退職金の受け取り方は大きく2種類! 「まとめて」と「分割」どちらがお得か徹底解説
ファイナンシャルフィールド / 2023年1月7日 3時20分
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会社を退職後、生活の支えとなる退職金。「一括まとめて受け取るのが当たり前」と思われている方も多いですが、受け取る方法は実は大きく2種類あります。全額まとめて受け取る「一時金受取」のほか、分割で受け取る「年金受取」も選べます。そして受け取り方によって税金の計算方法も変わってきます。 この記事では、退職金をお得に受け取れるのは「まとめて」と「分割」のどちらなのかについて解説します。
退職金をまとめて受け取った場合
退職金をまとめて受け取る「一時金受取」の場合、税制上は「退職所得」として扱われ、優遇措置として「退職所得控除」が適用されます。 課税のベースとなる所得額の計算方法は以下の通りです。
(退職金-退職所得控除額)×1/2
退職所得控除額は、勤続年数によって異なります。
勤続年数20年以下の場合:40万円×勤続年数(最低80万円)
勤続年数20年以上の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
勤続年数20年までは40万円ずつ、20年を超えると1年につき70万円ずつ増えていきます。そして、その会社に勤めた年数が長ければ長いほど、控除額も増加していきます。
800万円+70万円×(38年-20年)=2060万円が退職所得控除額となります。
退職金が2060万円以下であれば、税金はかかりません。
仮に退職金が2500万円もらえるとした場合、所得額は(2500万円-2060万円)×1/2=220万円となり、この金額が所得税や住民税の課税の対象になります。
図表1の所得税の速算表をもとに手取り額も出してみます。
【図表1】 所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除金額 |
---|---|---|
1000円~194万9000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9000円 | 10% | 9万7500円 |
330万円~694万9000円 | 20% | 42万7500円 |
695万円~899万9000円 | 23% | 63万6000円 |
900万円~1799万9000円 | 33% | 153万6000円 |
1800万円~3999万9000円 | 40% | 279万6000円 |
4000万円~ | 45% | 479万6000円 |
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」
所得税額:220万円×税率10%-控除額9万7500円=12万2500円
復興特別所得税:12万2500円×2.1%=2572円
住民税:220万円×10%=22万円
税額合計:34万5072円
手取り額は2500万円-34万5072円≒2465万円。額面の約98%、大半が手元に残ることが分かります。
退職金を分割で受け取った場合
退職金を年金として少しずつ受け取る「年金受取」も選択できます。受給期間は10年、20年などさまざまです。メリットとして、分割して受け取ることで退職金を一度に使い過ぎてしまうリスクを避けられることが挙げられます。また、勤務先が受給期間を通じて一定の利率で運用してくれる場合もあり、運用次第では額面総額が一時金受取を上回ることも期待できます。
一時金受取では「退職所得控除」が使えましたが、年金受取の場合は「公的年金等控除」が利用できます。国民年金や厚生年金といった公的年金のほか、労働収入や不動産収入などがあれば、それも合算して控除額を計算することになります。控除額の範囲に収まれば税金はかかりませんが、控除額を超えた部分は雑所得として課税されます。
一時金受取のときと同様、退職金を2500万円としてシミュレーションしてみましょう。今回は運用利率や事務費等は考慮せず、60歳から10年間、年額250万円を受け取るものとして計算します。
【図表2】
年齢 | 公的年金等の収入金額 | 公的年金等に係る雑所得の金額 |
---|---|---|
65歳未満 | 60万円以下 | 0円 |
60万円超130万円未満 | 収入金額-60万円 | |
130万円以上410万円未満 | 収入金額×0.75-27万5000円 | |
410万円以上770万円未満 | 収入金額×0.85-68万5000円 | |
770万円以上1000万円未満 | 収入金額×0.95-145万5000円 | |
1000万円以上 | 収入金額-195万5000円 | |
65歳以上 | 110万以下 | 0円 |
110万超330万未満 | 収入金額-110万円 | |
330万以上410万未満 | 収入金額×0.75-27万5000円 | |
410万以上770万円未満 | 収入金額×0.85-68万5000円 | |
770万円以上1000万円未満 | 収入金額×0.95-145万5000円 | |
1000万円以上 | 収入金額-195万5000円 |
出典:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
60~64歳の場合の年間の雑所得:250万円×75%-27万5000円=160万円
65~70歳の場合の年間の雑所得:250万円-110万円=140万円
10年間の雑所得=160万円×5年+140万円×5年=1500万円
一時金で受け取ったときの所得額は220万円で済みましたが、10年間の分割で受け取ると所得額は約7倍になりました。他の条件を細かく決めないと手取り額は比較できませんが、一時金受取のほうが所得額を小さく計算できる分、税負担が少なく済みそうです。また、年金受取の場合は一時金受取ではかからなかった社会保険料の負担も生じてくるので、注意が必要です。
併用で「いいとこどり」できるケースも
上記のシミュレーションでは、一時金受取のほうが年金受取に比べて税負担の面からお得になる可能性が高いことが分かりました。ただ、退職金の額面や家族構成などさまざまな事情により手取り額は変わりますので、実際の退職金をもとに試算することが重要です。
本人の勤務先の制度によっては、一時金受取と年金受取を併用し、「いいとこどり」できる場合もあります。例えば、退職所得控除の上限まで「一時金」で受け取り、超えた金額を「年金」で受け取るようにすれば、税金をうまく抑えられるケースも考えられます。退職時の状況やその後のライフプランによって、最適な受け取り方は人それぞれ違います。FPなどの専門家に相談して判断するのもよいでしょう。
出典
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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