「公的年金は65歳からもらえる」これって本当?
ファイナンシャルフィールド / 2022年12月15日 9時40分
「公的年金は65歳からもらえる」。ごく当たり前のように聞こえますが、これって厳密に本当なのでしょうか。
公的年金の支給開始は、原則として65歳
公的年金である老齢基礎年金や老齢厚生年金は、日本年金機構の説明でも「65歳から受給できます」(※1)となっています。
特別支給の老齢厚生年金は、65歳よりも前から支給される経過措置ですが、本来の年金の支給開始は原則65歳なのです。また、公的年金の支給に「日割り」という考え方や制度はありません。
となると、例えば8月生まれの人は65歳になった8月の分から公的年金がもらえるのか。(なお、公的年金の支給は「後払い」ですから、8月にすぐに支給されるかどうかという意味ではありません)
答えは、「ほぼ違います」です。何だか歯切れの悪いアンサーですが、その意味合いをおさらいしておきましょう。
受給権の取得月と支払開始月は、実は大半で違う
国民年金や厚生年金の年金証書といわれる書類、実は「年金証書」と「年金決定通知書」が1枚の書類となっています。そのため1枚の中で、決定したことを証したり通知する厚生労働大臣印が2ヶ所に押されています。
まず、上部の太い青色の枠で囲まれた部分が「年金証書」です。年金の種類、基礎年金番号、年金コード(年金の種類を数字化して表したもの)、もらう人(受給権者)の氏名、生年月日、そして受給権を取得した年月が記載されています。
例えば8月25日生まれだと、受給権を取得した年月のうち月の部分は8月となります。
青色太枠よりも下の部分は「年金決定通知書」になっていて、Ⅰ厚生年金とⅡ国民年金のデータが別々に記載されています。それぞれ「2.年金額の内訳」の欄では、支払開始年月と年金額の総額や内訳が確認できます。
例えば8月25日生まれだと、支給開始年月は、上記の受給権取得年月の翌月の9月になっています。
繰り返しですが、公的年金の支給に「日割り」はありません。そして、65歳の誕生日を迎えた月の分は支給されず、翌月分からの支給となるケースが大半なのです。
誕生月と支払開始月が、同じになることもある
年金証書で受給権取得時期は「年月」までの記載だと説明しましたが、正確な「受給権発生日」は日単位になります。日本年金機構の説明でも「受給権発生日は受給開始年齢に到達した日(誕生日の前日)となります」」(※2)とされています。
先述の「8月生まれの人は65歳になった8月の分から公的年金がもらえるのか」の答えが「ほぼ違います」だった理由。上記の「誕生日の前日」という説明からお分かりいただけたと思います。
つまり、各月1日生まれの人は、受給権発生日が前月末日となります。8月1日生まれの人ならば7月31日に受給権が発生するため、65歳になった8月の分から公的年金がもらえます。8月2日から8月31日に生まれた人よりも1ヶ月早く支給開始となるわけです。
なお、(国民年金)保険料の支払いも日割りではなく月単位で、1日生まれの人は2日以降生まれよりも1ヶ月早く支払い開始となります。公的年金の保険料支払いと支給のそれぞれの開始時期は、ちゃんとバランスが取れているのです。
4月が新学期の小中学校などでも、4月1日生まれの人は4月2日以降生まれと同じ学年ではなく、3月31日以前生まれと同学年となります。公的年金の受給権発生に関しては、同じようなグルーピングが月単位で行われているのです。
まとめ
公的年金は、本質的には「長生きに備えた保険」です。繰り下げしたとき「モトが取れる」、繰り上げしたとき「損に転じる」。その時期(何歳何ヶ月)は、いつか。そうした損得論に過度にとらわれるのではなく、必要になったら受給を開始することが本質なのでしょう。
そして、具体的な支給ペースはどうなるのか。公的年金は偶数月の15日(土日祝日の場合はその直前の平日)に、前々月と前月の2ヶ月分が支給されます(※1の「年金の受け取り」を参照)。こうした後払い制度であることは、実際に受給中の人以外でも、多く知られていると思います。
今回触れたように「公的年金は65歳からもらえる」が、実は1日生まれ以外の大半の人にとって1ヶ月遅れになっている。このことは、長期間にわたって受給していく中で考えると、わずかな“誤差”のようなものかもしれません。
しかし、初めてもらう公的年金がどの月の分なのか。これから将来的に受給していく人も、事前にキチンと認識しておいたほうがよいでしょう。
出典
(※1)日本年金機構「老齢年金の請求手続き」
(※2)日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金を受給するときの手続き」
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
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