「人生100年時代」で賃貸は「コスト増」? 賃貸と購入のメリット・デメリットを比較
ファイナンシャルフィールド / 2023年1月12日 23時10分
「賃貸か購入か」は、住居選びの重要なテーマです。それぞれのメリット、デメリットはたくさん論じられてきましたが、人生100年時代に突入し大きく変わりつつあります。 特に、賃貸派の人に知っておいてほしいポイントをまとめました。
賃貸と購入でかかる生涯コストは変わらない?
「購入の方が賃貸よりも月々の支払いが安く済む」と、マイホームの宣伝などではよく耳にします。たしかに、3LDKの家にずっと住み続けるならば、購入の方が安く済むかもしれません。
しかし、賃貸ではライフステージに合わせて、間取りや広さを変えられます。子どもが小さい時は2LDK、子どもが大きくなったら3LDK、子どもが巣立っていったら夫婦2人で1LDK、といった具合です。
住居費は、場所・築年数・間取り・広さによって大体の金額が決まります。場所と築年数を同じと仮定すると、「ライフステージによって住居を変えられる賃貸」と「同じ住居に住み続ける購入」では生涯コストはあまり変わらなくなります。
そうすると、金額面で購入と大きく変わらず、自由に済む場所や間取りを変えられるというメリットも享受できるので、生涯コストが購入と賃貸であまり変わりません。これは、長らく賃貸派の論拠のひとつでした。
人生100年時代で賃貸はコスト増
しかし、この「賃貸と購入の生涯コストが変わらない」論は、平均寿命を85歳とした場合の計算結果です。
人生100年時代に突入すると、賃貸では15年間分もコストが増えることになります。それに対して、購入では支払いを終えるとその後の住居費は実質タダになるので、寿命が延びても生涯コストは変わりません。
費用のほかにもある賃貸派の落とし穴
生涯コスト以外で、賃貸で見落としがちなのが、「高齢になったときに賃貸住宅を借りられないリスク」です。
高齢になると、現役世代よりも収入が低くなることが多く、病気や死亡のリスクも上がってしまうので、若い世代よりも賃貸住宅を借りることが難しくなります。これから超高齢化社会に突入していく日本で、これは大問題です。高齢者の居住の安定確保に関する法律により国土交通省が実施する支援策などもあります。
しかし、株式会社R65が2020年に実施した「65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題」に関する調査では、65歳以上の「4人に1人」が賃貸住宅への入居を断られた経験あると答えており、 65歳以上が入居可能な賃貸物件の割合は全体の約5%しかないとされるなど、現状では高齢者が借りられる物件が限られているのは事実です。
賃貸では、費用面だけでなくこうしたリスクがあることも認識しておきましょう。
購入のデメリット、賃貸のメリット
購入でも、100年時代だからこそのデメリットはあります。
支払いを終えたら、その後は実質タダと述べましたが、マンションなどであれば、ローンを払い終わっても「管理費」や「修繕積立金」を支払い続けなければならない場合もあります。持ち家であれば、家の設備の老朽化に伴い、自身でメンテナンスをおこなう必要が出てきます。
また、不動産を所有していると、固定資産税が毎年かかってきます。これは賃貸の家賃と同じく、所有している間はずっと払い続ける必要があります。これらの購入でのデメリットは裏を返すと賃貸のメリットになり、特に賃貸では住宅の設備を維持する責任はオーナー側にあります。
そして、コストの比較では場所と築年数を購入・賃貸ともに同じと仮定しましたが、賃貸の一番のメリットは何より「場所を変えられること」です。
インターネットの普及などにより地理的なデメリットが薄れつつあり、さらに寿命が長くなると、ずっと同じ場所にとどまらなくてはいけないことはデメリットにもなりえます。現役時代は色々と便利な都会に住みたいけれど、老後は静かなところで暮らしたい。そうした希望も、住居を購入してしまっていると、簡単に移住とはいかなくなります。
賃貸と購入、それぞれのメリット、デメリットを正しく把握して、人生100年時代に合った住居選びをしましょう。
出典
国土交通省 高齢者向け住宅 高齢者の居住の安定確保に関する法律
株式会社R65 65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題に関する調査(PR TIMES)
執筆者:守屋鮎美
2級ファイナンシャルプランナー
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