「年金財政赤字」は大きな誤解!? 「約234兆円」の余裕があるって本当?
ファイナンシャルフィールド / 2023年1月18日 11時40分
一般的に、日本は多額の赤字財政だといわれており、それは事実です。そして、日本の財政が赤字なのだから、年金財政も赤字である、年金は将来危ないという声も聞かれます。しかし実際、年金財政は赤字どころか大きな余裕があるのです。 本記事では、意外と知られていない年金財政について解説しています。
国の一般会計は大きく赤字
財務省が公表している「令和4年度一般会計歳出・歳入の構成」を見てみると、その金額は107兆5964億円となっています。歳入についてみれば、その多くは税金であり、税金とその他収入を合わせると約70兆程度となります。
一方、歳出も歳入と同様に約107兆円ありますので、税金などで賄えない金額は約37兆円です。
また、歳出の中にはこれまでの借金の返済や利息の支払いが約24.3兆円あります。これは借金を減らすためのお金ですので、純粋な赤字額は37兆円から24兆円を引いて、約13兆円ということになります。
なお、これはあくまでも単年度の収支です。日本はこの赤字を埋めるため、そして国債の利息の支払いや元本の償還費を賄うなどの目的で多くの国債を発行しています。そして、国債の残高は令和4年度末で1029兆円になると見込まれています。
つまり、国の財政赤字は1000兆円程度あるといえます。
年金は「年金特別会計」で管理されている
一般会計は純粋な額を見ても13兆円という赤字ですが、実は年金財政はこの一般会計とは別の勘定で管理されています。戦前からの紆余曲折を経て、現在は「年金特別会計」が該当します。
厚生労働省が公表している「公的年金の単年度収支状況(令和2年度)」を見てみましょう。
一般家庭と同じように「収入」と「支出」という項目が大半を占めています。収入は毎年入ってくる保険料と国庫からの収入ですが、大半が保険料と税金です。一方の支出は年金受給者への給付が該当します。
令和2年度においては、収入が約52.5兆円で支出が約53.7兆円ですので、約1.2兆円の赤字です。
「え? 1兆円も赤字ってヤバいんじゃ?」と思うかもしれませんが、赤字の場合は年金積立金から補填(ほてん)されます。なお、反対に黒字の場合には積立金として貯蓄されていくという仕組みです。
また、年金の収入と支出の額は景気や年金受給者の人数などによって毎年変わります。平成28年から令和2年度までの5年間で見ると、図表1のとおりになります。
図表1
平成28年度 | 1.8兆円の黒字 |
平成29年度 | 0.3兆円の黒字 |
平成30年度 | 0.2兆円の赤字 |
令和元年度 | 0.4兆円の赤字 |
令和2年度 | 1.2兆円の赤字 |
筆者作成
厚生労働省 公的年金の単年度収支状況(平成28年度~令和2年度)を基に作成
ここ数年はだんだんと黒字から赤字、そして赤字の額も増えてきているのは気になるところです。とはいえ、赤字の場合補填する積立金ですが、令和2年度においては、約1.2兆円の赤字を考慮しても、積立金は約234兆円もあります。
大きな積立金を保有している理由
たとえ毎年数兆円の赤字が続いたとしても、当面の間は200兆円を超える積立金があるので対応は可能だと思われます。
巨額の積立金がある理由の一つとしては、過去の経緯が挙げられます。戦後の高度成長真っただ中において年金制度の充実が図られました。毎年給料が上がっていくことで年金保険料の収入はとても潤沢であり、一方年金受給者は多くなかったため、保険料の一部を積立金として蓄えられました。
また、積立金は専門機関により運用されており、その運用が生み出す収益もかなり多いです。具体的には、平成30年度は約2.8兆円、令和2年度は約44.5兆円のプラスとなっています。令和元年度はコロナの影響もあり約9.8兆円のマイナスですが、2001年以降の収益率はトータルでプラス3.47%となっています。
完全に安心はできないが、過度な不安はしなくてよい
日本の少子高齢化は急速に進んでおり、不透明感はますます強くなっています。
とはいえ、年金には大きな積立金があり、すぐに財政が破綻するということはないでしょう。完全に安心はできませんが、過度な不安を抱く必要もありません。
出典
財務省 財政に関する資料
財務省 日本の財政の状況
厚生労働省 公的年金の単年度収支状況(令和2(2020)年度)
厚生労働省 公的年金の単年度収支状況(令和元(2019)年度)
厚生労働省 公的年金の単年度収支状況(平成30(2018)年度)
厚生労働省 公的年金の単年度収支状況(平成29(2017)年度)
厚生労働省 公的年金の単年度収支状況(平成28(2016)年度)
年金積立金管理運用独立行政法人 2022年度の運用状況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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