借金返済と投資はどちらを優先すべき? 投資の正しい考え方とは
ファイナンシャルフィールド / 2022年12月13日 10時0分
数ある投資に関するセオリーの中に、このようなものがあります。 「リスクのある投資は余裕資金で行うもの」 では、資金があるから投資にまわしてよいかというと、必ずしもそうとはいえません。例えば、借金を抱えている場合です。 その場合、余裕資金は投資に回すべきか、それとも借金返済に回すべきか。その答えは一様ではありません。どちらを選ぶべきか、そしてもし投資を選ぶ場合、どんな心構えが必要か。そのヒントをご紹介します。
ローンを組んで間もない方は、できるだけ返済を優先しよう
どんな場合に、借金返済を優先すべきでしょうか。
まず、ローンを組んだばかりでこの先何十年と返済が続くような方は、返済を優先すべきでしょう。なぜなら、残高が多ければ多いほど、将来の返済計画が変わったときの影響が大きいからです。
当然ですが、借りたときの返済計画が将来にわたってそのとおりになるとは限りません。例えば、収入が極端に下がる、子どもが海外留学する、病気で長期間入院するなど、想定していなかった多額の出費が将来発生した場合、その時点で住宅ローン等のローン返済計画も大きく狂ってしまいます。
また、投資を優先させたものの当初より資産価値が低下して、損失が出ているような場合などは、その後の返済計画に狂いが生じる可能性もあります。
一方、収入が減る、入院費等がかかるなど将来のリスクは保険に入っていれば減らすことができるかもしれません。しかし保険金が出たとしても、それで借金返済までカバーできるとは限りません。
変動金利で借りている方は、投資の前に金利上昇リスクに注意
さらに、ローンを変動金利で借りている方も、返済を優先したほうがよいでしょう。なぜなら、変動金利で借りている方は、インフレ等が起こると金利が大きく上がってしまうリスクがあるからです。
それだけならまだしも、インフレに加えて思いがけない不動産価格の下落が起こった場合、最悪オーバーローン(家の時価をローン残高が上回る状態)になり、返済がさらに困難になってしまう恐れもあります。
一方、固定金利であれば将来にわたって返済計画の見通しが立てやすいため、比較的投資の計画は立てやすいでしょう。
とはいえ、固定金利にもデメリットはあります。例えば、デフレ等により市場金利が下落傾向の場合は、金利がずっと変わらない固定金利よりも市場金利に連動する変動金利のほうが、比較的金利負担の軽減につながることがあります。
以上のように、変動金利、固定金利それぞれにメリット、デメリットがあるため、ローン返済期間中は、どちらが有利か、そして状況によってはローンの借り換えをするなど、金利負担が重くならない工夫をすることが大切です。
投資利回りがローン金利を上回る確信があれば、投資を優先するのもあり
では、どんな時なら投資を優先できるのでしょうか?
例えば「今借りているローンの金利を上回る投資利回りが見込める場合」が考えられます。
一例として、次のような投資とローンを抱えているとしましょう。
投資の利回り : 年5%(税引後)
住宅ローンの金利 : 年1.5%(団体信用生命保険料、保証料込み)
一見して分かるとおり、投資利回りが住宅ローン金利を大きく上回っています。この場合、わざわざ有利に運用できる投資を取り崩して住宅ローンの返済に回すより、そのまま投資で持っていたほうが有利なのは明らかです。しかし、これを実行するのは容易ではありません。
まず、投資利回りが今後も成長を続け、かつローンを低利で借りることができる、という確信が必要です。また、投資した資産の利回りが想定以上に下がり、ローン金利を下回ってしまうような事態になってもローンの返済資金を確保できる手段を用意しておく必要もあるでしょう。
投資、または借金返済を優先すべきはこんな人
これまで述べてきた内容から、どのような人が投資または借金の返済を優先すべきか、まとめてみました。
・投資利回りを下回る金利でローンを借りることができる人
・ローン金利以上の投資利回りを将来にわたって確保できる人
・比較的低利でローンを借りるだけの資金や信用がある人
・ローンを組んだばかりで、完済までの期間が長期にわたる人
・想定外の出費が発生した場合、返済計画が狂う恐れがある人
・金利の変動リスクに対処できない人
総じて、投資を優先できるのは、多額の収入がある比較的富裕な方ともいえるでしょう。資金があることで、多少の投資環境の変化にも耐えることができ、かつ返済計画立てやすくなります。また、証券担保ローン等を使えば、有利な投資をわざわざ売却せずに資金を確保できるといった仕組みもあります。
それでも投資を優先したい方は、家計の将来設計を立てておこう
ここまで、投資を優先すべき場合と、借金返済を優先すべき場合についてご説明してきました。
ただし、ここでご説明した内容はあくまで一例であり、実際はその人の置かれた状況や投資、ローンの知識などによって、結論が変わってくることも事実です。
もし借金の返済を抱えた状態でも投資をしたい、という方は、投資のリスクを理解した上で、家計の将来設計をファイナンシャルプランナーなど専門家の力も借りながら立てることをお勧めします。
執筆者:酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。
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