定年後は「再雇用」と「再就職」のどちらがお得? 選び方や受給要件を確認
ファイナンシャルフィールド / 2022年12月16日 3時10分
60歳で定年退職をした後も働き続ける人が増えています。定年後の働き方として、同じ職場で再雇用という形で仕事を続ける人もいれば、別の会社に再就職して仕事をする人もいるでしょう。 60歳を過ぎた人が再雇用や再就職で働く場合、給料がそれまでより大きく減少するケースが多く、不安を感じるかもしれません。給料が減少した場合に受けられるのが雇用保険の給付金です。 再雇用と再就職で受けられる給付金には違いがあり、その概要を紹介します。
再雇用と再就職で受けられる給付金が異なる
60歳で定年退職し、その後も働き続ける場合に雇用保険の給付金を受けられることがありますが、再雇用と再就職で給付金の種類が異なります。
まず、60歳の定年退職後に、同じ会社で再雇用されて働くケースでは、再雇用の賃金が60歳以前の賃金と比べて75%未満になった場合に「高年齢雇用継続基本給付金」を受給できます。
次に、60歳の定年退職後に、別の会社で働くことを目指して再就職活動をするケースでは、失業期間中に基本手当を受けられます。その後、再就職が決まった場合に要件を満たすと「高年齢再就職給付金」または「再就職手当」を受給できます。
高年齢雇用継続基本給付金を受給できるケース
60歳の定年退職後、再雇用で働き続ける場合に受給できるのが「高年齢雇用継続基本給付金」ですが、受給には次の3つの要件を満たさなければなりません。
・60歳以上65歳未満の一般被保険者であること
・雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あること
・60歳以上の賃金が60歳時点に比べて75%未満に低下したこと
給付金の額は、60歳時点の賃金に対して61%以下に低下した場合、各月の賃金の15%相当額となります。61%超75%未満の場合はその低下率に応じて支給率が変わり、75%以上になると支給されなくなります。対象期間は60歳に達した月から65歳に達した月までの5年間です。
なお、支給限度額や最低限度額があり、賃金の額が支給限度額36万4595円(2022年8月1日時点)を超えた場合や、高年齢雇用継続給付として算定された額が最低限度額2515円以下の場合は支給されません。
例として、60歳時点の賃金が月30万円だった人が、再雇用で月18万円になったケースを考えます。再雇用後の賃金は60%に低下しており、高年齢雇用継続基本給付金として月18万円の15%である月2万7000円を受け取れます。
高年齢再就職給付金または再就職手当を受給できるケース
60歳の定年退職後に再就職活動をする場合、まず雇用保険から基本手当(失業手当)を受給します。その後、再就職が決まった場合に受給できるのが「高年齢再就職給付金」です。
「高年齢再就職給付金」の基本的な内容は「高年齢雇用継続基本給付金」と同様ですが、いくつか異なる点があります。
受給の要件に「再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上あること」があり、基本手当の残り支給日数が100日未満になると受給できません。また、対象期間は、再就職した日の前日における基本手当の残日数が100日以上200日未満の場合は1年、200日以上の場合は2年であり、高年齢雇用継続基本給付の5年に比べてかなり短くなっています。
再雇用で受けられる別の給付金として「再就職手当」があります。基本手当の受給資格がある人が安定した職業についた場合に、基本手当の支給残日数に応じて支給されます。
支給額は、所定給付日数の3分の1以上残っている場合は残っている基本手当の合計の60%、3分の2以上残っている場合は70%となっており、早く再就職が決まると支給率が高くなります。また、高年齢再就職給付金と異なり一括で支給されます。
なお、「高年齢再就職給付金」と「再就職手当」はどちらか一方しか選べませんので、支給総額を比較して多い方を選ぶとよいでしょう。
まとめ
再雇用、再就職いずれの場合も、賃金が75%未満に下がるケースでは雇用保険から給付金を受けられることが多いでしょう。
再雇用の場合は「高年齢雇用継続基本給付金」を最長65歳までの5年間受けられるのに対して、再就職の場合は「高年齢再就職給付金」は1年または2年に限られます。65歳まで働くことを考えた場合、再雇用の方が給付金の額は多くなると考えられます。
60歳の定年退職後にどのような働き方をしたいのかという点も重要です。再雇用か再就職かは、給付金の額だけでなく、定年退職後のライフスタイルなども考慮して選択するのがよいでしょう。
出典
ハローワークインターネットサービス 雇用継続給付
ハローワークインターネットサービス 就職促進給付
厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~
厚生労働省 令和4年8月1日から支給限度額が変更になります。
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員
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