同じ年金保険料を支払っても受給額に差がある会社員と自営業。一体どのくらい違うの?
ファイナンシャルフィールド / 2023年1月16日 5時20分
会社員と自営業では、加入できる公的年金制度が違うことは知っている、という人も多いかもしれません。 しかし、2つの制度にはさまざまな違いがあり、同じ年金保険料を納めたとしても、受け取れる年金額に大きな差がつく可能性があるということは、知らない人もいるのではないでしょうか。 本記事では、会社員と自営業で同じ年金額を払った場合に、年金額にはどのくらいの差がつくのかを、制度の内容とともに解説します。自身の加入している年金制度について、ぜひ理解を深めてください。
給与月額18万円前後の人と自営業者が負担する年金保険料はほぼ同じ
日本の公的年金制度では、会社員は厚生年金保険に加入している第2号被保険者、自営業者は国民年金のみ加入の第1号被保険者であるのが一般的です。
会社員が加入している厚生年金保険の保険料は、賃金などの月額報酬に応じて決まります。
一方、自営業者が納める国民年金保険料は、収入額にかかわらず、1ヶ月あたり1万6590円と決まっています(令和4年度の金額)。
この1万6590円という金額は、標準報酬月額18万円(1ヶ月の総支給額が17万5000~18万5000円)の会社員が負担する厚生年金保険料1万6470円とほぼ同等です。
ただし、会社員の場合は厚生年金保険料の半分を会社が負担するため、実際に日本年金機構に納めている金額は2倍の3万2940円となります。
同等の年金保険料でも会社員と自営業者の年金額には大きな差がある
自営業者と、同等の年金保険料を納めている会社員が受け取れる老齢年金の内容と金額を比較してみましょう。
自営業者の場合、受け取れる老齢年金は基礎年金のみです。厚生年金保険料を納めている会社員は、基礎年金部分に加えて老齢厚生年金も受け取れます。
満額の国民年金保険料を20~60歳の40年間、欠かさず納めた自営業者が受け取れる老齢基礎年金の金額は、令和4年度(2022年度)の場合、年額77万7800円(1ヶ月当たり6万4816円)です。
一方、標準報酬月額18万円の会社員が同じ期間、厚生年金保険料を納めた場合に受け取れる老齢厚生年金の年額は、次のように計算できます(※ボーナスなし、平成15年3月以前の加入期間なし、加給年金なし、繰上げ・繰下げ受給をしない場合)。
老齢厚生年金額=平均標準報酬額18万円×5.769/1000×480ヶ月=49万8441円
これに加えて老齢基礎年金77万7800円を受け取れるため、合計では年額127万6241円(月額10万6353円)を受け取れる計算となります。ほぼ同じ年金保険料を納めていても、会社員の方が老齢厚生年金約50万円分(月額約4万2000円)も多く老齢年金を受け取れるのです。
会社員に第3号被保険者の配偶者がいる場合の格差はさらに大きい
被扶養配偶者がいる場合、納めた年金保険料に対して受け取れる年金額は、自営業者と会社員でさらに大きな差がつきます。なぜなら、厚生年金被保険者の被扶養配偶者(20~60歳未満)は、第3号被保険者として扱われるためです。
第3号被保険者になると、国民年金保険料は配偶者が加入している厚生年金保険が一括して負担するため、個別に保険料を納める必要がなくなります。つまり、会社員は1人分の厚生年金保険料の2分の1を負担するだけで、本人の老齢厚生年金・老齢基礎年金と、配偶者の老齢基礎年金を受給できるのです。
自営業者の場合は、被扶養配偶者がいても第3号被保険者制度の対象とならず、2人分の国民年金保険料を納めなければなりません。
また、老齢厚生年金には加給年金という家族手当のような制度があり、厚生年金保険被保険者が65歳になって生計を一にする65歳未満の妻や18歳までの子どもがいる場合は、最大22万3800円が加算されます。
被扶養配偶者がいる場合について、標準報酬月額18万円の会社員と自営業者が受け取れる老齢年金の年額を比較すると、おおよそ図表1のとおりです(※被保険者期間20~60歳、65歳未満の妻あり、繰上げ・繰下げ受給をしない場合)。
【図表1】
標準報酬月額18万円の会社員 | 自営業者 | |
---|---|---|
老齢厚生年金 (報酬比例部分) |
49万8441円 | - |
老齢厚生年金 (加給年金) |
22万3800円 | - |
老齢基礎年金 | 77万7800円 | 77万7800円 |
妻の老齢基礎年金 (第3号被保険者期間30年間) |
58万3350円 | - |
合計 | 208万3377円 | 77万7792円 |
会社員の年金制度は自営業より手厚い
会社員と自営業者の年金を比較すると、同等の保険料であっても、厚生年金保険に加入できる会社員の方が、より高額な老齢年金を受け取れます。また、配偶者に関しても、第3号被保険者制度の適用や加給年金の支給など、会社員の方が制度が手厚いのが特徴です。
自分が加入している年金制度についてよく理解し、将来もらえる金額に不安がある場合は、貯蓄や私的年金制度の利用など、何らかの方法で備えておく必要があるでしょう。
出典
全国健康保険協会
全国健康保険協会 令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)
全国健康保険協会 令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
日本年金機構 令和4年4月分からの年金額等について
日本年金機構 国民年金の第3号被保険者制度のご説明
日本年金機構 加給年金額と振替加算
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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