会社員として働いてきた妻と、扶養の範囲内でパートとして働いてきた妻。夫の遺族年金の受給額に違いはある?
ファイナンシャルフィールド / 2022年12月2日 2時30分
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日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人は国民年金に加入しています。さらに、会社員・公務員は厚生年金保険にも加入しています。夫が亡くなった場合、要件を満たせば生計を維持されていた遺族が遺族年金を受け取れます。 妻が遺族年金を受け取る場合に、妻の働き方で受給額に違いはあるのでしょうか。遺族年金について受給額を中心に解説します。
遺族年金とは
遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった人が亡くなった場合に、その人に生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、受給要件を満たすかどうかで受け取れる年金が違ってきます。
遺族基礎年金は、国民年金に加入している人や老齢基礎年金の受給資格を満たした人(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間の合計が25年以上)が亡くなった場合に、生計を維持されていた子のある配偶者または子が受け取れる年金です。
この場合の子とは、18歳に到達した年度の3月31日を経過していない人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の人です。
遺族厚生年金は、厚生年金保険に加入している人や老齢厚生年金保険の受給資格を満たした人(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間の合計が25年以上)が亡くなった場合に、生計を維持されていた家族が受け取れる年金です。
対象となる家族は優先順位が決まっており、妻、子、夫、父母、孫、祖父母の順で、夫、父母、祖父母は受け取る人の年齢が55歳以上に限られます。
遺族年金を受け取るには生計維持の2つの要件を満たす必要があります。1つ目は、同居あるいは別居で仕送りを受けるなど生計を同じくしていること、2つ目は、収入が850万円未満(所得が655万5000円未満)であることです。
遺族年金の年金額
遺族年金の年金額は、遺族基礎年金、遺族厚生年金それぞれで計算方法が決められています。
遺族基礎年金
遺族基礎年金の年金額は、子のある配偶者と子の2つのケースでそれぞれ次のようになっています。
子のある配偶者が受け取る場合、77万7800円+子の加算額
子が受け取る場合、77万7800円+2年目以降の子の加算額
子の加算額は、1人目および2人目は各22万3800円、3人目以降は各7万4600円です。
例えば、夫が亡くなった場合に妻と子2人が受け取るケースでは、77万円7800円+22万3800円×2人で合計122万5400円となります。
遺族厚生年金
遺族厚生年金の年金額は、亡くなった人の老齢厚生年金の比例報酬部分の4分の3です。なお、厚生年金保険の被保険者の期間に亡くなった場合で、厚生年金保険の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は300月とみなして計算します。
例えば、亡くなった人の老齢厚生年金の比例報酬部分が100万円、被保険者期間は25年以上のケースでは、遺族厚生年金は75万円となります。
なお、65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利にある人が、配偶者が亡くなって遺族厚生年金を受け取る場合は、遺族厚生年金の年金額は次の高い方の金額です。
●亡くなった人の老齢厚生年金の比例報酬部分の4分の3
●亡くなった人の老齢厚生年金の比例報酬部分の2分の1と、自身の老齢厚生年金の2分の1の合計
また、遺族厚生年金には「中高齢寡婦加算」の制度があります。夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満の子のない妻、または遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受給していた子のある妻について子が18歳になったなどで遺族基礎年金を受給できなくなる場合に、58万3400円を加算して受け取れます。
遺族厚生年金は老齢厚生年金との調整がある
自身が65歳以上の場合は老齢年金を受け取れますが、遺族年金と老齢年金との関係で選択や調整が発生します。
まず、遺族基礎年金と老齢基礎年金の両方を受け取る資格がある場合は、どちらか一方を選択する必要があります。遺族基礎年金は子のある配偶者または子に限定されますので、このようなケースは少ないでしょう。
次に、遺族厚生年金と老齢厚生年金の両方を受け取る資格がある場合は、金額の調整があります。
まず自身の老齢厚生年金を受け取り、遺族厚生年金は老齢厚生年金より金額が多い場合にその差額を受け取ることになります。遺族厚生年金の年金額のうち、自身の老齢厚生年金に相当する額が支給停止になるイメージです。
まとめ
会社員で働いてきた妻と扶養の範囲内でパートとして働いてきた妻では、遺族年金の年金額の考え方は基本的に同じですが、妻が65歳以降で老齢厚生年金を受給する場合に違いがあります。
扶養の範囲内でパートとして働いてきた妻は、自身の老齢厚生年金の年金額は少ないと考えられますので、亡くなった夫の遺族厚生年金の年金額を受け取るケースが多いでしょう。
会社員として働いてきた妻は、自身の老齢厚生年金の年金額が相応にありますので、遺族厚生年金は一部支給停止となり、自身の老齢厚生年金との差額を受け取るケースが多いでしょう。亡くなった夫より年収が高い場合は、遺族厚生年金は全額支給停止になるかもしれません。
扶養の範囲内で働いた場合、自身の老齢年金はほとんど老齢基礎年金だけで年金額も多くありません。また、遺族厚生年金の年金額は、亡くなった夫の老齢厚生年金の4分の3ですので決して多いとはいえません。
夫が亡くなった場合の年金額についても確認するとよいでしょう。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 生計維持
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員
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