年金の「手取り」は意外と少ない?「税金」や「社会保険料」の徴収額を解説
ファイナンシャルフィールド / 2022年12月15日 23時10分
年金を受給した場合、満額がそのまま現預金として残るわけではありません。額によっては、税金や社会保険料が引かれて、手元に残る金額はさらに減少することが想定されます。 今回は公的年金受給額やそれ以外の収入額がある夫婦のケースを想定して、年間どのくらい税金や社会保険料が徴収され、可処分所得として残るのか、目安額を確認してみます。
年金受給額から引かれるものとは
給与を受け取っている現役世代でも社会保険料や税金が給与から引かれますが、年金からも同様に差し引かれることとなります。年金から引かれるものとしては、以下のものが挙げられます。
源泉所得税、住民税
国民健康保険税の基礎分、後期高齢者支援金分(74歳以下)、介護納付金分(40歳以上64歳以下)
年金収入から税金や社会保険料が引かれた後の可処分所得は、夫婦の収入により変わってくるでしょう。今回は3つのケースを想定して、税金や社会保険料の目安額を算出してみます。
税金や社会保険料の額は
仮に夫婦ともに65歳の世帯でどれぐらいの税金や社会保険料が引かれ、可処分所得として残るのか、東京都千代田区の例で確認します。
可処分所得=年金収入額+年金以外の収入額-社会保険料-税金
で算出します。税金や社会保険料の具体的な算定については、千代田区が一般に提供しているツールを参考にしました。ただし、厳密には状況により異なるので、目安としてご確認ください。
ケース1 公的年金240万円の場合
仮に年金額で夫180万円、妻60万円として計算します。夫に配偶者控除が加味され、さらに社会保険料は一定の減額があり、夫婦で7万4356円となります。源泉所得税と住民税はかかりません。したがって、以下のとおりとなります。
可処分所得=180万円+60万円-7万4356円=232万5644円
夫の年金額180万円から公的年金控除110万円と基礎控除43万円を引いた27万円が社会保険料の算出基礎額となります。妻の場合は年金額60万円のため、算定基礎額はゼロです。夫婦で計27万円の算定基礎額となる場合、国民健康保険税の基礎分と後期高齢者支援分は均等割額3万7800円から5割減額されます。
均等割額に加え、所得割として算定基礎額×料率を加味して計算すると、
夫の基礎分=27万円×7.3%+3万7800円×0.5=3万8610円
夫の支援分=27万円×1.98%+1万1500円×0.5=1万1096円
妻の基礎分=0万円×7.3%+3万7800円×0.5=1万8900円
妻の支援分=0万円×1.98%+1万1500円×0.5=5750円
となり、夫婦合計で7万4356円です。
源泉所得税は、年金額180万円から公的年金控除110万円、さらに基礎控除48万円と配偶者控除38万円を引いて計算すると、
課税所得金額=180万円-110万円-48万円-38万円<0
となり源泉税はかかりません。また住民税の計算は基礎控除43万円として計算することから、同様にマイナスとなるため、かかりません。
ケース2 公的年金360万円の場合
現役時代は共働き夫婦であり、年金額は共に180万円として計算します。また夫婦で年金が同額であることから、配偶者控除は加味しません。社会保険料は均等割額に5割減額があり夫婦で9万9412円となり、源泉所得税は1万7200円、住民税は5万9000円となります。したがって、
可処分所得=180万円×2-9万9412円-1万7200円-5万9000円=342万4388円
となります。
また夫の年金額が300万円、妻が60万円の場合、夫に対して配偶者控除が加味されることとなります。社会保険料は減額がなく夫婦で23万5016円となり、源泉所得税は4万3500円、住民税は2万9500円となります。したがって、
可処分所得=300万円+60万円-23万5016円-4万3500円-2万9500円=329万1984円
となります。
同じ年金額でも、共働きで同額ずつ受け取る方が約13万円手取りは多くなります。
ケース3 公的年金400万円と公的年金以外の収入が100万円の場合
年金額で夫340万円、妻60万円、夫の公的年金以外の収入100万円として計算します。収入に要するための経費が半分の50万円かかっていたとします。個人年金を100万円得るために、個人年金保険料として50万円支払ったとすればイメージしやすいでしょう。
この場合、社会保険料は夫婦で31万6216円、源泉所得税は8万4100円、住民税は18万7000円となります。したがって、
可処分所得=400万円+100万円-31万6216円-8万4100円-18万7000円=441万2684円
となります。
案外残らない可処分所得
千代田区の数値を利用した試算ですが、ケース1、2、3それぞれの収入に対して97%、95%(夫婦の一方が年金を多くもらう場合は91%)、88%ほどの可処分所得となり、収入が多くなるにつれ差し引かれる額も多くなります。不安が多い老後は収入が多いに越したことはないですが、差し引かれる金額が少なからずあることを理解しておきましょう。
出典
国税庁 高齢者と税(年金と税)
国税庁 No.1191配偶者控除
千代田区 保険料の計算方法
千代田区 特別区民税・都民税の試算
執筆者:古市守
CFP®・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
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