうどよい金額”を提示されることが多いのです。 しかし、借金は借金です。途中で抜けようとしても、借金は残ります。
なかには、長期契約を結ばせ、簡単には抜けられないようにするケースもあります。雑誌掲載やウェブ募集などもあり、募集の段階で「オーディション詐欺」を見抜くのは難しいようです。
支払いが発生するような契約は、怪しいと思って踏みとどまるべきです。
出典
国民生活センター マルチ取引
執筆者:黒澤佳子
CFP(R)認定者、中小企業診断士
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