2023年4月から年金が変わる? 繰下げ申出みなし制度って?
ファイナンシャルフィールド / 2022年12月7日 9時30分
![2023年4月から年金が変わる? 繰下げ申出みなし制度って?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_173673_0-small.jpg)
2023年4月より、公的年金の5年前みなし繰下げ制度が導入されます。2020年の制度改正に続く、この「繰下げ申出みなし制度(※1)」とはどのような制度なのでしょうか。 今回は繰下げ申出みなし制度の概要を解説するとともに、利用する際の注意点についても紹介します。
繰下げ申出みなし制度とは
繰下げ申出みなし制度とは、2022年に導入された年金の繰下げ受給年齢の拡大に大きく影響しています。2020年の制度改正では、繰下げ受給年齢がそれまでの70歳から75歳に拡大されました。これにより、75歳から年金を受け取る場合は、84%の増額率で受け取ることができます。
<制度ができた背景>
2020年の改正前の仕組みでは、70歳以降になってから受給請求を行い、かつ請求時点における繰下げ受給を選択しない場合には、繰下げ増額が適用されない、本来の年金額が受給権発生時から支給されていました。
しかし、改正によって繰下げ受給年齢が75歳まで拡大されたため、70歳以降に受給請求を行い、かつ、請求時点における繰下げ受給を選択しない場合、請求時点から5年以上前の月分の老齢年金については、年金の支給を受ける権利が時効によって消滅するため、受給できなくなってしまいます。
そのため、70歳以降80歳未満の間に老齢年金を請求し、かつ、請求時点における繰下げ受給を選択しない場合、年金額の計算においては、請求時点の5年前に繰下げ受給の申請があったとみなして年金を支給することとし、支給する年金額は、受給権の発生から実際に請求された5年前までの月数に応じた増額を行うこととしました。これが、みなし繰下げ制度の概要です。
具体的にはどのように計算される?
では、繰下げ申出みなし制度が適用された場合、実際に受け取る年金額はどのように計算されるのでしょうか。
具体的に例を挙げると、72歳の時点で繰下げ受給をしようと思っていた人が、72歳の時点では、やはり繰下げ受給を行わないといた場合、67歳時点での増額率(0.7%×24ヶ月=16.8%)で計算された年金額が5年分さかのぼって支給され、さらに、72歳以降も16.8%で計算された年金額で支給されるということです。
また、仮に72歳から予定どおり繰下げ受給を行った場合、7年分の増額率(58.8%)で計算された年金額を72歳から受給します。
結果、改正前と比べ、年金の受給開始時期の選択肢が拡大されたことになります。
<繰下げ受給の意思表示はいつ?(※2)>
繰下げ受給を考えている場合、65歳の誕生日月に日本年金機構から送られてくる「年金請求書」で繰り下げ受給をすることの意志を伝えます。つまり、繰下げ受給を考えている場合、65歳の時点で繰下げ受給を開始するかを決めておく必要があるのです。
<改正前の選択肢は?>
2023年3月31日までは、例えば67歳で繰下げ請求を行い、67歳から増額率が適用された年金を受給するか、65歳にさかのぼって増額なしの本来の年金額を2年分一括で受給し、67歳からも増額が適用されていない本来の年金額を受給するかを選ぶことができます。
繰下げ申出みなし制度を利用する際の注意点
まず、この繰下げ申出みなし制度については、80歳の誕生日の前日以降に年金の受給請求を行った人には適用されない点に注意が必要です。さらに、この制度が適用されるのは、1952年4月2日以降に生まれた人(または平成29年4月1日以降に受給権が発生した人)で、令和5年4月1日以降に年金の請求を行う人になる点も覚えておきましょう。
<老齢基礎年金と老齢厚生年金で内容が異なる>
老齢基礎年金と老齢厚生年金でも、適用の内容が異なります。老齢基礎年金では、適用対象となるのは、2023年4月1日の前日に71歳に達していない人です。そのため、1952年4月2日以降に生まれた人という要件は適用されません。
老齢厚生年金の場合、2023年3月31日時点で受給権を取得してから6年が経過していないことが要件です。そのため、老齢基礎年金では対象とならない2023年3月31日に71歳に達している人でも、1952年4月2日以降に生まれたという要件を満たせば、適用の対象です。
まとめ
この繰下げ申出みなし制度のポイントは、「繰下げ時点で繰下げ受給を選ぶ」もしくは、「繰下げ時点で繰下げ請求をせず、66歳以降に65歳にさかのぼって増額が適用されていない本来の年金額を請求する」を選択できるようになったことです。
選択肢が拡大されたことにより、自分がどのように年金を受け取るかをますます真剣に考えなければならなくなったといえるでしょう。
出典
(※1)厚生労働省 [年金制度の仕組みと考え方]第11 老齢年金の繰下げ受給と繰上げ受給/3.老齢年金の繰上げ受給
(※2)日本年金機構 老齢年金請求書の記入方法等
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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