【知ってる? 年金の歴史】「年金制度」はいつから始まった? 工場が「年金制度」の起源だった?
ファイナンシャルフィールド / 2023年1月15日 9時30分
最近は、老後2000万円問題や物価上昇が話題となり、お金に関する問題は深刻化しています。老後に対して悩みを抱える方も多いのではないでしょうか? 老後の生活に大切な制度が年金です。ただし、年金制度の歴史について知っている方は少ないかもしれません。 本記事では、年金制度の始まりから現在に至るまでの歴史を解説します。
1942年に年金制度がスタート
年金に近い制度の登場は明治時代です。ただし、当時は軍人のみを対象とし、国への貢献を称して支給されたため「恩給」と呼ばれました。
現在の年金制度に最も近い、労働者を被保険者とした年金制度が開始されたのは昭和時代の1942年です。
1942年は太平洋戦争のさなかで、工場などで働く男子労働者を被保険者にした年金制度がスタートしました。労働力を確保して、生産力を高めることが目的です。
1944年には、被保険者の範囲が事務職員や女子などにも拡大され、多くの労働者が年金に加入できるようになりました。
1961年に国民皆年金が実現
会社員や公務員に加え、自営業者などが加入できる国民年金が開始されたのは1961年。
これが、現在の国民全員が年金制度に加入できる「国民皆年金」の始まりです。また、国民年金の給付に要する費用の3分の1が国庫から賄われることも決定しました。
1965年に1万円年金が実現
日本経済が急成長した高度経済成長期において、年金の給付水準の引き上げを望む人が多く出てきました。
これを受け、国は厚生年金の給付水準の見直しを実施しました。平均的な月収の人(月2万5000円)が20年間加入した場合に支給される年金額は月額1万円です。
月額1万円と聞くと安いように感じますが、当時は物価が異なります。また、給付水準の引き上げに伴い、納める保険料率も引き上げられました。
1966年には国民年金も給付水準の見直しが行われ、保険料を25年間納付した場合には月額5000円の年金が受け取れるよう改正されました。その後も、頻繁に給付水準の改正が実施されます。
1985年に年金制度加入が強制化
会社員の妻は国民年金に任意で加入できましたが、離婚した場合に、妻が国民年金に加入していないため生活に困るケースが増えました。そこで1985年に実施された改正が、国民年金への強制加入です。
会社員の妻も国民年金に強制的に加入することになり、保険料は夫の加入する年金で負担することになりました。これが、現在の会社員の夫(妻)を持つ専業主婦(夫)が保険料の負担なしで年金制度に加入できる仕組みの始まりです。
なお1989年には、それまで国民年金への加入は任意とされていた20歳以上の学生についても、加入していない間に障害の状態になると無年金になるなどの理由から、国民年金に強制加入となりました。
2009年に基礎年金の国庫負担割合が2分の1に変更
少子高齢化の影響を受け、年金制度の運営方法の変更が検討されました。結果、2009年より基礎年金の国庫負担割合が3分の1から2分の1に引き上げられることになりました。
国庫といっても、財源は私たちが支払う税金などから構成されていることに注意が必要です。
年金は改正を重ねている
紹介してきたように、年金制度は運営開始から制度改正を重ね、今の形で運営されています。直近では、2022年に年金受給開始時期の選択上限が70歳から75歳に引き上げられました。
過去の歴史から考えると、今後も年金制度は改正を続けていくでしょう。現役世代が高齢世代を支える年金制度の仕組みからすると、少子高齢化が続く日本で、受給者にとっての「良い改正」はあまり期待できません。
年金を老後生活の全ての頼りにするのではなく、自分で資産形成を行い、計画的に老後に備えることが重要です。
出典
厚生労働省 【年金制度の仕組みと考え方】第4 公的年金制度の歴史
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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